新環境経営研究所プログ

暫く、更新をさぼってきましたが、今後、これまでにメルマガに投稿した原稿や、メルマガの編集を通して書き遺した編集後記などを元に、本ブログを通して、私の考え方を発信していきたい。

新環境経営~環境経営を超えて~<1> 共通価値(CSV)の概念

 

■はじめに:

「環境経営」は、"環境“をマネジメントするところから始まった。その手段としての環境マネジメントシステム、環境報告書、環境会計などはすでに普及し当たり前になったが、今後、低炭素社会に向けて、法整備も含めて、”環境“に関わる経営リスクは、さらに高まることが予想される。

このため、“環境”を考慮して経営に取り組むことが、持続可能な企業経営に必要不可欠となる。そこで、21世紀に求められる“環境“経営を、「新環境経営」としました。

本連載では、テーマを「新環境経営」とし、「環境経営」を超えた、21世紀の経営の視点で、戦後のこれまでの取組みを振り返り、あるべき経営についての話題を提供したい。4大公害病の歴史と現状、環境マネジメントシステムの歴史、CSRの歴史、共通価値、更にはポスト・コンピューター社会、を順に取り上げ、過去と現在をいったりきたりしながら、これまでの環境経営とこれからのあるべき新環境経営について話題を提供したい。

私を含めた団塊の世代は、戦後の同時期を生きてきたわけですが、高度成長はなし得たが、戦前までに築かれてきた日本の良いところを切り捨ててきた面もあります。この連載を通じ、正の側面、負の側面を取り上げ、戦前までに築かれてきた日本の素晴らしい精神性を発掘、再評価し、次世代に継承していきたいと考えます。

更には、3.11を受けて、抜本的な軌道修正が必要となったエネルギー問題を踏まえ、環境の重要な要素であるエネルギー問題としての、再生可能エネルギー、省エネ、創エネ、畜エネ等についても取り上げていきたい。

 

共通価値(CSV)の概念

日本は、敗戦後の高度成長期を経て、バブルの崩壊、停滞の20年、リーマンショック、東日本大震災と、未曾有の変革期にある。その流れの中にあって、「企業こそが社会を変革しうる」とのことで、企業の社会的責任への期待が高まっている。

昨今、マイケルEポーターの共通価値(CSV)の概念が広く知られる様になり、企業が社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるという考え方を提唱されている。

共通価値(CSV)の概念は、明治維新以前の日本には、理念としても存在していたと思うし、明治維新以後も松下幸之助さんの水道哲学がように経営のモデルとして引き継がれてきました。

日本には、「社会的価値の提供があって、はじめて企業の存在が許される」、「社会的価値と経済的価値は一体でなければならない」との国民的風土があり、日本人の意識の中にも深く刻み込まれている考え方である。

しかるに、明治維新の開国以来、欧米列強に追いつけ、追い越せでひた走る中、日本が本来持っていた、共通価値(CSV)の概念の遺伝子をどこかに置き去りにしてきた。特に太平洋戦争からの復興を目指し、ひたすら、闇雲に突っ走る中では、経済的価値に過度に傾斜した経営がなされ、社会的価値を毀損する公害等の社会的問題を生み出してきた部分がある。

私利私欲に走る人や組織はいつの時代にも存在するが、特に太平洋戦争から今日までの70年間は、日本人が長年に亘り、積みあげてきた精神性を毀損する、歴史的に大きく後戻りした時代と思う。

 

★マイケルEポーターの「共通価値」(CSV)定義:社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチである。 「共通価値」は、CSRでもなければ、フィランソロピー(社会貢献活動)でも、持続可能性でもない。経済的に成功するための新しい方法。それは企業活動の周辺ではなく、中心に位置付けられる。

ハーバードビジネスレビュー20116月号 マイケルEポーター戦略と競争優位 P10

 

CSR(Corporate Social Responsibility)は、まずは経済的価値を生み出す企業の存在が優先し、その上で企業が果たすべき社会的責任の捉え方であり、主は経済的価値、次いで社会的責任。企業はまずは存続のために、経済的価値の追求があって、それを確保したうえで、余力で社会貢献活動に回す、意味合いで使われている。 

 

次回以降、公害の歴史の振り返りから始めたい。

新環境経営~環境経営を超えて~<2> 4大公害病―水俣病

 

熊本水俣病

環境汚染による食物連鎖により引き起こされた人類史上最初の病気であり、「公害の原点」といわれる。1956年に熊本県水俣市で発生が確認されたことがこの病名の由来。この後、新潟県下越地方阿賀野川流域で昭和電工が起こした同様の公害病の病名も水俣病であることから、これを区別するために前者を熊本水俣病、後者を第二水俣病または新潟水俣病(にいがたみなまたびょう)と呼称する。水俣病、第二水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくは四大公害病とされ、日本における高度経済成長の影の面となった。

一方、国外でも、1970年代前後に中国の吉林省から黒竜江省にかけての松花江流域で、メチル水銀および無機水銀による土壌汚染が明らかになった。1990年代になってアマゾン川流域でも水銀による住民の健康被害が確認された。このほか、五大湖に面するカナダオンタリオ州グラッシイナロウズ、ホワイトドッグの地区などでも有機水銀中毒が報告されている。フィリピンミンダナオ島、アマゾン川流域などの金鉱山下流の健康被害は金採鉱で利用した金属水銀が環境中に放出され、一部は有機水銀に変化し魚介類にも蓄積されていることが明らかになっている。(以上、ウィキペディアより)

 

■水俣病訴訟の経緯、現状

現行の水俣病被害者救済法に基づく救済策は、感覚障害がある人に一時金や医療費を支給する仕組み。救済を受けるには、認定申請の取り下げが条件。認定患者に1600円―1800万円の補償金となっているが、その認定基準は厳しく、感覚障害などの複数の組み合わせが必要とされる。このため、これまでに行政が水俣病と認めたのは3000人にすぎない。これを不満として認定を求める訴訟が後を絶たない。

1973年の訴訟では「公序良俗に違反し、無効」として退けられたという。到底受け入れられる判決ではないため訴訟は続いた。政府は1995年に、認定申請取り下げを条件に、解決金260万円で政治決着を図った。ところが、2004年に最高裁判決がでて事態は一変、感覚障害だけでも患者と認め、幅広く救済すべきの判断である。これを受けて、認定制度は揺らいだ。そこで2010年、政府は第2の政治決着として、認定申請の取り下げを条件に一時金210万円の支払い、20127月末で申請を打ち切る。

以上が、これまでの経緯だが、現在も訴訟は続いており、最高裁の判断待ちの状態であることから、申請の打ち切りは時期尚早の意見がある。国としては、全面和解を受け、早く幕引きをしたいところだが、差別や偏見を恐れて名乗り出ない人がいるのが現実である。

 

■水俣病の経験を次の世代にどう生かすか。

公害被害者の方々の粘り強い取組みと、行政も司法にも多くの叡智が集められ、救済のための取組みが行われてきたが、半世紀を過ぎても解決には至らない。その間にも多くの方が無念の命を落とされている。理不尽なことである。

本年226日に、環境省主催で、水俣病の教訓を次世代に伝えるセミナーがあり、水俣病の語り部の方々の講演を聞く機会があった。被害者である語り部の方々は、控えめで、自分を責めている姿が痛々しい。一方、JNC株式会社(チッソから事業を引き継ぎ20114月営業開始)の常務の話からは、「心から申し訳けない」の雰囲気は使わってこなかった。自分が経営している時代に起こした訳ではないが、経営に携わる者の心構えが問われている。

原因企業のチッソは、責任が明らかになってからも、追加補償を認めない誓約書を書かせたという。どこまで腐っているのかと憤りたくなるが、一方では、チッソがつぶれて仕事がなくなって困る人もいて、地元住民同士が反目していた現実もある。現在、水俣市は「もやい直し」で住民の絆を深め、疲弊した経済の立て直しに取組み、日本有数の環境先進地としてイメージチェンジに成功している。

人間のすることに完璧はなく、予期できない事態はいつの時代でもありうるが、細心の注意を払って未然防止に努めることが経営者の責務であり、又、起こしてしまった後は真摯に原因究明と対策に努めることが重要である。正にリスクマネジメントの実践である。

 

 

 次回以降、他の公害の歴史についても振り返ります。

新環境経営~環境経営を超えて~<3> 公害その2:イタイイタイ病

 

■イタイイタイ病

イタイイタイ病は神通川下流域である富山県婦中町(現・富山市)において、1910年代から1970年代前半にかけて多発、患者が「痛い、痛い(いたい、いたい)」と泣き叫んだ事からこの病名がつけられた。原因は、神通川上流の高原川に三井金属鉱業神岡鉱山亜鉛精錬所から鉱廃水に含まれて排出されたカドミウムで、この地域で生産された米や野菜を摂取したり、汚染された水を飲用するなどにより引き起こされたとされる。

19685月、厚生省は「イタイイタイ病の本態はカドミウムの慢性中毒による骨軟化症であり、カドミウムは神通川上流の神岡鉱業所の事業活動のよって排出されたものである。」と断定した。これによってイタイイタイ病は政府によって認定された公害病の第1号になった。

神岡鉱山は江戸時代から銅、銀、鉛などを生産しており、生産は小規模だったもののそのころから周辺の農業や飲料水に被害が出ていたという記録がある。明治維新になってから経営主体が明治政府に移ったが、すぐに三井組が本格経営を開始した。日露戦争を契機に生産量が大幅に増加し、その後も日中戦争や太平洋戦争、戦後の高度経済成長による増産で大量の廃物が放出され、周辺の地域だけではなく下流域に農業や人体にも被害を与えた。1886年の三井組による全山統一から1972年のイタイイタイ病裁判の判決までに廃物によるカドミウムの放出は854トと推定される。

神通川以外に取水元のない婦中町(当時)ではカドミウムの溶出した水を農業用水(灌漑用水)として使用したり、飲料水として使用してきた。また、カドミウムには農作物に蓄積される性質があるためカドミウムを多量に含む米が収穫され続けた。この米を常食としていた農民たちは体内にカドミウムを蓄積することとなり、カドミウムの有害性によりイタイイタイ病の症状を引き起こした。カドミウムは自然界にも一定の割合で存在し人体にも少量は含まれているものの、神通川流域で生産された米には非常に高濃度のカドミウムが含まれており、被害者の体内に蓄積されたカドミウムは基準値の数十倍から数千倍の濃度に達していた。(以上、ウィキペディアより)

 

■イタイイタイ病から学ぶこと

カドミウムの毒性については長い間よくわかっておらず、また公害の発生当時カドミウムとイタイイタイ病に特有な症状との関連もはっきりとしていなかったため神岡鉱山側の対策が遅れ、公害を拡大させることとなった。又、公害病認定後もしばらくの間、「ビタミンD不足説」を主張するグループがいたとのことである。

カドミウムをイタイイタイ病の原因とする見解は、訴訟の中で状況証拠により「断定」されているのみで、化学的、生理学的証明は現在もなされていない。この様に、公害の認定は難しく、また状況証拠による「断定」には多大の時間と労力を要する。

だからこそ、事前にあらゆる想像力を働かして、念には念を入れて、危険性をリスクとして想定することが重要である。それにはこれまでに経験してきた、たくさんの公害被害の実例をたんねんに積み上げ、記録して、保存して、いつでも振り返れる様にする必要がある。

 

■イタイイタイ病の経験をどのように今後に生かすか

私達一般庶民はイタイイタイ病を過去の過ぎ去った事件として扱っているが、この公害の後始末としての土壌汚染復元事業は2012317日に完了したとのことである。公害病認定後の約40年に亘る粘り強い取組みで、ようやくほぼ元の土壌に戻せたことになる。

又、イタイイタイ病裁判の勝利を記念して建設され、患者救済・発生源対策・汚染土壌復元運動の拠点であり、全国の公害反対運動に連帯する活動の拠点である清流会館が資金難に陥り、存続の危機にあると聞く。この様に、土壌を元に戻すことも、公害の再発防止を後世に伝えることも、大変な労力とエネルギーを要する。

現在、北米を中心に、シェール層に堆積するガスの採掘が加速しているが、既に地上で地下水を利用している住民からガス臭くて地下水が飲めないという被害がでているという。又、ガスを押し出すために注入する水の中に特殊な物質が使われており、それが人体にどのような影響を及ぼすかも見極められていない。人類の共有財産である地下水を汚してまでも、目先のエネルギー確保に走るアメリカ、過去の公害を克服してきた人類の歴史に背を向けているとしか思えない。又、3.11の原発事故による放射能汚染も、紛れもない国と電力会社によるとんでもない公害である。

これまでは、世界のリーダー達に任せておけば、色々なことを考慮して、安全な環境を提供してくれるはずと思いこんできたが、どうやらそうではなく、経済優先で一部の欲の皮の突っ張った人達に牛耳られているのが現実です。

これからはICTをフルに活用して、ソーシャルネットワーク(SNS)で、一般庶民が世界のリーダー達の動きをチェックすることが、環境破壊の未然防止に繋がります。又、公害の再発防止を後世に伝える方法として維持費の少ない記録の保存方法の工夫が求められます。それにはウィキペディアの充実や、デジタルアーカイブスの普及、情報アクセスの容易化、が有効な手段となります。

 

 

次回は公害その3として、四日市ぜんそくについて、振り返ってみます。

新環境経営~環境経営を超えて~<4> 公害その3:四日市ぜんそく

 

四日市ぜんそく

症状は、息苦しくて、喉が痛み、激しい喘息の発作が起こる。症状がひどいと呼吸困難から死に至る。心臓発作や肺気腫肺がんを併発する場合もある。三重県四日市市(塩浜地区を中心とする四日市市南部・中部)と三重郡楠町1960年から1972年にかけて四日市コンビナートから発生した大気汚染による集団喘息障害。

四大公害病の一つで、水質汚染を含めた環境問題としては、「四日市公害」と呼ばれている。日本初の本格的な石油化学コンビナートである四日市コンビナートが建設された事によって、1960年代に四日市市は急速に工業化され、工場の生産活動で大量の亜硫酸ガスが大気中に排出された。

地元三重県の三重大学医学部公衆衛生学教室に所属していた吉田克巳教授などの医学者や環境学者は、原因不明の喘息などの疾患の原因について学術調査を行なった。公害患者が発生した塩浜地区が、四日市コンビナートの亜硫酸ガス排出源の風下の位置であり、地理的に亜硫酸ガスの着地点でもあることから、亜硫酸ガスの濃度が高い塩浜地区で喘息発作が多発したので、四日市ぜんそくは亜硫酸ガス(二酸化硫黄)や二酸化窒素や二酸化炭素の増加が原因であるとした。

公害病裁判が1967年から1972年に行われ、第1コンビナート(塩浜地区)と第2コンビナート(午起地区)に進出した主な四日市コンビナートの企業が被告となり、(石原産業、中部電力、昭和四日市石油、三菱油化、三菱化成工業、三菱モンサント化成)などの企業が排出した亜硫酸ガスによる大気汚染が原因とした。(以上、ウィキペディアより)

 

四日市ぜんそくから学ぶこと

1962年にばい煙規制法)」が制定され、石炭の燃焼による煤塵(ばいじん)の規制には効果を発揮したが、主要な使用燃料が石炭から石油に移行すると、硫黄酸化物の排出量が増え、1968年にばい煙規制法を根本的に見直し制定されたのが大気汚染防止法。しかし、大気汚染防止法においても大気汚染の改善は見られず深刻な公害問題に発展、1970年の公害国会で公害関係法令の抜本的整備が行われた。この時の大気汚染防止法の大幅な改正が現在の原型となっている。又、2004年には浮遊粒子状物質(SPM)及び光化学オキシダントによる大気汚染の防止を図るため、揮発性有機化合物(VOC)を規制するための改正が行われた。

この様に、大気汚染による公害は、これまでに紹介してきた「水俣病」や「イタイイタイ病」のような特定の物質による公害とは異なり、大気を汚染する物質が次々と入れ替わり、その都度、規制を追加して対応してきた。その過程の中で「四日市ぜんそく」がある。

狭い国土に、1次エネルギーを2次エネルギーに転嫁する工場を無理やり詰め込んで、人の健康よりも経済成長が優先の時代であった。産業界は経済優先のスタンスで、厳しい規制を先送りにする圧力団体として機能してきた側面がある。又、住民は日々の生活に忙しく、法整備に積極的に関わる人は少ない。更に、日本人は国や行政に対して過度に従順な側面があり、日本の公害は、日本人の国民性と深く繋がっている。結局、大規模で、悲惨な事件として、社会問題化するまでは手が打てないのが日本の歴史である。

 

四日市ぜんそくの経験をどのように今後に生かすか

「公害」が日本人の国民性に深く根ざした問題である一方、公害との闘いの結果、現在は、四日市市のみならず全国各地で空気も水も確実にきれいになってきている。佐渡には朱鷺が戻ってきた。あの東京湾も40年前と比べると、格段にきれいになってきている。ひたむきに改善に取り組む真面目な国民性がなし得た偉大な成果でもある。

今、地球規模で問題となっている温暖化も、そもそもは、化石燃料を燃やして、温暖化効果ガスのCO2を「大量に垂れ流している」ことが一因である。この問題に対し、昨年のCOP10名古屋では、日本が持続可能社会の有り方としての「里山モデル」を提唱し、多くの新興国の支持を得て里山イニシャティブとして採択された。

このように、悲惨な公害との闘いを乗り越えてきた日本は、その経験と、元々育んできた里山の考え方を世界に拡げ、持続可能社会に向けて、世界をリードしていく必要がある。21世紀の今は、あらゆる面で時代の大転換期、世界から日本の貢献が期待されています。

 

 

公害についての振り返りは今回で終了し、次回からCSRの歴史を振り返ってみたい。

新環境経営~環境経営を超えて~<5>  CSR:CSRの歴史

 

■はじめに:日本の企業の社会的責任(CSR以前)」の歴史

日本では、CSRの言葉が広まり始める前から、「企業の社会的責任」の議論は行われてきており、戦後の企業の不祥事や企業批判が起こる度に、企業が反省・自戒するパターンが繰り返されてきた。

