日本の20年の停滞

 昨今、EUの通貨危機があり、日本の借金の問題もあり、国家の破綻の可能性が高まってきている。

 日本が高度成長をなしえ、世界の優等生であったはずなのに、20年に亘る経済の停滞・デフレ、小子化・高齢化による人口減、長く輸出の牽引車であった自動車・家電の停滞、で苦しんでいる。

 そこに3.11の東日本大震災があり、原発に依存したエネルギー政策は破綻し、新たなエネルギー戦略が必要となっている。また、地震・津波対策についても抜本的な見直しが突き付けられている。

 6重苦とか呼ばれ、出口の見えない状況が続いているが、これらには全て原因があり、その結果として現在があるはずである。これらに対し、新聞等で専門家の意見を聞いていても、部分的な説明に終始しており、何故こうなったのか、どうすればいいかが見えてこない。

 グローバルな金融への流れが、今の混沌とした時代を作っているわけだが、色々考えていると、一つの仮説が想い浮かんだ。それは、日本は結局「デジタル化で、遅れをとってきたし、今も遅れをとっている。」ということ。

 日本は、1980年代までのアナログの擦り合わせ技術が優位だった時代は、日本の均質で、お互いを助け合う国民性が優位に働き、圧倒的な国際競争力を持っていた。

 しかし、まず家電が、デジタル化、電子化によって、コモデティー化が進み、装置産業になった。装置に投資して、短期に市場を占有、価格を握る。また、車は擦り合わせ技術の得意な日本が有利な産業とされていたが、これとても、デジタルの3D CAD化により、コモディティー化が進み、家電と同様の状況を迎えつつある。

 私の論拠は、サラリーマン時代に、今をときめく、シリコンバレーのIT化、デジタル化を、肌で感じてきた事がベースにある。正に団塊の世代で、高度成長を担って、昼夜を分かたず、アメリカおよびシリコンバレーの技術をキャッチしようと、懸命に働いた。今騒がれているスティーブ・ジョブスは超一流のビジネスマンであるが、新しいものは生み出していない。ジョブスはゼロックスのパラアルト研究所で生まれたGUIに目を付け取り込んだ事は周知の事実。

 ゼロックスのイサーネット、GUI等のソフトウエアに限らず、今のIT社会のインフラになった多くの部分はアメリカ、シリコンバレーから生まれている。シミュレーションソフトを含め、日本は、専らそれらをほぼ只で、懸命に取り込み、経済競争力を付けてきた。

  日本は、1970年代は、アナログのものつくりの世界でキャッチアップしてきた。1980年代はデジタルのものつくりの世界で、アナログ時代に培った技術をベースにアメリカ、シリコンバレーをキャッチアップしてきた。

 しかし、デジタル時代は、コモディティーが進み、台湾、韓国を筆頭に、新興国が装置に集中投資し、短期間に追いついてきた。既にコストで優位性がなくなった結果、日本の今の苦境がある。

 要するに、今現在も、アメリカ、シリコンバレーのキャッチアップに追われているわけで、未だ世界に貢献する新しいビジネス分野を切り開けていない事が真の停滞の原因である。とすれば、今の苦境は当たり前で、日本がNO.1なんてあり得ない。

 

 そこで、これらのことをしっかり認識した上で、3.11を受けて、世界に貢献できる価値に取り組む必要がある。

 その中の一つとして、 現在普及が進められている、福岡スマートコンソーシアムや横浜スマートコミュニティが進めるモデルベース開発手法を活用した電源制御システムの構築法がある。

 スマートハウスやスマートコミュニティの実現には、太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギーや燃料電池といった「創エネ」と、家庭用蓄電池やEVPHEVなどの「蓄エネ」を高効率に連係させるためのエネルギー・システム開発が不可欠です。ただ、複数のエネルギー変換ユニットを連携させながら、安定性と信頼性が高い自律的なシステム構築には、膨大な時間をかける必要がありました。

 本取り組みは、パワーを扱い精緻な制御が必要な設計部分にモデルベース開発手法を取り入れ、制度の高い設計を、短期間に実現可能とするものである。モデルベース開発ツールはドイツのものだが、このような分野に活用し、新しい価値を生み出す取り組みをどんどん進めるべきである。私に何が手伝えるか、一生懸命考えている。