ニッセイ基礎研『日本の「企業の社会的責任」の系譜』(2004.5)によれば、第1期は1960年代の産業公害に対して、第2期は1970年代の石油ショック時の便乗値上げに対して、第3期は1980年代の急激な円高&地価高騰に対して、第4期は1990年代のバブル経済破綻&銀行倒産に対して、そして、第5期が2000年代の食品偽装事件等の企業の不祥事対して、である。そして、2003年にCSR組織を設置する企業が増大した。(CSR経営元年)

 

■日本のCSR

日本でCSRの言葉が広まり始めたのは、経済同友会が2003年にまとめた第15回企業白書の中に記載された頃になる。経済同友会の第15回企業白書は、前代表幹事小林陽太郎氏のイニシャティブでまとめられたもので、「市場主義宣言」や、「市場主義宣言」を超えて、「市場の進化」等、の議論の中で、企業のあるべき姿として、取り上げられた。その経緯は、最近発売された書籍「小林陽太郎―性善説の経営―」の中で詳しく紹介されている。

小林陽太郎氏によれば、そもそもCSRは、企業活動全般のことであって、企業が上げた利潤の中から、メセナ活動を行ったり、環境保護活動を行ったりと言うことではないと明言されている。私も至極当たり前のことと思うが、日本では、これまでも今も、本業とは必ずしも繋がらないメセナや環境保護活動がCSR(=企業の社会的貢献)と誤解されている部分がある。

 

■世界のCSR(ウィキペディア)

1)ヨーロッパ企業における考え方と特徴

ヨーロッパにおけるCSRとは、社会的な存在としての企業が、企業の存続に必要不可欠な社会の持続的発展に対して必要なコストを払い、未来に対する投資として必要な活動を行うことである。

時として、これはアメリカ型の市場中心主義へのアンチテーゼとして語られることもあるが、EUが主導的に様々な基準を整備していることや、環境、労働等に対する市民の意識が高いこともあり総じて企業としてCSRに対する取り組みは包括的で、企業活動の根幹として根付いている。

2)アメリカ企業における考え方と特徴

アメリカでは、1990年代の後半から、企業は利益を追求するだけでなく、法律の遵守、環境への配慮、コミュニティーへの貢献などが求められ、企業の社会的責任 (CSR) が問われるようになり、2000年代になると企業改革・更生法ともいえるサーベンス・オックスレー法(SOX法)が成立されていくなど、企業に対する社会的責任を法律で定めていくというような法的整備・拘束等が進められていくようになった。

また、そのような法的整備と企業の社会環境が整えられ、変わっていくと同時に、労働者の人権の保護に関しても、国際的に関心が高まるようになった。その背景には、企業活動がグローバル化し、先進国の多国籍企業が発展途上国の労働者を雇うケースが増え、さまざまな問題が発生したことがある。その為、アメリカ政府は、企業が起すこれらの諸問題に対応していく為、様々な対策を講じていく事となった。

 

 

次回からは日本のCSRが歩んできた歴史を振り返ってみたい。

新環境経営~環境経営を超えて~<6> CSR:CSRの歴史その2

 

■そもそもCSRとは

前回、日本と、ヨーロッパと、アメリカのCSRの取組の違いについて概略を記述しましたが、CSRの生まれたヨーロッパの事情については、2000-04年にブラッセルにロビイストとして駐在されていた藤井敏彦氏が詳しい。藤井氏は、「ヨーロッパでは、若者の雇用の問題等に国家だけでは対応ができない。お手上げ状態だから企業に失業対策を求めた。それがCSRである。」

企業が法令を順守するのは当たり前で、敢えてSocialを入れたのは、企業に法令順守を超えた社会の問題についても責任を負担して欲しい ということである。 

日本では、未だに「法令順守CSR(法令をきっちり守ることがCSR)」や、「本業こそCSR(本業をきっちりやって雇用で貢献することこそがCSR)」や、「社会貢献CSR(フィランソロピーなどの社会貢献活動がCSR)」等の議論で、盛り上がっているが、本家のCSRの意図は、企業の役割を超えて、国家や、グローバル社会の課題の解決に、企業が踏み出すことを期待しているものである。

 

■日本のCSRの特殊性

元々のヨーロッパのCSRが、国家だけでは担えなくなった雇用や人権の問題に、企業にも担ってもらわなければならないとの位置づけで始められたのに対し、日本ではあくまでも一企業としての立場、範囲でCSRが捉えられてきた。

これは多くの移民を受け入れてきた多民族国家のヨーロッパやアメリカと、単一民族(長い時間をかけて混血となって日本列島に住む日本人)とは事情が異なるため、日本にCSRを導入する時に、得意の日本化がなされたためであると考えられる。

世界では、国連のグローバルコンパクト等で取り上げられている「雇用」や「人権」がCSRの中心となっているが、日本はこれまでは失業率も比較的低く、格差が小さかったこともあり、一企業に法令順守を超えた社会問題としての「雇用」や「人権」についての負担を求める声が小さかった。

つい最近まで、誠実な経営(法令順守+広義のガバナンス)+アルファがCSRで、国家レベルの「人権」「雇用」に対する取組みが求められることはほとんどなかったが、グローバル化の進展や金融危機により、日本でも非正規雇用の問題や、所得格差の拡大が顕在化し、国を上げて取り組むべき必緊の課題となってきた。

ISO26000が制定されたことも、ISO好きの日本で「雇用」や「人権」に取り組む上での追い風となっている。

 

■グローバルコンパクト

グローバルコンパクト(世界への契約)は、経済のグローバル化の裏で進む自然破壊や格差拡大に対し、アナン前国連事務総長が世界の企業に対し、「問題を引き起こすのではなく、解決する役割を」と提唱し、2000年に生まれた。

グローバルコンパクトは企業が環境や人権、労働条件などに積極的な役割を果たすことを自主的に宣言するしくみで、「人事」「労働基準」「開発」「腐敗防止」の4分野に10項目の原則がある。

近年、市場経済が暴走してしまったとの認識が経営者に広まり、「企業の価値は業績や株価だけでなく、環境や貧困、労働などへの対応も含めて考えなければいけない」と考える経営者が世界で増えている。世界では既に7000を超える企業や団体が加入しているというが、日本では未だ100程度の企業や団体に留まっている。

 

 

次回は教育現場でのCSRについて紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<7> CSRその3:CSR教育

 

CSR教育の現状

その1:現在、大学の特別講座として「CSR」が実施されています。ある大学において、2009年の4月~7月にかけて、夕方の90分の授業が13回に亘って毎週開催されました。これはリスクマネジメント協会から提供された寄附講座で、学生と一般社会人が共に学ぶ形をとっています。

特別講座を担当する教授の話では、学生は講師から学ぶと同時に、実際に企業でCSRに取り組んでいる社会人の投げかけを通しても学ぶことができる。又、社会人も学生から質問により気づき得ることができる。と意義を話されていました。

特別講座では、スタートと最後の講座は大学教授が務め、CSRの重要性や将来の展望など、CSRの意義が語られます。2回目以降はCSRの実践に熱心な企業から、自社の取組み状況の紹介があります。

講座を担当する企業にとっては、CSR優良企業として、知名度、好感度向上が見込める訳で、11社に選ばれることで企業イメージが向上に繫がります。又、大学や学生は、就職先としての企業について、企業理念や取組姿勢を確認できるわけで、双方にメリットのある中々優れた仕掛けと思われます。ただ、寄附講座を提供したリスクマメジメント協会としてのメリットは定かではありません。

尚、ここでのCSRの紹介は、これまでに本メルマガで紹介してきた「日本化されたCSR」への取組みについてでした。

 

その2:本年(2012年)、3年ぶりに特別講座が再開されました。初回はブラッセルにロビイストとして駐在されていた藤井敏彦氏*から、「日本化されたCSRと世界のCSRは違うものである」ことが強調されました。ヨーロッパのCSRは、前回も紹介しましたが、「国だけでは対応しきれない人権や雇用等について、企業にも社会的責任として、その一端を担って欲しい」。日本ではこのことが正しく認識されていないことを踏まえて、「日本もこれまで以上に、より踏み込んだ社会的責任を意識する必要がある」とのメッセージと受け取りました。ISO26000が制定されたこともあり、3年前の講座とはCSRの方向性が大きく変わりました。

*藤井敏彦氏は各地でヨーロッパのCSRについて講演されており、私は東京と横浜で都合3回、お話を聞くことになりました。

又、2回目からの企業からの紹介も、2011311日の東日本大震災を受けて、災害時のリスクや事業継続性(BCP)を含めた内容になっており、企業の社会的責任として、災害時においても、如何にタイムリーに復旧、復興に貢献してきたかについて、夫々の企業の立場での取組みが紹介されました。

このように、昨今のグローバル化や、社会状況の変化に合せて、CSR特別講座の教育内容は変化してきています。2009年の講座を受けた学生は、日本化されたCSRを学んで巣立っていった。2012年に受講した人は、海外のCSRと日本のCSRの違いを理解した上で、災害時のリスクや事業継続性(BCP)を含めた内容を理解して巣立っていく。

カリキュラムは、最新の状況に基づいて組み立てられ、講演の中身も旬な話題が盛り込まれる。講座の内容がどんどん変わっていくのは当たり前で、社会人になっても常に学び続けなければならないことを示唆している。今の様に変化の激しい時代の学びはどうあるべきか?異なる年の特別講座を受講した者の率直な感想です。

 

■余談:CSR経営を実践された経営者のお怒りの言葉

以上の様に、世の中がCSRの向上に動いていて、CSR報告書等でアピールしているが、あるCSR経営を実践された経営者の女性は、「最近は人員削減のニュースが多い。従業員を解雇する前に、企業トップ始め経営幹部が自らの報酬を返上し、住居のない解雇社員に会社の施設や、経営幹部の住居を提供するぐらいの気構えが必要ではないか。声高にCSRを叫んできた企業があっさりその看板を下ろす風潮を見るにつけ、まだまだ日本企業にとっては掛け声だけのCSRだったのだと思わざるを得ません。」と話されている。

この経営者は、英国の「ザ・ボディーショップ」日本販売店の社長を務められた方で、この会社が単に利潤を得ることが目的ではなく、「環境保護」、「人権擁護」、「動物愛護」にまつわる活動を通じて社会に変革を起こそうという、極めて高邁な理念を掲げていたことに共感され、企業経営は未経験であったが社長を引き受けた。3年で黒字化、黒字化までは報酬に手をつけず万一に備えたという(以上、日経ビジネス2009223日 有訓無訓より)。

1990年に既にヨーロッパのCSRを実践されてきた方がいました。このように、派手な広報宣伝をしない、地道にCSRを実践している、光り輝く宝物の様な会社もたくさんあるのですがーー。

 

 

次回は地域貢献型企業認定制度(CSR)について紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<8> CSRその4:地域貢献企業認定制度(CSR)

 

地域発のCSR認定制度について

地域発のCSR認定制度は、2007年頃から京都、横浜で始まり、宇都宮にも展開されている。スタート時点では、CSRのISO化が検討されていたが、標準化もガイドラインレベルであり、企業が取り組むべき課題として、充分な認識及び浸透しているとは言い難い状況だった。

京都では、プライベートマークを取得した企業による個人情報の漏洩や、ISO取得企業の不祥事が頻発、認証を取得することが目的化し、CSRの認識が徹底されていない。株主が最重要から、企業を取り巻く多様なステークホルダー(利害関係者)の満足度向上へ。環境への配慮や、働く人たちの配慮や、キャリアップ支援、積極的な情報開示、地域社会への関与など、より広範囲な責任が求められていた。

そこで、「経済」「社会」「環境」の3つの側面について、京都CSR(KSR):「企業の社会的責任マネジメントシステム要求事項」として、認証制度をスタートさせた。

尚、KSRは京都から発信の意味で、京都限定を意図したものではない。

*東京都は地域性にこだわったCSR認定の仕組みは見当たらないが、銀行の融資条件として、個々の項目(環境、品質、情報、衛生、労働)に対する取り組みが優れていると金利が緩和される仕組みがある。

 

■横浜型地域貢献企業認定制度

横浜型地域貢献企業認定制度は、横浜市が横浜市立大学CSRセンターLLPの影山摩子弥センター長に制度設計を依頼し、2007年から運用が開始されている。

大手企業が人、物、金を使って、CSR報告書等で大々的に広報・宣伝するのに比べ、地域貢献企業認定制度は、地元に密着して企業活動を継続し、納税を確実に行い、地域の雇用を増やしている企業を認定する。主として中小企業を対象として、自治体が地道に経営を実践している企業を口コミで探し当て、自治体のCSR認定担当者が企業に出向いて企業の経営状態についてヒアリングして認定する。認定されると自治体により広報され、金融機関からの融資の条件も有利になるなど、ほとんど費用負担もなくブランドイメージを高められる仕組みとなっている。

評価項目は「コンプライアンス(」、「環境」、「品質」、「労働安全衛生」などの10項目。これらについての”具体的な取り組み”を問うのが中心だが、ISOマネジメントシステムに相当する“仕組み”についても評価するようになっている。20123月現在150社を超える企業が認定されており、業種も幅広い。

横浜型の地域貢献企業認定制度を設計をされた影山先生は、認定制度の成果について以下の様にコメントされている。

企業名の公表や低利融資制度の活用といったメリットについても前面に打ち出しているので、中小企業ほど取り組みが進むケースも多い。むしろ中小企業ほど、生き残るためにステークホルダーとの関係を重視し、取組みを進めている場合がある。それがCSRの本質だ。

CSRはシステムでないといけない。企業だけの取り組みではなく、ステークホルダーに取り組みを伝え、また支援を受けるといったことが重要になる。企業の取り組みはすべて利益につながらないといけない。短期的な利益と長期的な利益の両方を考える必要があり、社会から信頼を勝ち得ていくのは長期的な利益につながる。

 

CSR経営のまとめ

これまで、4回に亘りCSRについての現状を紹介してきたが、近年、EMS(環境マネジメントシステム)にCSRを取り込んでいるケースが出てきている。経営の目指すところは「環境に配慮した持続可能社会」であり、「雇用や地域社会への貢献としての社会的責任」であり、CSRが更に進化、発展していく方向にある。

又、近年、CSRを更に進めて、CSV(Creative Shared Value:共通価値)と言う概念も出てきており、これについては、本連載の最後に紹介する予定です。

 

 

次回は環境経営の観点で、リサイクル、有害物質管理について紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<9> 環境マネジメントシステム

 

■環境マネジメントシステム(EMS)

EMSと言えば、ISO14001が国際規格として中心にあり、大企業及び大企業と取引する企業はこのマネジメントシステム(MS)の認証を受けていないと取引が難しいこともあり、多くの企業が取得している。

私の前職の会社はISO14001の認証を取得している企業だったため、他のEMSについての関わりはなかったが、退職後フリーになってEMSの広がり状況を調べていくと、認証取得費用及び維持費用を安く抑えた日本独自のEMSが広がってきていることが解かった。

ISO14001はフル装備のEMSであり、認証取得費用及び維持費用が高く、中小企業では大きな負担となっている。又、高い費用を払っても、本業の経営の改善に繋がらず、「紙、ゴミ、電気」の管理に留まってマンネリ化しているケースもある。

ISO14001については、当初から「審査員はアドバイスやコンサルティングはしてはいけない」の縛りがあり、認証を取得する側からは「審査員から改善に向けた適切なアドバイスが得られない」との不満がアンケート調査でも明らかになっている。

ISO14001は中小企業には負担が大きいため、中小企業でも構築でき、経営にも役立つ日本生まれのEMSが登場してきている。それが、エコアクション21、エコステージ、KES、コンパクトエコシステムである。

 

■ISO14001以外のEMS

1)エコアクション21:環境省が推進するEMS

 「環境経営システム」「環境への取組」「環境報告」の3要素が統合されており、環境負荷(エネルギー使用量、ごみ排出量など)を把握し、把握した環境負荷の削減のための目標をたて、P-D-C-Aを回して、結果を「環境活動レポートにまとめるところまでを仕組みとして要求している。エコアクション21審査員は、ガイドラインの適合性審査及び取り組みに関する指導、助言を行う。初回審査の費用は20万円程度。

2)エコステージ:民間企業が中心に開発、及び推進するEMS

 ISO14001を補完し、環境経営の基礎から内部統制の構築からCSRの実現まで5段階の認証ステージがある。ISO14001レベルはステージ2。品質、安全、人事、情報セキュリティーなどの他のマネジメントシステムを統合した認証はステージ4レベル、内部統制やCSRの実現はステージ5で、段階的に進化できる仕組み。評価員はコンサルティングも可能(費用は別途)。初期登録評価(訪問調査、研修含む)で60-100万円程度。

3)KES:自治体が開発、推進するEMS

 ステップ1とステップ2があり、ステップ2がISO14001レベル。コンサルティングを受けながら取得する方式で、ステップ2の取得費用は20万円程度だが、構築講座の受講料金が別途必要。現在16県にKESの協働活動組織がある。

4)コンパクトエコシステム(CES):日本経営士会が開発、推進するEMS

 CESはエコアクション21の前身のEPEPシステムを活用したシステム。CESは登録のみで認証はなし。ガイドラインに沿って実施し環境保全レポートを作成して公表。登録料は初回3万円。

 

 上記の4つの日本発のEMSは、いずれも審査員が改善に向けたアドバイスを行うことができ、ISO14001の様な、「審査員がアドバイスを行ってはならない」の縛りはない。又、いずれのEMSもISO14001のレベルに到達するまでにかかる費用は小さい。

 

■ISO14001の功罪

ISO14001は、ISO9001(品質マネンジメントシステム)のMSを継承し、ターゲットを品質から環境に切り替えてEMSとして順調に拡張してきた。日本には2万件のISO14001適合組織があり、2011年に減少に転じるまでの15年間で日本のEMSの普及に貢献した。

又、現在もISO14001がその基本を維持しながら、より簡素の物から、より高次なものまで、日本独自に進化発展し続けていることから、EMSが日本の経営になくてはならないものとして定着した事を裏付けている。又、ISO14001認証取得が増えだした2000年頃は、審査員の需要もあり、団塊世代の仕事を作り出した面もある。

一方、ISO14001はISO9001同様、EUによる非関税貿易障壁との見方もあり、生真面目な日本は必要以上に書類を揃える形にこだわり、経営の実効への貢献が今一つという現実がある。それが、より認証取得&更新費用が安く、簡素で実効の上がるEMSの開発に繋がり、更には、CSRや内部統制等の新たな時代の要求を取り込んで進化する日本発のEMSを生むことになっている。

 

 

次回は、有害物質管理について紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<10> 有害物質管理その1

 

■有害物質管理の経緯

有害物質管理は、過去の公害等の歴史を踏まえて、有害と疑わしき物質を特定し、使用や廃棄を制限してきた。有害物質管理の仕組みはヨーロッパ主導で始まり、今も管理する物質の種類、管理の方法はEUで起案され、それが実質的に世界標準として取引の前提となってきている。

ヨーロッパ大陸では、産業革命がいち早く広まり、地続きのため上流の国の川の汚れが、下流の国に影響を与える等の公害の歴史を経験し、それらへの対応としての有害物質管理は最も進んでいる。

日本も本連載の最初のところで紹介した悲惨な公害を経験してきているが、有害物質管理の仕組みについては、EUで定めた基準を守ってヨーロッパへの輸出を伸ばしてきた中で、管理を充実させてきた歴史がある。

1990年頃から、ヨーロッパの国々はそれぞれの独自基準を設けて、適合していない商品、製品を受け入れない方向で規制を整備してきた。輸出立国日本は、各国の基準を調べて、適応させたうえで受け入れてもらうことに努力してきた。

 

■有害物質管理の転機

ところが、2001年にオランダで起きたある事件がきっかけとなって、日本の有害物資管理の対応は激変した。ゲーム機の周辺機器の一部から許容レベルを超えるカドミウムが検出されたとして、オランダの当局に判定されたのである。オランダは灌漑によって国土を作り、花木を輸出する環境先進国である。有害物質の輸入規制をするために、EU全体の規制に先駆けて、取り締まりを強化していた。この判定は日本メーカーを震撼とさせた。

日本は2000年代もヨーロッパへの輸出は大きな比重をしめていたため、EUの各種指令をクリアしないと輸出することができない。「日本メーカーたたき」「見せしめ」の声もあったが、日本の電気電子機器メーカーはソニーを先頭に、RoHS指令への対応を粛々と進めた。

 

■WEEE指令及びRoHS指令

欧州では、20032月頃に廃電気電子機器リサイクル指令(WEEE指令)及び電気電子機器の有害物質指令(RoHS指令)の骨子がまとまり、RoHS指令が動き出した。それは20067月以降市場導入される電気電子機器に対し、「有害6物質(カドミウム化合物、鉛化合物、水銀化合物、六価コロム化合物、ポリ臭化ビフェニール、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の非含有」を要求するものである。

それまでは国ごとの規制で、禁止されている物質も少なかったが、RoHS指令からEU加盟国共通の規制で、禁止物質も増え、対応が難しくなってきた。

それらの物質は、極めて有用な機能を有している物質であることを発見して、機器等を作るにあたって便利に使ってきただけに、それらが使えなくなることは大変なインパクトがある。そのため、世界中で比較的安全と言われている物質の組み合わせによる機能代替の研究、技術開発が進められ、今もその取り組みは続いている。

 

 

次回は、有害物質管理への対応について紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<11> 有害物質管理その2:RoHS指令

 

■RoHS指令への対応

 RoHS指令で使用が制限される物質は、Pb(鉛)、Cd(カドミウム)、Cr6(6価クロム)、Hg(水銀)、PBB(ポリブロモビフェニル)、PBDE(ポリブロムジフェニルエーテル)の6物質。これらの物質は、それぞれに優れた特性を有し、工業製品にも便利に使われてきたものだが、一方で人体には有害で、廃棄物として地球上に拡散すると公害を引き起こすことが解っている。

 この様な規制が始まると、生真面目な国民性の日本は、一斉に先を競って走り始めた。まず大手企業は、設計段階で制限物質が入り込まない様に、部品メーカーに非含有を要求し、非含有証明書の提出を求めた。又、組み立てられて納品される物に対し、6物質が含有していないことの分析検査を求めた。大企業自らも非破壊を行い、非含有を担保する仕組みを作った。

現在も、この取組みは世界中で多大な労力を要して続けられている。

 

■RoHS指令で鉛の使用が制限されたことにより発生した問題

 RoHS指令が発効されて、世界的なレベルで問題となったのが「はんだメッキ」のウィスカ(猫のヒゲ)問題である。「はんだメッキ」は電子機器の微細回路の接続に必須のものですが、スズの単結晶であるウィスカの発生によって、隣り合う回路が短絡状態になり、誤動作を起こすものである。

oHS指令の流れが起こる以前は、「はんだメッキ」はスズと鉛の合金で、鉛の柔らかい特性をうまく使うことで、ウィスカの発生を抑え込んできたが、鉛が使えなくなることで、スズの単結晶がいたずらを始めたのである。特にコネクター等の接続部で接触圧等の応力がかかるところで問題が発生した。

1980年代に電話交換機の筐体内で、スズの単結晶による短絡事故が発生。以来、鉛を適切に利用することで問題の発生を抑えこんできたが、鉛の使用制限により、再び課題として浮かび上がってきたのである。

今でも、ウィスカを完全に抑え込む技術は見つかっておらず、引き続き、代替物質の探索、使い方の工夫が続けられている。

 

*尚、鉛の使用を制限することに対し、「有害物質として管理すればよい。逆に鉛が使えないことで、新たに使用される物質は本当に安全なのか」との懸念も出されている。例えば鉛の代替物質として使われるインジウムなどについては有害性の評価は十分でなく、鉛より有害との報告もある。又、RoHS指令自体が、環境政策に名を借りた非関税貿易障壁との考えもある。

 

■RoHS指令の最新動向

 RoHS指令は、これまでは、CAT1:大型家庭用電気製品、CAT2:小型家庭用電気製品、CAT3:IT及び通信機器、CAT4:民生機器、CAT5:照明装置、CAT6:電気電子工具、CAT7:玩具、レジャー・スポーツ用品、CAT10:自動販売機、が対象であったが、20147月から、CAT8:医療機器、CAT9:監視及び制御機器にも適用が広がることが決まっている。

 

*RoHS指令への対応をめぐるフォーラムで、会場より以下の様な質問があった。「RoHS指令では鉛の含有量をPPM単位で抑え込んで、EUに鉛が入り込むことを制限しているが、一方、ヨーロッパの屋根は鉛で溢れている。又、日本でもまだ鉛管がたくさん残っている。その様な状況で、今のRoHS指令に意味があるのか?」

これに対し、RoHS指令等の基準作りに関わり、5年間ブラッセルに駐在されていたエキスパートの方の応答は、「国際会議で基準を決めるにあたり、質問の様な議論はたくさんあった。でも規制を進めなくていいことにはならない。又、EUは物を作っていないので、結局、EUに物を売りたい側に規制が押し付けられている。」

 上記の質問は、多くの日本人が抱く、疑問、不満ではあるが、結局、輸出で稼がざるを得ない立場の弱い日本としては、粛々と対応するしかないこととなっている。

 

 

次回は、有害物質管理:REACH(Registration,Evaluation,Authorization and Restriction of Chemicals)について紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<12 有害物質管理その3

 

■REACH規制とは

REACH(Registration,Evaluation,Authorization and Restriction of Chemicals)は、化学物質(Chemicals)に対して、登録(Registration)、評価(Evaluation)、認可(Authorisation)、制限(Restriction)を行うものです。EU市場での生産者・輸入者に対し、全ての化学物質(1トン/年 以上)について、環境影響調査を行い、欧州化学物質庁(ECHA)への申請・登録が義務付けられるものです。データ登録されていない化学物質はEU市場に供給してはならないということになります。

EU市場における輸入者がECHAへ申請・登録を行うことになりますが、実質はEU市場に輸出する日本の企業が、現地の輸入業者を特定又は設立し、その業者に対して、申請・登録に必要なデータを提供することによって、初めて生産品の輸出が可能になります。

 

REACH規制で管理される化学物質(高懸念物質:SVHC物質)

REACH規制で管理される化学物質は、2007年当時は3万点余りが対象とのことで、どのように進んでいくか見当もつかなかったが、実際に以下は様に順次追加されるステップを踏んでいる。ECHAは、20081028日に15物質を発表、続いて、2010113日に15物質、2010618日に8物質、2010123日に8物質、2011531日に7物質、20111219日に20物質、2012618日に13物質、20121219日に54物質が追加され、現在、SVHC物質は計138物質となっている。

物質名は、ジクロロコバルト(II)、重クロム酸ニナトリウムニ水和物、五酸化ニヒ素、三酸化ニヒ素、ひ酸水素鉛、ひ酸トリエチル等々、一般の人にはなじみのない名称の化学物質である。

これを受けて、日本では、株式会社エコエンジェル等が、追加される化学物質の分析データ提供サービスを始めている。

 

REACH規制の特徴

ECHA申請された物質の認可は、より安全な代替技術への切り替えが困難であり、かつ、産業活動上使用が不可避な場合にのみ下ることになっている。さらにこの認可を受けるためには、別物質への代替化検討の計画書の提出が求められる。

日本の化審法が"新しく製造・輸入される化学物質を規制するのに対し、REACHは、既存の化学物質についても、改めて新規物質と同等のデータの段階的な登録を求めている。これにより、新規物質と既存物質の区別をなくし、新規物質参入の機会を増大させ、より安全な物質と技術への代替の促進を図ることを狙っている。

 事前届出(登録)のないものは製造や輸入ができなくなるという側面は、日本や米国との違いがないが、既存物質についてもあらためて新規物質と同等のデータを求めていることが新しい。

 

REACHの仕組みでは、REACH-ITへの登録が必要となり、世界で初めてITが必要不可欠な法律となっている。欧州当局は化学品管理のITシステムに多大な経済的・人的リソースを割いている。REACHが求めている化学安全に関わる情報の透明性と説明責任のために必要な多種多様なツール(ITツールも含む)は、当局負担で広く一般に無償で公開されている。

 

 

今回で有害物質管理についての紹介を終了し、次回からエネルギーマネジメントについて紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<13> エネルギーマネジメント

 

今回からはエネルギーマネジメントについて紹介します。

3つのE(economy:経済、environment:環境、energy:エネルギー)

本連載を始める時点では、企業活動は環境についての配慮を充分に取り込んで経営をしなければならないの意味合いで環境経営をテーマとした。又、これまでの公害等の後始末のマイナスの対応から、さらに一歩進めて自然環境を改善するプラスの対応も取り入れなければならないの思いで“新”環境経営と位置付け、経営が取り組むべきことを紹介してきた。

ところが、東日本大震災による原発事故で電力供給が逼迫、原発前提のエネルギー調達は破綻した。これまでのCO排出量削減による地球温暖化への対応に加え、エネルギーの選択による地球環境への配慮も経営の一部として取り扱うことが求められてきている。そこで、これからは3つのEを密接に絡ませて経営に当る必要がある。

 

■エネルギー問題

日本はエネルギー小国と言われ、現在もエネルギー自給率は4%、96%は輸入に頼っている。燃料は薪から、石炭、石油、天然ガスに移行。電力は水力発電、火力発電(石炭、石油、天然ガスを燃料)、原子力発電で作られていますが、その原料のほとんどは輸入で賄われている。

東日本大震災による原発事故を受け、原子力発電設備のほとんどが停止しており、エネルギー需要を賄うために火力発電をフル稼動させているが、化石燃料の輸入が膨らみ続け、貿易赤字の一因にもなっている。

一方、経済を拡大させるために化石燃料を過剰に消費してきた結果、温暖化効果ガスであるCOの排出量が増え、地球規模で温暖化が問題となっている。その結果、氷河が融け、海面が上昇、太平洋に浮かぶ美しい珊瑚礁の国ツバル(海抜が最高でも5m)は、国の存在そのものが脅かされている。

近年、化石燃料依存からの脱却を目指し、再生可能エネルギー活用の取組みが加速していますが、まだまだエネルギー調達に占める割合は小さい。また、海底資源のメタンハイドレードなどの資源開発も始まっていますが、商業ベースにのるまでにはまだ少し時間がかかる。

 

■エネルギーマネジメント

地球規模で温暖化効果ガス排出量を削減するため、COP10等で国際的な枠組みが作られ、全てのエネルギーの使用時に発生するCOの原単位に基づき、COの排出量を把握した上で、削減目標を設定して、CO排出の削減の取組みが行われている。

又、先進国と新興国の共同実施(Joint Implementation)による排出量削減や、クリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism)による排出削減量の獲得、排出量取引(Emission Trading)等のCO排出量削減のためのスキームがある。

このようにCOの排出量低減が推進されてきているが、先進国と新興国の立場の違いから、各国の利害が対立し、順調に進んでいるとは言えない状況にある。

そもそも先進国は、経済を優先とした過剰な化石燃料消費により繁栄を謳歌してきたわけで、大量の温室効果ガスを発生させ地球規模の温暖化を引き起こしてきた責任を負う認識はある。一方、新興国は未だ経済発展の途上にあり、CO削減よりも、経済成長を優先したい立場にあり、成長の足枷となる枠組みはのめない立場にある。20カ国にまで広がったG20国際会議でも、先進国と新興国の利害が対立し、合意形成が難しくなっている。

 

■エネルギー政策と、「省」、「創」、「畜」エネ

 東日本大震災の原発事故により、原子力発電を前提に組み立てられてきたエネルギー政策は、抜本的な見直しを迫られており、再生可能エネルギー活用の促進や、地下や海底のエネルギー資源開発も活発になってきている。CO削減も、脱原発も、それを実現させる基本は「省」エネルギーであり、これまでの使いたい放題のエネルギー使用からの抜本的な意識変革が求められている。

 環境経営の観点からも、徹底した「省」エネルギーに取り組み、その上で再生可能エネルギーによる「創」エネルギー、電力使用のピークを下げたり、移動したりの「畜」エネルギーの推進が求められている。

 

 

次回以降、改正省エネ法、ISO50001について紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<14> エネルギーマネジメント:省エネ法

 

今回は省エネルギー法についてです。

■省エネルギー法の歴史

資源小国の日本は、エネルギー資源を海外に求めると同時に、如何にエネルギー消費を減らすかに取り組んできた。1973年と1979年の2度に亘り、原油の供給逼迫および価格高騰による石油危機があり、日本は経済の高度成長のために、工業化の推進と併せて、省エネルギーを進める必要があった。その流れの中で、1979622日に省エネルギー法が制定され、同年101日から施行。これに伴い1951年に制定された熱管理法は廃止された。

 

2008年の省エネルギー法改正

地球温暖化等の環境の変化に鑑み、エネルギー使用の合理化による燃料資源の有効な利用を確保するため、「エネルギーの使用の合理化に関する法律の一部を改正する法律」(改正省エネ法)が2008530日に公布された。

「住宅・建築物分野の対策の強化」については200941日に施行、「エネルギー管理の工場単位から事業者単位への変更」については201041日に施行された。

<住宅・建築物分野の対策の強化>

住宅・建築物分野の対策の強化を図るため、以下の4項目が追加された。1.大規模な住宅・建築物の建築主に対し、従来の指示・公表のほか新たに命令規定を導入。2.一定の中小規模の住宅・建築物も届出義務の対象。3.住宅事業建築主が新築する特定住宅の省エネ性能向上を促す措置および省エネ性能の表示の推進。4.登録建築物調査機関および登録講習機関に関する規定。

<エネルギー管理の工場単位から事業者単位への変更>

従来の、一定規模以上の大規模な工場に対する工場単位のエネルギー管理義務制度から、業務・事務部門を含む事業者(企業)単位のエネルギー管理義務制度に変更することとなった。また、一定の要件を満たすフランチャイズチェーンについても、チェーン全体を一事業者として捉え、事業者単位の規制と同様の規制が導入されることとなった。このことによって、コンビニエンスストア等の業務部門についても、本法による省エネルギー対策が講じられることになった。

 

■東日本大震災を受けての省エネ法の一部改正

持続可能な省エネを進めていく観点から、需要サイドの省エネを促進すべく所要の措置を講じる。2013年制定、20144月施行予定

<建築材料等に係るトップランナー制度>

これまでのトップランナー制度は、エネルギーを消費する機械器具が対象。今般は、自らエネルギーを消費しなくても、住宅・ビルや他の機器等のエネルギーの消費効率の向上に資する製品を新たにトップランナー制度の対象に追加。具体的には、建築材料等(窓、断熱材等)を想定。企業の技術革新を促し、住宅・建築物の断熱性能の底上げを図る。

<電力ピークの需要家側における対策(工場、輸送等)>

需要家が、従来の省エネ対策に加え、蓄電池やエネルギー管理システム(BEMS・HEMS)、自家発電の活用等により、電力需要ピーク時の系統電力の使用を低減する取組みを行った場合に、これをプラスに評価できる体系にする(具体的には、省エネ法の努力目標の算出方法を見直す)。

 

 

次回はISO50001について紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<15> エネルギーマネジメント:ISO500001

 

今回はISO500001についてです。

 

前回、東日本大震災を受けての省エネ法の一部改正について紹介しましたが、「建築材料等に係るトップランナー制度」「電力ピークの需要家側における対策(工場、輸送等)」は、持続可能な省エネを進めていく観点から、需要サイドの省エネに一歩踏み込んだ訳で、20144月の施行に向けて、新たなビジネスチャンスが生まれたことになる。

 

■ISO50001(エネルギーマネジメントシステム)について

ISO 500012011615日に国際規格として発行された。組織・企業が、エネルギー効率及び、エネルギーの使用及び使用量を含むエネルギーパフォーマンスを改善するために必要なシステム・プロセスの確立を可能にすることを目的とし、エネルギーコストの削減、温室効果ガスの排出量削減につながることを意図している。

日本においては、ISO規格を翻訳して20111020日にJIS Q 50001を制定した。それを受けて、2012年1112日、お台場のプラザ平成 東京国際交流館で「ISO 50001国際ワークショップ」を開催された。海外のISOエキスパートや国内の一般参加者計100名以上の参加の基、日本の省エネルギー政策やISO 50001取得企業の取組などの紹介があり、ISO50001導入の具体的事例やそのメリットを展開してきている。

*尚、本規格は、米国、中国等のエネルギー消費大国の積極的参画の基に検討が進められて発行に至っており、世界標準として広く活用されていくことが見込まれている。

 

エネルギーマネジメントシステムが注目される理由

「環境とエネルギーの時代」と言われる近年、日本においても、省エネルギー法の改正や、東京都の「東京都二酸化炭素総量規制」、各地方自治体の「温暖化対策条例」の実施に伴い、組織・企業に対し今まで以上に省エネルギーの推進を要求する気運が高まっている。

とりわけエネルギーに関しては、主要なエネルギー資源である化石エネルギーには限りがあること、エネルギー消費の影響で地球温暖化等さまざまな環境問題と深く関わり合いがあることから、エネルギーの効率的な利用、再生可能エネルギーの利用等の重要度が増してきている。

ISO 50001は、組織がエネルギーパフォーマンスを継続的に改善するために、系統的な取り組みを可能にするエネルギーマネジメントシステムを確立、実施、維持、改善するための要求事項を規定している。又、この規格は、エネルギーを使用する装置、システム、プロセスおよび要員について、測定、文書化、報告、設計、機器の調達等を含む、エネルギー供給、エネルギー使用および消費の管理に役立つ枠組みを提供している。

尚、この規格では"エネルギー""電気、燃料、蒸気、圧縮空気及びその他類似の媒体"と定義し、再生可能エネルギーを含む種々の形態を指しており、省エネルギー法の対象となる"エネルギー"より太陽光発電、風力発電等も含み幅広くなっている。

 

ISO50001はシステム規格であり、自主的な取り組みが求められる。

規格本文には、具体的に守るべき基準や規制内容は書かれていない。これは、(1)世界各国で基準、規制内容が異なるため、(2)数値等を設定してしまうと、今までエネルギー対策に何も取り組んでいない組織の方が(伸びしろがあるために)、容易に取得できてしまうためです。

SO50001は、仕組みづくりを目的としたシステム規格で、エネルギーマネジメントシステムは、「自分の行動は自分で決める」と言う観点に立っている。審査登録制度は、任意の制度なので法による強制ではない。自分たちの組織について一番知っているのは自分たち、取り組むべきことを自分たちで決めることで、意識が高まり継続的に取り組むことが可能になる。

 

ISO14001:2004との違い

ISO14001でもエネルギー使用を著しい環境側面の一つとして特定し、環境マネジメントの対象としている事例は多いが、ISO50001 は、エネルギーパフォーマンスの改善の成果に重点を置いたマネジメントシステム。データに基づいた詳細な現状の把握から、関連因子の影響などを解析することによって、具体的、実質的な改善策を見出し,エネルギー使用の改善を実現するように構成されている。

 

 

次回からは、環境経営の観点で、「エコを経営に活かす」の話を始める予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~ <16> 環境経営とは

 

■環境経営とは

 環境経営とは、企業と社会が持続可能な発展(Sustainable Development)をしていくために、地球環境と調和した企業経営を行うという考え方。環境関連規制の対応だけでなく、幅広い環境活動が求められる。

 それらの活動には、環境マネジメントシステムの導入、事業所内の環境負荷の低減のみならず、提供する製品・サービスのライフサイクル全体、およびサプライチェーン全体の環境負荷低減、環境事業への転換、顧客や市場の環境意識向上の働きかけなどの活動が含まれる。

 これらの活動を具体化していくためには、ISO14001、環境業績評価、CO2削減技術、MFCA、ゼロエミッション、リサイクル、グリーン調達、エコデザイン、LCA、エコラベル、環境報告書、環境会計、エコジジネスなど様々な手法の活用が求められる。

 

■環境経営が必要な理由

 20世紀は、社会の工業化の進展が著しく、ひたすら経済成長のために大量生産、大量消費を続けてきた。その為に大量の化石エネルギーが消費され、生み出された大量の廃棄物は埋め立てられてきた。しかしながら、既に地球は、人間が使うエネルギーによって排出されるCO2や廃棄物を再生する能力の限界を大幅に超えており、その結果、地球温暖化問題や、環境汚染問題が引き起こされている。

地球の資源は長い年月を掛けて、太陽エネルギーによって生み出されたものが蓄積されてきた。又、空気や水は、人間が利用しながら自然界の再生力を活用、循環させることで持続的利用を可能にしてきた。しかるに、近年、企業は水や空気は「只」で使いたい放題、ほっておいても誰かが再生してくれるとばかりに、消費を増やし、経済競争に明けくれてきた。

 地球規模の環境汚染問題が明らかになり、地球規模の温暖化問題が明らかになっても、自らの経済的競争優位を保つために、率先して身を切って資源消費を抑える動きは弱い。

 世界が協力して資源消費の削減に取り組もうと、国際会議で決めてもいざ実行の段階になると、経済競争優位を優先し、思い切った資源消費の削減に向かわない現実がある。しかしながら、21世紀に入り、20世紀後半から警鐘が鳴らされてきた地球環境破壊が現実のものになり、このままでは持続不可能であることが明らかになった。

 もはや、企業経営において、環境への配慮は付加的な要素ではなく、経営そのものに取り込まなければ企業として存在することすら許されない時代になった。まさにCSR経営からCSV経営*(共通価値経営:経済に貢献することと、社会的課題解決の両方に貢献)に移行しなければならない時代である。 *CSVは、環境経営を超えた所の“新“環境経営のステージです。

 

■環境経営はお金がかかる、は見当違い

 企業経営に環境経営を取り込むことが必要なことは解っても、実際に幅広い環境活動を行うと、お金や人、設備等のリソースが必要になる。これまで水や空気、廃棄物処理を費用負担なしで行ってきたことを基準にすると、プラスアルファのリソースが必要となる。

では、水や空気、廃棄物の処理はどこでの負担されてきたのであろうか?水や空気は、農業、林業、漁業の1次産業で作りだされている。森は水を濾過、保水して、2次産業、3次産業に提供している。又、森はCO2を吸収し温暖化を防止してきた。

企業は水道料を払っているとは云え、森が浄水を作り出す機能に相当する対価は払っていない。又、森がCO2を吸収することに対しても、林業に対し対価を払っていない。企業の環境対応費用の軽視が温暖化を生んだ。

もはや、企業存続のためにも、環境活動にリソースを投入するのは当たり前で、環境活動のリソースをバランスシートに反映させるのは必須である。更に、環境活動の外部費用も取り込んで収支をバランスさせる経営が求められている。

 

次回からは、環境経営の観点で、「エコを経営に活かす」の話を始める予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<17> 「エコロジーを経営に活かす」

 

■環境経営「エコロジーを経営に活かす」

前回は、「環境経営とは」、「環境経営が必要な理由」、「環境経営はお金がかかるは見当違い」の切り口で、環境経営の必要性を述べてきました。

ここからは、環境経営のあるべき姿として「エコロジーを経営に活かす」です。それは、生態系の維持、改善を重視した経営です。20世紀の高度成長期は大量生産、大量廃棄に明け暮れ、地球の浄化能力を大幅に超える資源を消費してきた結果、CO2の排出による地球の温暖化や、環境汚染が地球規模で広がってしまいました。地球の浄化能力は無限大とばかりに、資源を過剰に消費して物を作って、販売競争に明け暮れた結果です。しかし、もはや、その様な野放図な経済活動は許されません。

既に、CSR(企業の社会的責任)、CSV(企業価値と社会価値の両立)等において、企業活動は、社会に対して責任ある行動を求められたり、社会的な価値の提供を求められてりしています。又、国連ではグローバル・コンパクトが提唱され、企業に対し、人権・労働権・環境・腐敗防止に関する10原則を順守し実践するように要請しています。

この様に、21世紀は地球環境、生態系の維持、改善を織り込んで、人権、及び、環境に配慮して企業経営に当ることが求められています。

 

■「エコロジーな経営」とは

では、具体的に経営にエコロジーを持ちこむとは、どのようなことを指すのでしょう。簡単にいうと、投入する資源(材料、エネルギー、人的リソース)を無駄なく使い、余分な廃棄物を出さないということになります。

大量生産の時代は、とにかく短時間に大量に作ることが「正」だったため、売れる見通しがなくても作る。大量の材料を入れて、電気、ガス、原油などのエネルギーを大量に使って、たくさん作る。早く作るためには無駄な切れ端がでてもいい。大量生産を前提とした上で、そのプロセスに存在する無駄を取るアプローチであった。それに対して、エコロジーなアプローチでは以下の様になります。

    作り過ぎる無駄を減らす:需要に応じて作り、在庫を抱えない。オンデマンド生産。

例えば、セル生産方式は大量生産方式のラインで流す方式を、一人で多くの組立工程を持つセルとし、需要に応じて作り、大量生産ベルトライン方式で生まれる仕掛かりの無駄を減らす。オンデマンド生産は需要に応じた生産。

    生産工程で生じるロスを減らす:マテリアルフローコスト会計

マテリアルフローコスト会計は、製造プロセスにおける資源やエネルギーのロスに着目して、原価計算システムにマテリアルの重量情報や温室効果ガス等の排出情報を統合することで、そのロスに投入した材料費、加工費、設備償却費などを「負の製品のコスト」として、総合的にコスト評価を行なう。これによってこれまで見過ごしていた廃棄物の経済的価値および環境負荷の大きさを可視化できる。

    生産設備に関わる無駄を減らす:設備の旧式化、老朽化によるエネルギーの無駄削減。

技術革新により、設備機器の省エネ化は格段に進歩を続けているが、設備の更新が遅れ、旧式化、老朽化設備により、投入エネルギーの無駄が生じ、製品品質向上の取り込みが遅れている。

    廃棄物の処理:廃棄物を減らす。廃棄物を再資源化。有害物質を使わない。

生産の段階で廃棄物を減らす。製品寿命による回収を経て原材料に戻す再資源化する。開発&設計段階で、有害物質使用の最小化による汚染拡大の防止。

    CO2排出を減らす:化石燃料から再生可能エネへのエネルギーの転換。

東日本大震災の原発事故で、原子力発電が止まり、エネルギー危機が現実のものとなった。化石燃料から再生可能エネへの転換は急務、地下資源を燃やす⇒太陽光エネルギーの活用。

 

■エコロジーな経営は、経済成長が全てではない。

20世紀までのGDPで測る経済成長の先には、心の豊かさや生きがいを見つけることはできないことがわかってきました。21世紀は、経済の発展が、我々の真の生活の豊かさに繋がるものでなければなりません。

これまでの大量生産における資源の無駄使いを徹底的に削ぎ落して、足るを知り、地球の生態系を維持し、持続可能な社会を作ることが、21世紀の経営に求められている。それがエコロジーな経営である。

 

 

次回からは、上記①から⑤のエコロジーなアプローチについて、更に具体的に紹介していきます。

新環境経営~環境経営を超えて~<18> 「エコロジーを経営」その1

■「エコロジーな経営」その1

前回は、以下の5つの観点で「エコロジーな経営」を捉える必要がある。と述べました。

1)作り過ぎる無駄を減らす:需要に応じて作り、大量生産ベルトライン方式で生まれる仕掛かりの無駄を減らすオン・デマンド・生産。

2)生産工程で生じるロスを減らす:製造プロセスにおける資源やエネルギーのロスに着目してコスト評価を行なうマテリアルフローコスト会計等の取り組み。

3)生産設備に関わる無駄を減らす:設備の旧式化、老朽化設備により投入エネルギーの無駄が生じて製品品質向上の取り込み。

4)廃棄物の処理:生産の段階で廃棄物を減らす。廃棄物を再資源化。有害物質使用の最小化による汚染拡大の防止。

5)CO2排出を減らす:化石燃料から再生可能エネへの転換は急務。地下資源を燃やす⇒太陽光エネルギーの活用。

当たり前のことですが。源流から下流まで、動脈から静脈まで、空気や水も含めて、生体系に優しい経営が求められます。

今回は1)作り過ぎる無駄を減らす、について紹介します。

 

■作り過ぎる無駄を減らす

作り過ぎない、在庫を抱えないは、トヨタのジャスト・イン・システム(JIT)が有名ですが、高度成長期の様に作れば売れる時代は、ベルトコンベアの量産ラインでコンベアのスピードを上げて、少しでも多く作ることにしのぎを削って競争、たくさんの在庫を持って対応、売れ残ると大量に廃棄の時代がありました。映画モダンタイムの、ベルトコンベアのスピードに人間が振り回されているチャップリンの映像は有名です。

日本が豊かになり、皆が同じものを持つ時代から、好みが多様化し、多品種少量生産の時代になると、トヨタのJITのように、完成品出荷に応じて次の製品の部品を発注することで部品の在庫を極力持たないようにする取り組みが主流になった。また、セル生産の様に、ベルトコンベアにたくさんの仕掛りを持つのではなく、1台ずつ完成品を作っていく方法が取り入れられてきました。

ベルトコンベア方式でもセル生産でも、完成品が全て売り切れて消費者の手に渡れば、作りすぎる無駄は発生しないが、ベルトコンベア方式は考え方そのものが大量に作って在庫する方式のため、消費者の嗜好の変化に対応できず、大量廃棄が生ずる可能性が大きい。

JITも、セル生産も、生産性を高めるための無駄を削る取り組みであったが、「エコロジーな経営」の点でも優れた方式である。

一方、消費者の発注を受けて組立を開始するオン・デマンド・生産は、少なくとも完成品を作りすぎる無駄は発生しないわけで、エコな環境経営の観点で望ましい方法である。PCの世界では、デルモデルが有名だが、直接販売と受注生産を組み合わせ、顧客からのオーダーを受け、その要望に合わせて外部サプライヤから部品を調達して、カスタマイズした製品を生産、流通/小売業者を介さずに直接販売。20041月期末現在、在庫日数3日を実現している。

 

■これからの作り過ぎの無駄への取り組み

これからの「エコな環境経営」は、JITやセル生産方式の考え方の上に、それぞれの業種に応じた、資源の無駄使いにならない工夫を最優先とすることが求められる。

現在、エコロジーな経営の対極にあるのが、スーパー、デパートの食料品売り場である。消費者の欲しいものが売り切れを起こさないようにと品揃えを行い、1円でも多くの売り上げを競う結果、過剰な品揃えが大量の売れ残り、廃棄を生んでいる。

一方、消費者も意識改革が必要である。廃棄コストは価格に転嫁されて消費者に戻ってきているわけで、消費者には「売り切れ御免」を受け入れ、「足るを知る」意識の切り替えが必要である。

又、コンビニでは、賞味期限にまつわる大量廃棄が問題になっており、社会になくてはならない存在になった今こそ、コンビニ業界におけるJITがどうあるべきか?エコロジーな経営の観点で、早急な対応が求められる。

その点、回転寿司は今も進化を続け、注文を受けて握る「オン・デマンド・握り」が主で、最近は長時間くるくる回っている寿司は見かけない。握られた寿司の廃棄の減少が低価格の一端を担っている。

 

 

次回は、2)生産工程で生じるロスを減らす:マテリアルフローコスト会計について、紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<19> 「エコを経営に活かす」その3

 

■「エコロジーな経営」その3

前回は、1)作り過ぎる無駄を減らす、について紹介しました。今回は2)生産工程で生じるロスを減らすと、3)生産設備に関わる無駄を減らす です。

5つの「エコロジーな経営」の観点>

1)作り過ぎる無駄を減らす

2)生産工程で生じるロスを減らす

3)生産設備に関わる無駄を減らす

4)廃棄物の処理

5)CO2排出を減らす

 

生産効率化を阻害する16大ロス(http://www.takuminotie.com/TPM/)
.設備効率を阻害するロス
1)
故障ロス 2)段取り・調整ロス 3)刃具ロス 4)立上がりロス 5)チョコ停・空転ロス

6)速度低下ロス 7)不良・手直しロス 8)SD(シャットダウン)ロス
.人の効率化を阻害するロス
9)
管理ロス  10)動作ロス  11)編成ロス  12)自動化置換ロス  13)測定調整ロス
.原単位の効率化を阻害するロス
14)歩留りロス 15)エネルギーロス 16)型・治工具ロス

 詳細は、「匠の知恵」 http//:www.takuminotie.com 参照ですが、ここには、これまでに積み上げられてきた生産効率化のための知恵が詰まっています。それは投入資源をロスなく使い切る取り組みですから、エコロジーな経営の重要な要素となります。

 

■マテリアルフローコスト会計(MFCA

製造プロセスにおける資源やエネルギーの無駄使い(ロス)を減らす手法としてMFCAがある。MFCAドイツで開発され、生産工程で生じるロスに着目した環境会計*の手法である。

*「事業活動における環境保全のためのコストとその活動により得られた効果を可能な限り定量的(貨幣単位又は物量単位)に測定し伝達する仕組み」

製造プロセスにおける資源やエネルギーのロスに着目して、原価計算システムにマテリアルの重量情報や温室効果ガス等の排出情報を統合することで、そのロスに投入した材料費、加工費、設備償却費などを「負の製品のコスト」として、総合的にコスト評価を行なう。

これによって、これまで見過ごしていた廃棄物の経済的価値および環境負荷の大きさを可視化できる。これら「負の製品コスト」および「環境コスト」の見える化によって、社内的にはコストダウンを達成し、対外的には企業の社会的責任を果たすことが同時に可能になる。廃棄物削減と生産性向上を同時に実現する、

 

生産効率化を阻害する16大ロスは、設備と人を含めたロスを減らすための切り口であり、これまでの現場作業を基に積み重ねられてきたノウハウが詰まっています。これらのロスの本質を理解した上で、マテリアルフロー会計などのツールを活用すると継続的な改善につながります。

ツールを鵜呑みにして業務に取り組むと一時的には効果が出ても長続きはしません。ツールを使って成果を出しながら、並行してロスの本質の理解を深めることが肝要です。

 

 

次回は、4)廃棄物の処理について、紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<20>「エコを経営に活かす」その4

 

■「エコロジーな経営」その3

前回までは、1)作り過ぎる無駄を減らす、2)生産工程で生じるロスを減らす、3)生産設備に関わる無駄を減らす について紹介してきました。今回は4)廃棄物の処理についてです。

5つの「エコロジーな経営」の観点>

1)作り過ぎる無駄を減らす

2)生産工程で生じるロスを減らす

3)生産設備に関わる無駄を減らす

4)廃棄物の処理

5)CO2排出を減らす

 

■廃棄物の処理、廃棄物を減らす

使用済みの物や食品の廃棄処理を適切に行い、無駄に棄てられることがないようにすることは、江戸時代より前の時代では当たり前のことでした。廃棄物を分別して、微生物の力をいただいて、それぞれを資源に戻していました。

しかし、工業化社会になり、地下資源を利用して大量生産、大量消費の生活文化が広まるにつれ、廃棄物が分類されることなく、燃やされたり、埋められたり、川や海に垂れ流されたりして、多くの公害を生むことになりました。

公害は、先に工業化社会が始まった西洋から始まり、高度成長期に狭い国土に工場が詰め込まれた日本では、廃棄物による、ありとあらゆる公害が発生しました。廃棄物処理の取り組みは高度成長期から現在、将来まで、避けては通れない必緊の課題です。

廃棄物を減らすには、まずは作り過ぎの無駄の削減があり、次に作ってしまった「もの」を元に戻す再資源化に向けた取り組みがあり、更には、作る前の段階で、元に戻す再資源化がしやすいように計画することが重要です。

作ってしまった「もの」の再資源化がリサイクルであり、再資源化しやすいように計画することがDFE(デザイン・フォー・エンバイロメント)です。

 

■3R:リデュース、リユース、リサイクル

 廃棄物を減らす:リデュース、捨てないでもう一度使いまわす:リユ-ス、資源に戻して再生させる:リサイクル。リデュースについては、前回までの話の中で紹介してきました。

リユ-スは、「もの」を大切に、できるだけ長く利用、活用することであり、手に入れるまでの苦労が直接的に感じられた時代では当たり前のことでした、工業化社会の進展とともに、作り手と使い手の距離が広がりその苦労が見え難くなったため、廃棄に対する心理的抵抗が薄らぎ、再利用を深く考えずに廃棄している現状があります。

21世紀は、持続可能な地球環境のために、「もの」を購入する段階からリデュース、リユ-スの意識を持った生活スタイルが重要です。

又、作ってしまった「もの」の再資源化がリサイクルであり、そのためには、作る前の段階で、再資源化しやすいように、解体、分解しやすいように計画することが重要です。それがDFEです。

 

■DFE:デザイン・フォー・エンバイロメント

高度成長期は、製品の機能を高めるために、あらゆる部材(金属、プラチック、ゴム、電線等)を組み合わせて、性能、機能の競争に明け暮れました。その結果、使い終わって再資源化のために解体して、素材に分解する段階で、大変な労力とエネルギーを費消することとなりました。

この再資源化のために、解体しやすさに先鞭をつけたのは事務機です。事務機は性能、機能の進歩が日進月歩で、かつ、企業で大量に使われています。事務機は陳腐化すると新商品に切り替えられ、旧商品が回収されるルートができていました。ところが、いざ旧商品を解体するとなると、予め解体しやすい設計がなされていなかったため、簡単には分解できない。当初は解体のために多くの労力、エネルギー、資源を費消する時代がありました。

工業化製品には必ず寿命があり、解体して再資源化されねばなりません。DFEは、製品を資源に戻して再生させることを前提に、商品の開発の段階で解体しやすい設計を行うことです。

考えてみれば、物は皆、陳腐化したり、壊れたりで、必ず寿命がある。江戸時代は物を作って、資源に戻してリサイクルは当たり前だったが、工業化社会になってしばらくは、使い捨ての時代がありましたが、やっと、当たり前の時代が到来しました。

 

 

 

次回は、5)CO2排出を減らすについて、紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<21「エコを経営に活かす」その5

 

■「エコロジーな経営」その5

前回までは、1)作り過ぎる無駄を減らす、2)生産工程で生じるロスを減らす、3)生産設備に関わる無駄を減らす、4)廃棄物の処理 について紹介してきました。今回は5)CO2排出を減らすについてです。

5つの「エコロジーな経営」の観点>

1)作り過ぎる無駄を減らす      (第506号で紹介しました)

2)生産工程で生じるロスを減らす  (第509号で紹介しました)

3)生産設備に関わる無駄を減らす (第509号で紹介しました)

4)廃棄物の処理            (第512号で紹介しました)

5)CO2排出を減らす         (今回のメルマガで紹介します)

 

2酸化炭素(CO2)排出の現状

CO2は温暖化効果ガスとして地球温暖化の原因になっている。最近見直しされたIPCC5次報告書IPCC5次報告書でも、人類が排出するCO2が温暖化の原因であるとほぼ断定された。

CO2は人間が吐く息や、牛などのゲップによっても排出されるが、もっとも大きいのが化石燃料を燃やすことによって生成、排出されるCO2であるといわれている。

CO2の排出量は、産業革命が始まった頃はほとんど排出されていなかったが、約100年後の1850年頃から増え始め、2000年には190年比で10倍以上と、大幅に増えている。2000年の排出量は約2510トン。

産業革命の進展に伴って、化石燃料は、石炭に始まり、石油、天然ガスに移ってきてCO2排出は減る方向にあるが、今でも世界では石炭が多く使用されており、CO2排出量が多く温暖化への影響が大きい。日本では石炭を燃やしてもCO2排出を抑制する技術が採用されているが、新興国ではCO2排出が垂れ流しの状態である。

人間の経済活動にはエネルギーが必要で、これまでは経済成長に必要なエネルギーは欲しいだけ作り出して、使いたい放題であった。

しかし、地球はエネルギーの使いたい放題に悲鳴を上げている。CO2の異常な増加が地球の温暖化を生み、氷河を溶かし、海面上昇を生み、異常気象を引き起こしている。

 

CO2の排出を減らすには

まずはエネルギーの消費を減らすことである。地球がCO2を再生する能力が有限であることを意識して、これまでの便利さ優先の使いたい放題を改め、過剰消費を改めることになる。

先の石油ショック時には、原油の高騰による経済性の観点でエネルギー大量消費型の生産設備の省エネが進んだが、これからは持続可能性の観点で省エネを進める必要がある。

特に顕著にエネルギー消費が伸びているビルや家庭の省エネと共に、輸送の省エネを進めることが重要となる。省エネの具体的な事例については、次回以降、順次紹介していきたい。

 

次に、同じエネルギーを作り出すのに投入する化石燃料の量を減らせれば、化石燃料によるCO2排出を減らせることになる。これは発電施設そのものの効率を上げることであり、設備を提供している重電メーカー等が日々の技術開発の中で、エネルギー消費効率向上に取り組んでいる。先にあげた「石炭を燃やしてもCO2排出を抑制する技術」もこれに当たる。

尚、技術開発を進めても、最新の機器への置き換えが進まなければ、省エネ及びCO2削減にはつながらない。機器の再生処理をも考慮した計画的な最新機器への置き換えも重要である。

 

CO2貯留CCS

 CCS(カーボン・キャプチュア・システム)は、CO2を化学・工学的に分離回収し、それを貯蔵・利用する手法である。回収して、地中奥深くに埋め、温暖化効果ガスを封じ込める。

経済活動によるCO2の発生が避けられないとすれば、CO2をまとめて地中に閉じ込められないか?の発想で技術開発が進められている。

現在も技術開発とトライアルが続けられているが、CO2を地中に閉じ込めた時の2次的な影響や、生態系への影響など未解明の点もあり、公害に繋がらないか?の検証も必要である。

 

 

次回以降、省エネ、創エネ、畜エネについて、紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<22> 省エネ その1

 

今回からは、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介していきます。

■省エネはネガワット

創電、創エネをポジワットとすると、省エネはネガワットになる。電気を創りだして電力需給問題にポジティブに貢献する創エネに対し、省エネはエネルギー消費を減らすことで電力需給問題に貢献する。創電に比べ地味な省エネにネガワットの名称をつけることで、省エネは創電と同様の価値があり、ネガとポジの表裏の関係であることをアピールしている。

 

■省エネ行動

 5S(整理、整頓、清潔、清掃、しつけ)は、日本の製造現場から始まり、今やアジアに広まって高品質(ジャパンクオリティー)を生み出すことに貢献しているが、これからは、5Sに省エネ行動を加えた「6S」が必須です。

本来、省エネは躾の一部ですから、5Sに含まれますが、CO2による地球温暖化問題に苦しむ世界にとって、今や省エネは最重要課題です。日本人が高度成長期に忘れていた省エネルギーな行動スタイル、生活様式を取り戻さなければならない。ジャパンクオリティーを生み出す要素は、5S以外にも、安心、安全、おもてなしなど、たくさんあるが、まずは5Sに省エネ行動を加えたい。

 便利さ優先で、電気使いたい放題の社会の要請で、電気を安く提供するために原子力発電を進めてきたが、核の廃棄物処理の見通しも立たない状況では、原発頼りはありえない。であれば、エネルギー資源小国の日本は、省エネ活動を徹底する必要があります。

 以下では家庭の於ける省エネ行動について解説していますが、人が働くオフィスや事務所でも共通です。工場等の特殊な環境を除いて、適用が可能です。

 

■省エネの基本は断熱(ガラス、壁)

透明ガラスは光を透過させ、太陽光を取り入れた明るく快適な生活を送るために、極めて優れたものですが、一方、断熱の観点からすると、大きな問題を持っています。ガラスは熱伝導が良く、室内の暖気、冷気をどんどん外に逃がしてしまいます。室内で暖房、冷房にエネルギーを使っても、ガラスにはほとんど断熱機能がないため、エネルギーの無駄使いとなります。これに対し、近年、ガラスを2層、3層にし、間に断熱透明シート及び空気層を設けることで、断熱性能を飛躍的に向上させたガラス窓が商品化され、新築の建物を中心に急速に普及し始めている。

又、従来は壁の断熱も不十分でした。外壁の内側に断熱のためのガラスウールは使用しているが、ガラスウールが薄く、外気遮断の施工も不十分なため、暖房、冷房エネルギーの無駄使いが起きていました。最近は、外断熱工法が普及し、外壁と内壁の間に空気層を設けて断熱し、ガラスウールを適切に使用して、外気と室内の空気の流れを遮断することにより、断熱性能が大幅に向上してきています。

高度成長期の建物は、断熱性能よりも機能性に重点が置かれていましたが、近年の建物は、耐震及び断熱の技術進化が著しく、省エネも進んでいる。ただ、建物の建て替え、改造は高価なため、中々置き換えが進まず、省エネの普及が進まない現実があります。既存の建物でも、できるだけ最新の技術を取り入れて、省エネを進めることが重要です。

 

 

次回は、省エネ その2として、省エネハイテク機器について紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<23 省エネ その2

 

■ハイテク機器(LED照明)

 LED(Light Emitted Diode)照明は、約50年前に発明された半導体の延長線上にあります。赤色LEDから青色LEDが生まれ、さらに、青色LEDの青色を白色に変換する蛍光体の発明があって、照明としての使用が可能となりました。LEDで光の3原色を重ねることで白色を得ることも可能ですが、高価になります。

半導体のため、低消費電力で長寿命(4万時間)です。照明は、長い間、白熱電球と蛍光灯の時代が続きましたが、LEDが照明として利用できるようになったことで、一気に省エネ化が進み、急速に置き換えが行われています。実用化されてまだ6年ですが、種類も増え、コストもどんどん安くなってきています。

従来の白熱電球は発熱体を照明に利用していたわけで、光に変わるより熱に変わる分が多く、電気の無駄使いが生じていました。現在のLED照明は、同じ明るさを得るのに消費する電力は白熱電球の約1/10です。又、白熱電球の長所であった色の温かみも、LEDでも出せる様になってきました。LEDha半導体であるため、密封された高温な空間では寿命が短くなる可能性があり、注意が必要です。

 

■ハイテク機器(ヒートポンプ)

 日本で初めて商品化されたヒートポンプは、空気を圧縮することで発生する熱を利用したものです。古くから原理は知られていましたが、それを実現する製造技術がなく、15年くらい前にようやく実用化されました。ヒートポンプは、今は給湯機やエアコン、冷蔵庫等に利用され、給湯、空調、保温にはなくてはならない存在になりました。

ヒートポンプの性能はCOP(:成績係数)で示されます。COP:3は、簡単にいうと、ニクロム線ヒーターで水の温度を1℃上げるのに使う電気量で、ヒートポンプを使うと同じ電気量で3℃上げられるということです。ヒーターで直接水を温めるより、空気を圧縮することで発生する熱で水を温めた方が、電気の使用量が1/3になるということです。これによって、給湯機、空調機の省エネが一気に進みました。現在ではCOP:6を超えるものもできてきました。

 

■ハイテク機器(その他家電)

冷蔵庫は24時間連続使用のため、電気の使用量に占める割合が高く、省エネ性能は重要です。冷蔵庫もヒートポンプ方式の採用によって省エネ化が進んでいます。古い冷蔵庫を買い替えることで電気代の節約になり、早期に購入費用を回収できる場合があります。

掃除機は便利な家電ですが、近年、高性能化が進み、消費電力も増えています。エコモードでは、床に張り付いて使用している時の消費電力は比較的小さいのですが、床から浮かせて使用していると消費電力が大きくなります。掃除中に、掃除機を回したまま物を移動したり、掃除機が床から離れていたりすると、無駄な電力を消費することになります。省エネの観点で使い方に注意が必要です。

 

 

次回は、省エネその3として、見える化について紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<24 省エネ その3

 

■ワットアワーメーター

 省エネの基本は、それぞれの機器の電力使用量(KWH)の把握です。ワットアワーメーターは、基本的な省エネツールで、使い方によっては最も有効なツ-ルとなります。

それぞれの電気製品の使用電力(W)、及び積算電力量(WH:電力時間積)が解り、省エネの攻めどころが解ります。3.11以降は、一家に一台の必需品となっています。個々の機器の消費電力の測定データをエクセルに取り込んで積算電力量を求め、電気料金/KWHを掛ければ、機器毎の電気代が求められます。省エネによってこの金額を削減できれば、それがそのまま家庭の経費削減になります。

家庭用の100Vコンセントに差し込むタイプのワットアワーメーターは3000円台で入手可能で、最近は安い売りで1000円を切るものも出てきました。震災前に大手電気メーカーが販売していた業者向けの物は、安いものでも12000円でしたから、今は1/10です。それだけワットアワーメーターが売れているということになります。

 

■省エネナビ、HEMS、BEMS

 省エネナビ、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)は、家庭用の消費エネルギーの見える化を担ってくれます。

HEMSでは分電盤のところでの系統ごとに、電力使用量を把握して、リアルタイムで表示したり、PCに取り込んで時間帯別や累積の電力使用量を確認することができます。

 BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)では、ビルのユーザーごとに、フロアーごとに、部屋ごとに、消費エネルギーの使用状態の見える化を担ってくれます。これまではまとめて電力料金の請求に応じていた状態から、どの場所で、どの機器が多くの電力を消費しているかが解り、電力料金を下げるための省エネの攻めどころが解ります。

 先々、これらのエネルギー・マネジメント・システムの進化系として、電力使用量の上限を決めておき、上限を超えない様に制御することも可能となります。その場合、予め、OFFにする順番を決めておき、生活や仕事に影響の少ない機器から切り離していくことになります。

 

■省エネ診断

 省エネ診断は、エネルギー消費の現状を把握し、これまでに紹介してきた「行動による省エネ」、「建物による省エネ」、「機器による省エネ」の観点から省エネのヒントを提供するサービスです。中小企業におけるビルや工場の診断から始まって、家庭の診断サービスにも広がってきました。

地球の温暖化が化石燃料の過剰消費によることが明確になった今は、省エネ診断サービス等を活用して、自らのエネルギー消費の現状を把握し、主体的に計画的に省エネを進めて行くことが一人一人に求められています。

 

■契約電力量の見直し

 見える化で電気の使用状況が把握できると、どの時間帯で、何が動いている時に最大電力状態になっているかが解ります。電力会社から電気を買っている場合、家庭ではブレーカー(線路遮断器)の契約容量により、契約料金が変わります。省エネを進めて、最大使用電力(ピーク)を見極めて、容量を下げる契約に変更することで、電気料金(基本料金)を下げることが可能です。

また企業においては、年間を通した最大の使用電力で年間の契約電力料金が決まるので、ピークを動かして平準化することで、契約電力料金を下げることができます。毎月の金額*12か月のため、大きな経費削減になります。

 

 

次回以降は、創エネ、畜エネについて、紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<25> 創エネ その1

 

今回から、創エネについて紹介していきます。

■はじめに

創エネというと、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電、小水力発電等が浮かびますが、政策の影響を受けて予算がつかず技術開発が停滞していた時期がありました。3.11の原発事故を受けて、再生可能エネルギーによる創エネの重要性が再確認され、俄かに技術開発に沸き立っている分野もあります。まずは、今もっとも普及が進んでいる太陽光発電から紹介します。

 

■太陽光発電

創エネで普及が最も先行しているのが太陽光発電で、家庭の屋根に搭載が始まってから約20年が経ちます。導入初期は太陽光発電システムが高価だったため、多額の国の補助金が当てられ、導入推進がなされました。

一時、国の補助金がなくなり足踏み状態になりましたが、世界的な地球温暖化問題により補助金が復活し、かつ「余剰電力買取制度」の導入により再び勢いがつき、紆余曲折を経て、近年は急激に普及が進んでいます。

又、企業では、3.11の原発事故を契機に「全量買取制度」が始まり、1MW以上のパネルで大規模に発電するメガソーラーへの参入が進んでいます。

 

■余剰電力買取制度

 10KW未満の発電に適用され、自家使用で余った電力を、電力会社が買い上げることが義務化付けられた制度です。売電契約時の価格で10年間売電することができます。売電価格は制度の開始時は48円/KWHでしたが、毎年見直しがされ、42円、37年と年々下がってきています。

電力会社は、買い上げた電気代金を電力利用者から回収することになっており、賦課金の形で電気料金に上乗せされています。

売電価格は、太陽光発電システム導入する消費者がインセンティブを持てる価格で、かつ、賦課金の負担感の兼ね合いで決められています。

 

■全量買取制度(固定価格買取制度)

10KW以上の発電システムに適用され、発電電力の全量を、20年間、固定価格で電力会社が買い上げることを義務付けた制度です。海外ではこの制度の採用で、創エネ(太陽光発電、風力発電等)の普及が進んだことを受け、日本でも2012年7月から始まりました。

大規模メガソーラー事業者の参入を喚起するため、売電価格を40円/KWH(税抜き)と高めに設定した結果、参入が相次ぎメガソーラーの用地確保と送電線の容量確保が問題となりました。多くの事業者が参入したことは目論見通りでしたが、一方では、高い固定価格の権利は確保して、工事は先送りで利ザヤを稼ごうとする悪質業者も現れ、所定期間内に着工しない場合は権利取り上げの対応も必要となりました。

「全量買取制度」は、メガソーラーのみならず、10KW以上から対象となるため、小規模事業者や家庭用でも増えてきています。

一方、農地の上に太陽光パネルを設置し、営農を続けながら売電の副収入を得るソーラーシェアリング(太陽光を作物と発電で分け合う)も始まりました。狭い国土の有効利用に繋がり、後継者不足問題を抱える農家の経済的自立支援になるため、全国に広がりつつあります。

 

■太陽光発電の将来

 太陽光発電システムは電化製品で必ず壊れます。適切にメンテナンスをしながらできるだけ長く利用し続ける努力が必要です。

システム導入当初は太陽光パネルの架台の取り付けの問題で、屋根の水漏れトラブルが頻発しましたが、今は防水技術、施工技術の改善でクレームが激減しています。

太陽光パネルは20年以上持つといわれてますが、部分的な日陰によって発電電圧のアンバランスが生じ、破損する事例が出ています。又、ロウ付けや、半田付けの接続部はそれ以前に劣化します。直流を交流に変換し、系統に接続するためのパワコンは半導体でできているため10年で交換が目安です。

システムの利用の過程で発生する様々なトラブル情報を共有して、未然防止に繋げる取り組みが重要です。

太陽光発電は、50年前の半導体の発明から派生し、個人がエネルギーを作れるようになった画期的なシステムです。是非、これからも技術開発の成果を取り込みながら、エネルギー自給自足の一手段として大切に育てていきたいものです。

 

 

次回は、創エネその2 風力発電について紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<26> 創エネ その2

 

■風力発電の現状と課題

 

風力発電は、欧米では再生可能エネルギー発電の中心となっています。日本も欧米製の風力発電設備で普及を図りましたが、タワー自体が根本から折れるなどの故障が相次ぎました。 

日本は山がちな地形で乱気流が発生しやすく、落雷も頻発する。欧州の風が真っ直ぐに吹くのに対して、日本の風は渦を巻くように様々な方角から吹くため、風車への負荷が大きい。欧米製は、日本の風の特性が考慮されていなかったということになります。

又、海外メーカーの風車は国内でのサポート体制が万全だったとはいえず、故障した部品の取り寄せに数カ月を要する。しかも海外製の風車はブラックボックス化されており、日本の風力事業者が自社で修繕をするのが難しいという事情もありました。

発電事業はひとたび風車が故障して発電が止まってしまうと事業者への収入は絶たれるわけで、風力発電の普及が進まず、後ろ盾のない風力発電事業者の身売り話は絶えなかった時代がありました。

 又、日本では、騒音や場所の確保の問題で、地上には風力発電に適した場所は少ない。北海道はポテンシャルはあるが、送電線網の制約があり、容量確保が中々進まない現実がありました。

 

■風力発電の今後、将来

日本の風力発電市場がよみがえったのは原発停止によるエネルギー問題でした。エネルギー危機を受けて、2011年に固定価格買い取り制度の導入が決まり、太陽光発電よりは条件が厳しいものの、これまでとは比較にならないほど風力発電の事業環境は改善しました。又、風力発電設備も当初は欧米製中心でしたが、国産メーカーも参入し、信頼性向上が図られてきています。

一方、日本は周りが海に囲まれている利点を生かして、莫大なエネルギー量が見込まれる洋上に場所を求めて、大型の洋上発電施設の実証実験が始まっています。福島沖の超大型洋上風力は、送電ケーブルは8月中に敷設完了、10月にも運転開始の見込みです。

日本の幅広い卓越した技術を集約して、世界に先駆けて、大規模な発電手段として、今後のベース電源の一つになることが期待されています。

 

■家庭用風力発電

 家庭用も、プロペラ型のもので、安いものは600Wで10万円程度、1.5KWで40万円程度のものが出てきました。太陽光と違い、風があれば24時間発電できるので、場所によっては大きな発電量が期待できます。

又、弱風でも風を捉えやすい垂直軸型ブレードタイプに大手スポーツ用品メーカーのヨネックスが参入しました。ラケット、ゴルフ、スノーボードでのカーボン加工技術を活用して軽量化と最適形状で弱い風速でも回転しやすく、発電効率を向上させることができる。風向きに関係なく低風速域(1.5ms)であっても発電を開始することができ、軽量で耐久性が高いとのことです。

平成26年度の風力発電の全量固定買取価格は、20KW未満で55/KWHです。太陽光発電に風力発電を追加して、再生可能エネルギーのダブル発電が今後増えてくると思います。2つで、エネルギーの自給自足が見えてきました。素晴らしい。

 

 

次回は、創エネその3 地熱発電、バイオマス発電、小水力発電風力発電について紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<27> 創エネ その3

 

地熱発電

日本は火山列島と呼ばれるほど火山の多い国で地下深部にはマグマが存在し、膨大なエネルギーが眠っている。地熱発電はこのエネルギーの一部を蒸気という形で取り出し利用するもので、エネルギー資源にめぐまれないわが国にとって、純国産の再生可能な貴重なエネルギー資源です。天候に左右されずに、年間を通じて安定した電力を供給することが可能なため、設備利用率が高い。

日本は世界第3位の地熱資源量を保有していながら、設備容量では世界第8位に止まっている。火山も多く、地熱開発の技術水準も高い日本で地熱発電がそれほど盛んでないのは、候補地となりうる場所の多くが国立公園や国定公園に指定されていたり、温泉観光地となっていたりするため、景観を損なう発電所建設に理解を得にくいことも一因。

20122月、環境省の検討会で開発が規制された国立公園などの一部の地域については公園の外などから斜めに井戸を掘ることを条件付きで認める基本的な考え方を示された。

地熱開発は、平成になってから約31kwの開発が行われ、それまでの22kwの開発と合わせると約53kwを超える電源となり、ようやく本格的導入段階を迎えています。

また近年、天然の熱水や蒸気が乏しくても、地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し、水を送り込んで蒸気や熱水を得る高温岩体発電 (hot dry rock geothermal powerHDR)の技術も開発され、地熱利用の機会を拡大する技術として期待されています。

 

■水力発電

水力発電は、かっては防災の貯水と発電を担ったダムにより、日本の再生エネルギーの主役を占めていたが、膨大なエネルギー需要の延びに応えられず、火力発電や原子力発電にとって代わられた。

マイクロ水力発電とは小規模な水力発電のことで、用水路、小河川、道路脇の側溝の水流、水道 等々、様々な水流を利用して発電を行うことである。自然環境への負荷が少なく、少ない出費で行うことができる。マイクロ水力発電の明確な定義は存在しないが、制度上は200kW未満の発電設備で各種手続きが簡素化されるため、この規模のものが総称してマイクロ水力発電と呼ばれている。

マイクロ水力発電は過去100年以上の長い歴史を有しており、技術上の課題はほとんど解決されているものの、日本では複数の省庁によって各種規制が設けられ普及を阻害されてきた。

2010331日、経済産業省が所管する200kW未満の発電設備に関する規制の一部または全部が不要となった。しかし、農水省所管の農業用水に関する規制、国土交通省所管の慣行水利権に係る水利使用の許可手続きなど、他の省庁の規制は依然として残っている。

日本では水車で粉をつく(ひく)といったことをしてきた長い伝統があり、水車の回転で生じたトルクを、従来のように木の棒(粉をつく棒)に伝えるかわりに小さな発電機に伝えれば発電できるので、日本人にはおなじみの水車づくりのノウハウを ほぼそのまま水力発電装置の自作に活かすことができる。蓄電装置と組み合わせれば、かなり安定した電源として使うこともできる。 

昨年、「軽水力Cappa(カッパ)」がグッドデザイン賞中小企業庁長官賞を受賞した。大きさは幅83センチ、高さ66センチ、奥行き77センチで重さ57キロ。出力220ワットで、24時間で約5kwhの電力を生み出せる。まだ高価だが、普及によってコストダウンが期待できる。災害時や、環境イベントでの啓発ツール、再生可能エネルギーについての子どもたちの学習などでの活用が期待されている。

 

 

次回は、創エネその4:バイオマス、藻類燃料について紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<28> 創エネ その4

 

■バイオマスとは

バイオマスは、英語のbio(生物資源)mass(量)を表しています。バイオマスにはいろいろな種類があり、木質資源、下水汚泥、家畜糞尿、食物残渣等の動植物から生まれた再生可能な有機性資源です。石油、石炭なども、もともとは植物資源が変化したものですが、作られるまでに長い年月がかかるため、再生可能な資源とは考えないと定義されています。

バイオマスは二酸化炭素削減(地球温暖化対策)、循環型社会構築などの取り組みを通じて脚光を浴び、旧来の薪や炭などの利用に加え、バイオマスエタノール、バイオディーゼルなど各種のバイオマス燃料の利用も拡大している。しかしその一方でバイオマス生産のための森林破壊や食料との競合などの問題も指摘されており、現在もより弊害の少ない技術の開発が進められている。又、技術水準に応じた規制も検討が進んでいる。

 

■バイオマス発電の現状

バイオマス発電は、加工した固体燃料または発酵させて回収したガスやエタノールを燃やすことで電気エネルギーに変換します。これがグリーン電力となります。CO2を排出せず、環境に負荷を与えないというメリットがある自然エネルギーです。

火力や原子力による発電と比べ発電コストが高く、なかなか普及が進まない状況ですが、RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)施行に伴い、各電力会社では火力発電所での石炭と間伐材等との混焼が進められており、実証試験の段階から本格実施へと移行している段階です。

 

■バイオマスの将来

そもそも高度成長期以前の日本では、落葉や糞尿を肥料として利用していたほか、里山から得られる薪炭をエネルギーとして活用してきたわけで、日本人との親和性は極めて高い。

高度成長期は石油起源の資材、燃料などへの置換により、顧みられることが少なくなったが、近年、廃棄物処理コストの高騰などから高度利用を模索する地方自治体や環境保護団体などが増えてきています。

バイオマスの研究は、近年急速に進んできており、最近、稲わらからバイオエタノールが70円/ℓで作れる技術が確立されたとのニュースがありました。米を作って食べて、藁で燃料を作れる。それが農家の副収入になるわけです。

勤めてサラリーをもらう職業には夢を持ちづらいが、ハイテクを纏った農業には夢があります。21世紀は改めて、農業が持続可能な職業となると考えます。

 

 

次回は創エネの最終回として、「藻から燃料」の取り組みについて紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<29> 創エネ その5

 

■藻から燃料

原油価格の高騰や地球温暖化が進む中、石油に代わる再生可能エネルギーとして小さな藻類(そうるい)が脚光を浴びています。微小藻類には、石油とほぼ同じ成分の油を作り貯蔵するものがある。藻が作る高品質の油を、航空機のジェット燃料などに活用しようと研究開発が進んでいます。

藻の大量培養で安価に生産できれば、石油資源に乏しい日本が「産油国」に仲間入りできます。バイオ燃料の原料となるトウモロコシなどと違い、藻類は食糧需要と競合しない上、面積当たりの生産量が陸上植物に比べ桁違いに多い。国土の狭い日本にとって利点が多く、実用化を視野に入れた動きが加速しています。

 

■つくば大の研究開発の現状

出典:生産能力10倍 「石油」つくる藻類、日本で有望株発見[10/12/15

http://toki.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1292370197/

 筑波大の渡辺教授らの研究チームが、仙台市の下水処理施設に実験拠点を開設し、生活排水に含まれる栄養分で藻を育て、油を抽出・精製する研究を始めています。施設は東日本大震災で被災しており、地域の復興につなげる狙いもあります。

 研究には光合成を行う緑藻のボトリオコッカスと、渡辺教授らが沖縄県で発見したコンブの仲間のオーランチオキトリウムという2種類の藻が使われている。

 ボトリオコッカスは下水に含まれる窒素などの無機物を肥料にして育てる。細胞外に油を分泌する珍しいタイプの藻で、抽出が容易。

一方、オーランチオキトリウムは油の生産効率が世界トップクラスとのことで、光合成ではなく、汚泥などに含まれる有機物を与えて培養する。

平成28年度まで実験し、大量生産や効率化の手法を探る。藻から作る燃料の生産コストは現在、1リットル当たり500~1500円程度とガソリンよりもはるかに高いが、渡辺教授は「まず1リットル当たり200~400円程度まで下げたい」「大規模なプラントで大量培養すれば、自動車の燃料用に1リットル50円以下で供給できるようになるだろう」と話されている。

 

■その他の取り組み

 光合成を行うミドリムシから油を作る研究も進んでいます。東大発ベンチャーのユーグレナ(東京)は油の生産性が高いミドリムシを発見、JX日鉱日石エネルギーなどと共同でジェット燃料の開発に取り組んでいる。

 名古屋大学の神田英輝助教らは、藻がため込んだバイオ燃料を従来の半分以下のエネルギーで抽出する技術を開発。藻の乾燥や粉砕の手間を省いて、実用化の課題を1つ乗り越えた。

 藻類から油を作る研究は米国が先行しているが、日本は培養や抽出・精製で高い技術力を持つのが強み。経済産業省も実用化を目指して研究開発を後押ししています。

 

 

次回からは畜エネの取り組みについて紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<30> 畜エネ その1 

 

■畜エネ

畜エネとは、文字通りエネルギーを蓄えることで、電気を蓄える場合は蓄電池となります。

揚水発電は余剰電力を使って水をくみ上げてエネルギーを蓄積するので、発電と呼ばれていますが目的は畜エネ、蓄電です。揚水発電は、電力需要・供給の平準化を担う、ダムを用いた巨大な蓄電池、あるいは蓄電所と言うべきものです。発電する電気量に対し、水を汲み上げるために電気が消費され、30%程度のロスはあるが、大量の電力を貯蔵できる設備として優れており、今も蓄電の主役である。

ただ、近年、停電時のバックアップの用途や、再生可能エネルギー発電の電力の平準化を目的として、蓄電装置の技術開発が急速に進んできており、ここでは揚水発電以外の蓄電装置について紹介します。初回はリチウムイオン電池です。

 

■リチウムイオン電池の基礎開発の歴史(以下、ウィキペディアより)

1980年代、携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器の開発により、高容量で小型軽量な二次電池(充電可能な電池)のニーズが高まり、従来のニッケル水素電池などでは限界があり新型二次電池が切望されていた。

1960年代、既にリチウムを電池に適用するアイデアはあり、1980年代には金属リチウムを負極活物質に用いた金属リチウム二次電池が製品化されたが、金属リチウムの化学活性がきわめて高いため、可逆性や反応性に問題があった。

NTTのショルダー型携帯電話などで発火事故が相次ぎ、実用化されたとは言いがたく広く用いられることはなかった。このため金属リチウムを代替する材料の探索が進められることとなる。

 

■リチウムイオン電池(LIB)の実用化の歴史

吉野彰らは、ノーベル化学賞を受賞した白川英樹博士が発見した電気を通すプラスチックポリアセチレンに注目し、1981年に有機溶媒を用いた二次電池の負極に適していることを見いだした。また、正極には1980年にジョン・グッドイナフらが発見したコバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物を用いて、リチウムイオン二次電池の原型が創出されたが、ポリアセチレンは電極材料として不安定という問題があった。

以来、安全性を確保するための機能性セパレータなどの本質的な電池の構成要素に関する技術の確立がなされた。さらに安全素子技術、保護回路・充放電技術、電極構造・電池構造等の技術が開発され、安全でかつ、電圧が金属リチウム二次電池に近い電池の実用化に成功、現在のLIBの構成がほぼ完成、1991年に吉野彰の勤務する旭化成とソニーなどにより実用化された。次いで1994年に、三洋電機から黒鉛炭素質を負極材料とするLIBが実用化され、これが現在の電子機器の蓄電池、2次電池の主流である。

 

■自動車用リチウムイオンポリマー電池

一方、1998年頃より、電解質にゲル状のポリマーを使うリチウムイオンポリマー電池が市場に登場する。リチウムイオンポリマー電池は、外装に、従来の鉄やアルミニウムの缶ではなく、レトルト食品に使用されるアルミラミネートフィルムが使われていることが特徴で、三洋電機を始めとする各社から発表発売されている。万が一の事故時の反応が穏やかであるため、最近はハイブリッド自動車用バッテリーとしても利用されている。自動車用のリチウムイオン電池は三菱自動車のi-MiEVや、日産のリーフに搭載され、量産を開始している。

 

かって、LIBは日本メーカーが9割以上のシェアを占めた時代もあったが2013年時点ではサムスンがトップに立っている。ただ、需要が電子機器から自動車に移ってきており、現在の投資状況からすると、将来的には日本メーカーが逆転する勢いにある。

 

 

次回は、NAS電池について、紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<31> 畜エネ その2

 

■NAS電池とは(以下、日本ガイシの公開資料より)

NAS電池は、負極(マイナス極)にナトリウム(Na)、正極(プラス極)に硫黄(S)、両電極を隔てる電解質にファインセラミックスを用いて、硫黄とナトリウムイオンの化学反応で充放電を繰り返す蓄電池(二次電池)。

NAS電池は日本ガイシと東京電力によって共同開発された。「NAS電池」という名称は東京電力の商標である。NAS電池は日本ガイシが世界で初めて実用化したメガワット級の電力貯蔵システムで、大容量、高エネルギー密度、長寿命を特長とし、鉛蓄電池の約3分の1のコンパクトサイズで、長期にわたって安定した電力供給が可能。

NAS電池は、主に、大型の蓄電池として施設などに据え付けて利用される。自動車などに利用される鉛蓄電池と比べて軽量であり、数倍の電力量を蓄えることできる。非常用電源としての用途や、揚水発電のように夜間に充電、昼間の電力需要ピーク時に電力供給側に回る、といった利用方法や、再生可能エネルギーを使用する発電システムと組み合わせて、天候などに応じて充放電を行い、施設全体の発電量を安定化させる、といった用途などに利用できる。長寿命で、原料が入手しやすいという点も利点となっている。

 

NAS電池の事故事例と対応状況

 NAS電池は2002年に出荷を開始、2011年現在で、世界6カ国、174カ所に305千キロワットが設置されている。NAS電池の火災事故は20102月に特殊なタイプのNAS電池で発生、更に、20119月に三菱マテリアル(株)筑波製作所(茨城県常総市)に設置されているNAS電池システムで発生した。

日本ガイシは、事故を公表して、原因究明の結果、

1.製造不良の単電池が破壊して高温の溶融物が流出。

2.その溶融物がモジュール電池内のブロック間にある砂層を越えて流出し、隣接するブロックにある単電池との間で短絡(ショート)が発生。

3.短絡した単電池間にヒューズが設置されていなかったため、短絡電流が継続的に流れて発熱したことで多数の単電池が破壊して火災が発生し、当該モジュール電池全体に延焼拡大した。

 対策としては、

1.短絡電流による火災の発生を防止するため、モジュール電池内の単電池間にヒューズを追加する。

2.流出した溶融物による短絡電流の発生を防止するため、モジュール電池内のブロック間を隔てる短絡防止板を設置する。

3.他のモジュール電池への延焼拡大を防止するため、上下のモジュール電池の間に延焼防止板を設置する。

 

NAS電池は、このような事故と対策を経てきているが、電力負荷平準によるピークカット、再生可能エネルギーの安定化に役立ち、節電対策やエネルギーコスト削減、環境負荷低減に貢献できる、今後の電気エネルギーの安定供給のカギを握る重要な装置となります。他に有為な技術が出てくるまで、粘り強く大事に育てて行かなければならない技術と考えます。

 

 

次回は、畜エネの最終回として、マグネシム電池を取り上げます。

新環境経営~環境経営を超えて~<32> 畜エネ その3

 

■マグネシウム空気電池

 マグネシウム(Mg)空気電池は1次電池であり、充電タイプの2次電池ではない。Mg電極の間に水や汚水を流すことで発電できる技術である。

一次電池のため、創エネの範疇であるが、災害時などに、汚水や水を流し込むことで発電でき、必要な時に電気を取り出すことが出来るオンデマンド(需要対応)の性格を有している。電池を蓄えておくことが出きる蓄電池ではないが、何時でも電気を創れるので、「蓄電」と同等の機能がある。

Mg空気電池(燃料電池とも言う)は金属空気電池の一種で、負極にMgを、空気中の酸素を正極とする1次電池。Mgが水酸化物イオンと結合し電子を放出する現象を利用しており、使い終わると負極のMgは水酸化Mgとなる。

使用済みのMg空気電池を再利用するには、水酸化Mgを還元してMgに戻す必要があるが、この還元を砂漠の太陽エネルギーを使って熱還元してリサイクルしようという構想がある。

使い終わった水酸化Mgを回収して砂漠でMg電極として使えるよう精錬しようというもの。砂漠の豊富な太陽光を、凹面の反射鏡で集光して高温を得る太陽炉として活用するのである。還元されたMgを日本に運び、再び1次電池として使用する。

1200℃程度の温度が得られれば国内でも熱還元は可能。実際に直径1.5m程度の太陽炉を使って使用済みの水酸化Mgを金属Mg箔として回収する実験を行っている。国内の工場やゴミ焼却場の排熱、バイオマス燃料などでも熱還元できる可能性がある。

 

■Mg充電電池

Mg充電電池の研究開発が進められており、京都大の内本喜晴教授から、安価なマグネシウムを用いて、リチウムイオン充電池の10分の1以下の材料費で、同等以上の電気を蓄えられる充電池の開発に成功したとの発表があった。

既存のリチウムイオン充電池の多くは、高価なレアメタル(希少金属)のリチウムやコバルトを電極に用いるため高価。リチウムの代わりにマグネシウムを使う試みは以前からあるが、充電時に電極の表面に被膜ができ、うまくいかなかった。

内本教授らは、負極に純粋なマグネシウム、正極にマグネシウムと鉄などの化合物を採用。電極間を満たす電解液にもマグネシウムを含む溶液を使うことで、電極に被膜をできなくすることに成功した。コバルトも不要という。

電池の電気を蓄える容量は、同じ大きさのリチウムイオン充電池を上回ったが、取り出せる電圧が低いのが難点で改良が必要。内本教授はリチウム電池に代わる安価な充電池としての実用化を目指されている。

 

 

次回からは、これまでに紹介してきた基本的な環境経営の話を踏まえ、最新の動きを基に、話題を提供していく。

新環境経営~環境経営を超えて~<33> スマートハウス

 

今回からスマートXXXXを取り上げます。初回はスマートハウスです。

■スマートXXXX

 スマートは賢いを意味します。賢いはクレバーと習いましたが、クレバーはずる賢いの意味があるとのことで、最近はsmart(スマート)が、賢い、カッコイイの意味で使われています。

最近はやりのスマートXXXXは、これまでは人間系で管理していたものを、ICTを活用して、設備やインフラをスマートに管理する意味で使われることが多くなりました。

 現在、スマートハウス、スマートグリッド、スマートコミニュニティー等々、スマートXXXXがはやりですが、スマートXXXXの言い方が社会に根付き、浸透して、普通に使われるようになるのは10年後でしょうか?

 

■スマートハウス

 スマートハウスとは、「太陽光発電」などがつくる電力や、電力会社からの電力、蓄電池に貯めた電力など、家の電気エネルギーを“賢く(スマート)”使う住宅のことを言います。 賢く使うためにホーム・エネルギー・マネジメント・システム(HEMS)を利用するのが特徴です。

HEMSで電気の使用状態を見えるか化して、人間系で制御して省エネを進めることから始まり、遠隔操作で家電機器を入り切りしたり、予め決めておいた順番で、優先度の低い機器から切り離す制御を行い電力使用のピークを抑えるなど、白物家電などがネットに繋がることで、多くのことが実現できるようになります。

HEMSで電力使用のピークを抑えることは、電気の基本契約料金の削減になり、地域レベルでの発電設備容量の適正化や過剰設備投資を抑えることにもつながります。

又、最近、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)を謳う広告がありますが、それは1年間の消費エネルギーに対して、住宅で創ったエネルギーの方が多いまたは同等の住宅です。電気エネルギーの自給自足です。

現在、住宅で創るエネルギーは太陽光発電が中心ですが、今後は、燃料電池や他の創エネ手段も組み合わさる方向です。ZEHの先には、電気エネルギーを電力会社に依存しないで、電力会社と切り離された形態(オフ・グリッド)があり、先進的な意識の家庭で取り組みが始まっています。

オフ・グリッドについては、別途、スマートグリッドのところで紹介する予定です。

 

■HEMS

日本では2000年頃に、全ての家電をネットに繋いで、指定された時間に自動的に入り切りしたり外出先から家電製品を制御したりと、便利な生活を実現すべく家電の通信規格の標準化が行われました。それが、エコネットです。

しかし、決定的な引き金がなく、家電のネットへの接続は停滞していましたが、約10年を経て、地球温暖化の危機的な状況や、3.11を契機とした徹底した省エネの必要性から、HEMSが生まれました。HEMSの開発に当たり、家電の通信規格はエコネットからエコネットライトに生まれ変わり、現在HEMSは国の補助もあり、普及が進んでいます。

 

 

次回は、スマートグリッドについて紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<34> スマートグリッド

 

smart grid(以下スマートグリッド)

元々は、米国の脆弱な送配電網を、コンピュータ技術によって低コストで安全に運用する手法を模索する過程で生まれた構想。通信・制御機能を付加した電力網で、スマートメーター等の通信・制御機能を活用して停電防止や送電調整のほか多様な電力契約の実現や人件費削減等を可能にした電力網である。

当初の概念では、「スマート」とは発電設備から末端の電力機器までを、デジタル・コンピュータ内蔵の高機能な電力制御装置同士をネットワークで結び合わせ、従来型の中央制御では達成できない自律分散的な制御方式を取り入れることで、電力網内での需給バランスの最適化調整と事故や過負荷などに対する抗堪性を高め、それらに要するコストを最小に抑えることを目的としている。

電力を使用するそれぞれのポイントをグリッドに見立てて、そのグリッドへの電力受給を、ICTで無駄なく制御しようというものである。2013年時点では実用化に向け、小規模な電力網で実証実験が行われている。

 

■スマートグリッドビジネスの可能性と日本の取り組み

電力供給者と需要者をデジタル通信線によって結ぶアイデアに、家庭電化製品のネットワーク化推進に失敗していたメーカーやデジタル通信用のデバイス・メーカー、さらにはITネットワークを主導している企業までが、家庭へデジタル回線を引き込む良い機会と捉えて大きな関心を寄せるようになった。

米国が新たな電力網に"Smart Grid"と名づけて新たな産業分野を作ると、同様の動きが他の先進各国でも生じた。欧州は米国同様の構想で、域内の電力網の再構築・向上を検討している。欧米や日本で電気自動車、太陽光発電などが推進され始めたのも、米国が官民を挙げて次世代の送配電網の必要性を論じるきっかけになった。

日本は自家発電や蓄電を推進する住宅・自動車・家電、石油、ガス業界が積極的な一方、現行の電力網で電力供給が安定して運営されていることもあり、電力業界では積極的な動きは少ないが、2011年に政府が5年間でスマートメーター4000万台の導入計画を発表している。

電力の送電網/配電網とその周辺の将来技術の予想や電力需要の量的・質的予想、技術開発と規格統一といった多くの課題があるが、電力網全体に新技術を盛り込んだデジタル式の通信および電力制御を行う装置を配置するだけでも、巨額投資が見込めるため、電力機器メーカーや設備工事業者だけでなく、自動車メーカーやデジタル通信装置に関わる多くの関連業界が新市場と捉えている。

特にこうした分野に技術的優位性を持つ日本や米国などでは官民一体で推進しており、周辺産業界とも協力してまずは国際的な標準化の確立を目指している。

 

■デジタルグリッド

スマートグリッドのコンセプトが定着してきたところに、最近、デジタルグリッドなる言葉が使われだした。デジタルグリッドは、インターネットに着想を得た、電力/情報/金融を統合させた新しい技術。今後複雑化する需給情報の管理や発電量の安定性など、新たな課題が予測されており、こうした課題を解決するために、電力を識別し、必要に応じて電力を融通することを可能にする。

蓄電能力を活用してピークをずらす(シフトする)ことで、契約電力を下げられ電力料金の節約になる。又、災害や事故などで送電がストップしても、発電や蓄電した電力をコミュニティ内(セル)で電気を融通しあえる。更に、ネットワーク上の情報から、電力の生産者を識別できる「カラーリング技術」により希望する電力の選択が容易。など、電力需給と経済の統合を狙っている。

 

 

次回は、スマートタウンについて紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<35> スマートタウン

 

■スマートタウン

積水ハウスは、「社会イノベーション/Smart City Week 2014」の展示会において、日本初のスマートタウンと称する分譲地域「スマートコモンシティ明石台」(宮城県富谷町)の街づくりを紹介した。

ゼロ・ネット・エネルギー(発電量と消費電力の差し引きゼロ)を狙い、すべての住宅が太陽光発電システムや省エネ機能、HEMS(ホームエネルギー管理システム)を備える。加えて、全体の3分の2の住宅が燃料電池を備え、約25%の住宅が蓄電池を備えている。

蓄電池を導入している住宅は、分譲時にあらかじめ決まっており、隣接する土地の間に広い道路があったり、隣に空き地がある住宅が対象。災害時などに周辺の住民が集まりやすく、災害時に停電しても灯りが途絶えないよう考慮されている。

又、災害時は地域コミュニティの自主的な活動によって住民の安心感が左右されるので、自治会の活動に対する支援も配慮されている。

スマートコモンシティ明石台の計画は、20113月の東日本大震災以前に構想されていたが、震災を受けて分譲の時期を前倒ししたとのこと。

このように、街全体で省エネ、創エネ、畜エネを行い、ICTで賢く制御する取り組みが、全国で始まっている。

 

■スマートタウンの意義

太陽光発電と燃料電池のダブル発電や、太陽光発電+蓄電池で、エネルギー自給自足の自立型住宅を中心とした街ができると、エネルギーを専ら消費し、電気は電力会社から買ってくるという、これまでの経済の仕組みが根本的に変わることになる。

現在は電力会社が所有する送電網を前提に、電力会社から電気を買ったり、余剰電力を売ったりする仕組みを作ってきたが、エネルギーの自給自足が実現すると、電力会社と電気の売買をする必要がなくなってくるわけで、スマートグリッド(前回紹介)から切り離されて独立したグリッド(電力の需給点)となる。これをオフグリッドという。

昨今、メガソーラーで電気を創っても、「電力会社が系統への接続を拒否」している問題も、今後、家庭の太陽光発電の普及率が高まってくると、住宅でも日常的にこの問題が起きてくることになるが、自給自足、オフグリッド化を進めることが課題解決の一助となる。

今のところ、蓄電池が高価なため、全ての家がエネルギーの自給自足というわけにはいかないが、電池の技術開発と普及によって蓄電池のコストは確実に安くなっていく。又、電気自動車(EV)の使用済み電池の流通も2020年以降始まるわけで、それらが相俟って、多くの家で、蓄電池の活用が始まり、エネルギーの自給自足が可能となる。オフグリッドが可能になる。

さらに、EVの電池は「動く蓄電池」の役割も果たせるので、「動かぬ家の蓄電池」と「動く車の蓄電池」間での電気の融通が、当たり前になってくる。

 

■スマートコミュニティ(Smart Community

経済産業省は20102月に、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を中心として「スマートコミュニティ・アライアンス(JSCA)」を設立した。

スマートコミュニティは「スマートシティ」とほぼ同義であるが、スマートコミュニティは特定範囲の都市(city)ではなく、さまざまな規模のエリアを対象とした呼称として用いられている。

個々の住宅を対象としてエネルギーの需給を最適化するスマートハウスを「点」的なものとすれば、スマートコミュニティは一定のエリアを対象として「面」的にスマート化するものと言える。

 

 

次回は、スマートメーターについて紹介する。

新環境経営~環境経営を超えて~<36>  スマートメーター

 

■スマートメーター (Smart Meter)

需要家と電力会社との間での双方向通信を可能にし、エネルギーマネジメントのための機能を備えた「次世代電力量計(電気メーター)」。 従来のアナログ式誘導型電力量計と異なり、電力をデジタルで計測し、メーター内に通信機能を持たせている。

需要家の消費電力や太陽光発電などによる発電量がリアルタイムに把握でき、そのデータを、送配電網を通じて、電力会社に送信する。

また、スマートメーターを住宅やオフィス内のHEMSBEMSと接続し、家電・設備機器と通信し、そのON/OFFや送配電量の調整が可能となる。

これにより、電力会社管内での電力逼迫時に使用制限をかけるなど、コミュニティレベルでのエネルギー需給制御が可能となる。これをデマンドレスポンスという。

 

■スマ-トメーターの機能

<自動検針>

従来、月に1度検針員が直接需要場所に行き、電力量計の指示数を読み取ることで、毎月の電気料金を確定していた。スマートメーターでは、通信回線を利用して電力会社が電力使用量を把握でき、人力による検針作業が不要になるため、人件費の削減・電力使用量の見える化などが期待されている。

<リモート接続・切断>

従来の業務体系では消費者と供給契約を締結したあとに作業員が現地へ赴き、配線の接続を行っていた。スマートメーターでは、予め配線の接続を済ませておいて、通信機能を使って管理箇所からのリモート接続・切断が可能になり、人件費の削減が期待される。

<電力消費量の見える化>

従来の電力量計では1か月に1度、電力使用量の通知を受けるだけで、リアルタイムに消費量を把握することが困難であった。スマートメーターでは、家庭内ネットワークを介してリアルタイムに電力使用量を確認することができる。

<家電との連携>

家庭内ネットワークを介し、スマートメーターと家電が通信し、供給状況の最適化を図ることが期待されている。特にデマンドレスポンス技術との連携によって、需要家側が電力の使用を抑制するようスマートメーターを介して家電を制御する技術の研究が進んでいる。この技術により、ピークカットによる負荷平準化ができ、エネルギー使用の効率化が可能になる。

<電力消費量データを利用した各種サービス>

電気製品は、機器ごとに特有の消費電力量に傾向を示すので、その消費電力を詳しく分析すれば、家庭やオフィスにおいてどのように電気製品を使用したのかを推定することができる。これらのデータを蓄積することで、顧客に最適な消費パターンを提供することが可能になる。

 

■スマートメーターを巡る動き

国内では、電力各社がスマートメーターの普及に向け、仕様を検討、機器の調達元を選定している。 20135月には、東京電力がスマートメーターの通信システムのパートナーとして東芝を、運用管理システムのパートナーとしてNTTデータを選定したと発表した。 また、関西電力は20137月にスマートメーターの調達先募集を開始し、2014年度上期に調達先を決定すると発表している。

 

■スマートメーターの問題、課題

電力使用量データは個人情報を多く含んでおり、家庭内ネットワークを介し家電などと通信し供給状況を把握することが可能となる為にプライバシーの侵害が大きな問題とされている。更に、人体に悪影響を及ぼす低周波の電磁波を発する為に欧米では殺人メーター(MURDER METER 又は、SMART MURDER)と呼ばれ、電力会社による強制的な設置に反対する動きがある。また、スマートメーターの導入が進むと検針業務の必要がなくなり、雇用問題が発生すると考えられている。 

もう一つの問題点は、メーターを通る電力のみしか計量されないので、違法に回路を迂回し、盗電をされている場合は計量されない。現地での検診業務が行われなくなった事により、電力盗難のセキュリティーの面で問題が発生しているが、将来的には電力会社の基本インフラとして機能させなければならず、解決すべき課題である。

 

 

次回は、畜エネのところで掲載が漏れてしまった、畜エネその3:マグネシウム電池について紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<37> 畜エネ その3

■□マグネシウム空気電池■□

 マグネシウム(Mg)空気電池は1次電池であり、充電タイプの2次電池では

ない。Mg電極の間に水や汚水を流すことで発電できる技術である。

 1次電池のため、創エネの範疇であるが、災害時などに、汚水や水を流し込む

ことで発電でき、必要な時に電気を取り出すことが出来るオンデマンド(需要対

応)の性格を有している。電池を蓄えておくことが出きる蓄電池ではないが、何

時でも電気を創れるので、「蓄電」と同等の機能がある。

 Mg空気電池(燃料電池とも言う)は金属空気電池の一種で、負極にMgを、

空気中の酸素を正極とする1次電池である。Mgが水酸化物イオンと結合し電子

を放出する現象を利用しており、使い終わると負極のMgは水酸化Mgとなる。

 使用済みのMg空気電池を再利用するには、水酸化Mgを還元してMgに戻す

必要があるが、この還元を砂漠の太陽エネルギーを使って熱還元してリサイクル

しようという構想がある。

 使い終わった水酸化Mgを回収して砂漠でMg電極として使えるよう精錬しよ

うというものである。砂漠の豊富な太陽光を、凹面の反射鏡で集光して高温を得

る太陽炉として活用するのである。還元されたMgを日本に運び、再び1次電池

として使用する。

 1200℃程度の温度が得られれば国内でも熱還元は可能である。実際に直径1.5m

程度の太陽炉を使って使用済みの水酸化Mgを金属Mg箔として回収する実験を

行っている。国内の工場やゴミ焼却場の排熱、バイオマス燃料などでも熱還元で

きる可能性がある。

 

■□Mg充電電池■□

 Mg充電電池の研究開発が進められており、京都大の内本喜晴教授から、安価

なMgを用いて、リチウムイオン充電池の10分の1以下の材料費で、同等以上

の電気を蓄えられる充電池の開発に成功したとの発表があった。

 既存のリチウムイオン充電池の多くは、高価なレアメタル(希少金属)のリチ

ウムやコバルトを電極に用いるため高価である。リチウムの代わりにMgを使う

試みは以前からあるが、充電時に電極の表面に被膜ができ、うまくいかなかった。

 内本教授らは、負極に純粋なMg、正極にMgと鉄などの化合物を採用。電極

間を満たす電解液にもMgを含む溶液を使うことで、電極に被膜をできなくする

ことに成功した。コバルトも不要という。

 電池の電気を蓄える容量は、同じ大きさのリチウムイオン充電池を上回ったが

、取り出せる電圧が低いのが難点で改良が必要である。内本教授はリチウム電池

に代わる安価な充電池としての実用化を目指されている。

 

 次回からは、これまでに紹介してきた基本的な環境経営の話を踏まえ、最新の

 

動きを基に、話題を提供していく。

新環境経営~環境経営を超えて~<38> 改めて新環境経営

 

■「新環境経営」(野村総研の定義。以下抜粋。)

「環境経営」は、“環境”をマネジメントするところから始まった。環境マネジメントシステムや環境報告書、環境会計などの手段は多くの企業に普及し、環境経営は当たり前の時代になっているが、今後の法規制の強化に伴って、“環境”にかかわる経営リスク(不確実性)はさらに高まる。このため、企業価値を高めることを目的として、“環境”も考慮して全社横断的に取り組むことが、持続可能な企業経営に必要不可欠となる。

“環境”のための環境経営というよりも、むしろ持続可能な企業経営のために“環境”を考えるという発想が必要。

このような発想に基づく経営を「新環境経営」と呼び、従来の環境経営と区別する。 http://www.nri.com/jp/opinion/chitekishisan/2005/pdf/cs20050803.pdf

 

■「新環境経営」は、持続可能な企業経営

 上記の論文の中にも、企業の「企業の社会的責任(CSR)」が取り上げられている。日本でもヨーロッパ発のCSRに取り組むことは当たり前のこととなっているが、ヨーロッパでは「社会的共通資本」の考え方が既に定着しており、基本的人権を保障する社会インフラの整備で先行している。その上で、「社会的共通資本」を、企業活動を通じて維持発展させていく責任があるという意味でCSRが浸透している。

 一方、日本の場合は、「社会的共通資本」に対する国民的コンセンサスが不十分で、国民の基本的人権を守るためのインフラ整備が遅れている。日本では、まずは国民の基本的人権を守るための過剰労働の禁止や、健全な家庭生活を維持しながら経済を回す社会システムの構築が急務である。

 

持続可能な企業経営を実現させるためには、そこで働く社員こそが胆であり、社員の基本的人権の尊重なくして企業の存続はありえない。然るに、日本では、未だに長時間労働でコストを削減しようとする企業が後を絶たない。

家庭生活と労働をバランスさせて、かつ、万が一のセフティーネットで落ちこぼれる不安を取り除くことで、安心して豊かな気持ちで仕事に打ち込める。その環境を整備してこそ、持続可能な企業経営となる。日本でCSRや、CSV(共通価値の創造)が話題になっても、そのベースとなる「社会的共通資本」の整備が遅れているため、CSRや、CSVが表面的な議論になっていると感じている。

日本は、国や官僚のリーダーシップに頼れない分、企業が「社会的共通資本」に関与を深め、安心して豊かな気持ちで仕事に打ち込める環境を整備する必要があると考える。

 

■グローバル経済下での「新環境経営」

国連のグローバルコンパクト(UNGC):http://ungcjn.org/gc/principles/index.html

企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み。

UNGCの10項目の原則のうち、人権の尊重がトップで2項目、続いて労働についての原則が4項目、環境についての原則が3項目となっている。

高度成長期の日本が行ってきた集中豪雨的な輸出は、それが高残業による低賃金労働で成り立っているとすれば、UNGCの枠組みに照らすと、フェアでない労働環境による不当な競争を仕掛けて相手国を壊すことになり、持続可能な経営とは言えない。

日本が独自の労働慣行により、不公平な競争を続けることは、グローバル経済下での潜在的なリスクとなる。エンタープライズ・リスク・マメジメント(ERM)の観点で乗り越えていかなければならない壁である。

 

 

以上を受けて、今後、「製品開発/調達/生産/物流」、「広報/営業」、「人材開発」、「ERMリスクマネジメント」、「エネルギー・省エネ」、「ワークライフバランス」等の観点から、「新環境経営=持続可能な企業経営」について話題を提供する。

新環境経営~環境経営を超えて~<39> 「ワーク・ライフ・バランス」 

 

■新環境経営の視点

先月紹介した、国連のグローバルコンパクト(UNGC)では、人権の尊重がトップで2項目、続いて労働についての原則が4項目、環境についての原則が3項目となっている。

環境経営を行い、「環境」問題にひたむきに取り組んできた結果、社会的信頼を高めることが出来た企業は多い。その一方で、それを担う従業員の労働意欲、満足度はどうでしょうか?高残業、遠距離通勤で企業価値向上に取り組んでも、従業員が疲弊した状態では、労働意欲は高まらず、働き手の能力を引き出すことが出来ず、新しい発想は生まれず、組織としての力が発揮できない。日本はUNGCが求める人権尊重の経営をしているとは言えない状況にある。

 

■高残業、遠距離通勤の弊害

日本は労使で残業を是認する36協定を結び、人を増やさないで残業で対応して人件費を抑えてきた。これは鉱物やエネルギーの資源も少ない日本が、労使で協調して戦後復興に取り組む知恵として、社会規範の様になっている。

一方、西ドイツでは、1960年代に敗戦の復興を終え、社会的共通資本を整備に取り組み、基本的人権が尊重される福祉社会、仕事よりも家庭が優先するゆとりがある社会を創ってきている(暉峻淑子(てるおかいつこ)さんの「豊かさとは何か」)。

25年以上前に書かれた本ですが、改めて読み返してショックを受けています。同じ敗戦国でありながら、日本は未だに家庭を犠牲にした働き方からの脱却が進まない、時短が進んでいない、36協定も健在。基本的人権が疎かにされている。

ヨーロッパの良いところを取り入れ、エコノミックアニマルを卒業する時期が来ています。

 

■ワーク・ライフ・バランス(WLB)

近年日本でも、WLBが叫ばれているが、WLBは仕事と家庭、社会活動を両立させてバランスの良い生活を目指すもの。そもそも、これらを並立させてこそ、人間として豊かな気持ちで生活を送れるはずなのに、戦後の日本は廃墟からの復興ということで、経済活動を最優先して人生のバランスを疎かにして高度成長に邁進してきた現実がある。

その結果、世界からは奇跡と言われるほどの高度成長を短期間で成し遂げ、一躍世界第2位の経済大国に上り詰めたが、一方ではその代償としての公害問題があり、重金属等による中毒や大気汚染による喘息など、著しい健康被害を発生させ、悲惨な結果を残した。

公害への取り組みは一定の成果を上げ徐々に改善に向かっているが、GDP世界第2位の大国になっても成長、競争に明け暮れ、それを高残業、遠距離通勤で賄ってきた。バブル崩壊から約20年経った今も、基本的な社会構造は変わっていない様に感じられる。

経済優先の結果として、仕事最優先で家庭は奥さんに任せっぱなし。育児、教育、社会活動に関わらない。社会的な存在としては不完全な働き手を大量に排出してきた。

この様な働き手は、会社の論理に従順で、社会人としての体験を積んでいないため、発想力が退化し、働き手としてのパフォーマンスも十分とは言えない。

 

■健康経営

最近、健康経営なる言葉が出てきた。これは社員が健康でなければ、企業としての競争力が保てないとのことで、社員の健康を維持するための会社の先進的な取組みとしてメディアで紹介されている。

しかし戦後70年の今、こんな当たり前のことがメディアで取り扱われること事態に違和感がある。又、敢えて先進事例として取り上げられる日本社会の労働環境に異常性を感じる。

企業にとって、多くの時間と費用を投じて育てた社員が、疲れはてて、勤労意欲を無くして、「うつ」になり、あげくの果てに離職。それは知的資産を失うことになり、大きな損失となる。

その意味でも、高度成長を成し遂げた今は、働く環境を整えて、社員の定着率を高めることが持続可能経営にとって、必須の取り組みである。

 

 

次回も、「製品開発/調達/生産/物流」、「広報/営業」、「人材開発」、「ERMリスクマネジメント」、「エネルギー・省エネ」、「ワークライフバランス」等の観点から、「新環境経営=持続可能な企業経営」について話題を提供する。

新環境経営~環境経営を超えて~<40>  「感性工学」 「感性価値」 

 

■「感性工学」とは

持続可能経営を考える上で押さえておかなければならない学術分野がある。それは「感性工学」。

日本学術会議の専門委員会が平成15年から17年にかけて活動し、平成17830日に「現代社会における感性工学の役割」として報告書がまとめられている。http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1033-5.pdf

ポスト工業化社会の新しい目標.として、「 物や金」という価値に代わる、新しい商品開発や、新しいシステムの構築には「感性工学」の活用が必要。

――以下要旨

「現代社会の問題点」

・物質中心の科学技術がもたらしたものには、高効率生産などの優れた側面と、人口爆発、環境汚染、資源枯渇、人心荒廃などの負の側面とがある。

・社会は、世界的な競争時代に突入しており、従来の物質科学技術のさらなる発展によって、この競争社会を乗り切ろうとする動きがある。しかし物質科学技術の発展のみでは、新たに出現する解決の困難な問題に適切に対応することはできない。

・大量生産大量消費の生産流通システムは、拝金主義、物質主義の弊害を増大させ、人々の精神的荒廃を示すような社会的状況を生み出している。また、巨大化した製造企業は、生産実態を把握することができず、形骸化して利益を上げることが難しくなっている。人々の関心は、物の取得の欲求以外に、価値の交換をする欲求に移りつつあるが、これに対する社会的基盤の整備がなされていない。

・従来の工学は、人間の物質取得欲を満たすための科学技術であったが、今後は人間の交換欲求(価値の交換)を満たすような工学が産業・経済・文化を支える科学技術の中心になる。この役割を担うのが「感性工学」である。

・「感性工学」は、自然、人文、社会の各分野で個別に発展してきた科学技術を感性という人間力の観点から再構築することにより、豊かで安全な社会を作るための実践的工学として創始された学問分野である。

――以上要旨

このように、工業化社会からポスト工業化社会への移行は既に始まっている。これに伴って、経営のかじ取りは、上記の現代社会の問題点を押さえて行っていく必要がある。

この取り組みが、おもてなしの文化を持つ日本発である事。戦後、欧米から多くの制度を輸入してきたが、課題先進国日本で、ようやく世界をリードする考え方が生まれた事が嬉しい。

 

■感性工学会設立の趣旨

――以下要旨

・感性工学会設立の趣旨は、「従来の工学に社会学や人文科学などを融合し、人間力である感性を総合的に活用する新しい科学技術として感性工学を創出することにより、工業化社会がもたらした公害や人間疎外などのマイナスの現象を解決し、調和のとれた豊かな社会の形成に資する」

――以上要旨

新たに作られた「感性工学」は、学者がポストを確保するための官学のたくらみの要素もあると思うが、まとめられたメッセージには同意できる。これまでの時代を引っ張ってきた競争を最優先する社会は限界を迎え、これからは共生の社会を目指さねばならない。

日本は停滞の20年の悶々とした時期を経て、心底から目指さなければならない方向が見えてきました。持続可能経営には、共生が先に来なければならない。これを実現するために感性工学がある。

 

■「現代社会における感性工学の役割」

――以下要旨

・人類は、時代の変革期に、あたかも古い時代の殼を脱いで新しい特性の衣を纏うように時代を転換してきた。その度に、多くの人々の人命が失われ、文化遺産が破壊され、文明が荒廃した。しかし、現在の我々にはとてつもなく危険な地雷が頭上に掲げられており、過去におきたようなドラスティックな方法で新しい世界を迎えることは望めない。激しい社会的変革(例えば第三次世界大戦)が起こったときには、人類は壊滅的打撃を受けるに違いない。 どのようにしたら時代の転換を静かに大規模に進めることができるのか、これが現在を生きる我々の設題である。

・転換するものは、我々の意識である。弱肉強食の意識から共生幸福への意識改革である、弱肉強食の意識は、異なった物や異なった考え方を抹殺し排除する意識である。強い者が正義であり、弱者は強者によって搾取され飲み込まれる。その先にあるものは、強者一人だけの世界であったとしても、強者は生き残る運命にあると考える。しかし、もはやこのような論理が通用することはない。共生幸福の意識、他者の存在を受け入れ、他者との価値の交換を行う。共生幸福の意識の中心となる物は、交換の能力である感性である。交換の価値は、「感性価値」である。共生幸福の意識改革は、感性の意識改革である。

――以上要旨

「金」を超える交換の価値として「感性価値」がある。「感性価値」を交換して、経営を継続させてきた日本の老舗企業は多い。過去からの日本の企業が培ってきた「感性価値」交換の知恵に光を当て、持続する経営に取り組む時代が到来した。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%80%81%E8%88%97%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

 

 

 

今回は、「感性工学」の存在、趣旨、役割を紹介した。これからしばらくは、「感性工学」の中身について、紹介していく。

新環境経営~環境経営を超えて~<41> 「感性工学」を構成する要素 その1

 

http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1033-5.pdf

 

前回紹介した、「感性工学」の役割の中では触れなかったが、「感性工学」で人々の物の考え方を変えていこう、しかも技術の立場から変えていこうとの考えがある。政治システムや教育システムから変えていくよりも、技術の力の方が現代社会に適しているという考えである。

技術は毎日人々が使う道具であり、そしてその道具として、対話型の技術を導入する。対話型の技術は、使っているうちに、やりとりの火切さ、他者との価値交換の重変性に気づかせてくれる。

技術の立場から人々の物の考え方を変えていくということは、IT技術の進展や、脳科学の進歩の上に「感性工学」を位置付けることになり、情報技術や脳科学の要素も取り込むことになるが、まずは「感性工学」を構成する要素の「素材戦略」と「感性産業」についてです。

 

■「感性工学」の素材戦略

素材戦略は以下の様にまとめられている。

――以下報告書より要約――

昨今の社会の現状を艦みるに、物質科学技術のみによって我々の欲求を満足させているだけでは、持続性のある生活を送ることは難しい状況となっている。我々がより豊かな人生を送るためには物質的な豊かさに加えて、潤いや安らぎのある精神的豊かさが不可欠である。

 モノは、物質でできているが、モノを単にモノとして作る特代は終わった。モノは、我々の人生に豊かさをもたらすモノでなければならない。つまり環境を汚染したり、人問に精神的なストレスを与えたりするようなモノは作らないようにしなければならない。

――以上報告書より

これまでの工業化社会では、より多くより安くを目指して大量のモノを作りだし、使い終わった後のリサイクルや廃棄処理についてはトライ&エラーで処理してきた。DFE(デザイン・フォー・エンジニアリング)の取り組みで、設計段階で、リサイクルや廃棄処理を考慮して、解体しやすい様に設計する取り組みは行われてきたが、感性工学ではさらに一歩進めて、素材そのものあり方について、述べられている。

モノを作るためには材料が必要となり、モノが有する機能・形態・構造はそこに使用される材料によって規定される。使用する材料が変わればその性質も異なるため、モノが果たす機能や形態は自ずと変化せざるを得ない。

1.どのようにして作られるのか(加工法)、2.どのような役割を果たしているのか(機能)、3.なぜそのような形になっているのか(形態)というように、「加工法・機能・形態」との関わりの中で材料を把握する必要がある。

いいかえれば、モノを形づくる材料には、様々な「生産条件」と共に「機能の充足」や「加工技術との適合性」が要求され、これらを形態と有機的に関係づけていく必要がある。

 

■「感性工学」が創出する感性産業

――以下報告書より要約――

消費型産業から感性産業へ。モノ作りの工業化は、安価で良いものを得たいという人間の物質取得欲求に合致しており、なおかつ戦後の貧しい状態から技け出したいという我々の労働意欲も手伝って、高度に発達した。 しかし工業化も成熟期に入った今となっては、既製品としてのモノ作りの中心基地は中国や東南アジアあるいはインドに移っており、我が国におけるモノ作りは、現在空洞化の時代を迎えており、転換期にあると言える。このような状態は危機的であると同時に新しいビジネスチャンスでもあるわけで、積極的な我々の対応が求められる。

 環境問題、食糧・エネルギー不足あるいは種々の紛争を見る限り、我々は非常にせっば詰まった危機的状態にある。大量生産の工業化技術をさらに進展させることで、現在の危機を乗り越えることができるかと問われれば、否であろう。我々は、大量生産大量消費の時代から、次の時代に進まなければならない。

――以上報告書より

産業の在り方を、現在のような見込大量生産垂れ流し方式(見込み生産、大量生産、ブロダクトアウトの垂れ流しによる生産方式/生産者側から消費者側への一方通行の商品の流れを垂れ流しと表現)から、対話型設計生産方式に変えることにより、我々の意識を物質取得欲求から対話欲求(心情や考え方を交換する欲求)へと転換されることが期待される。

対話型設計生産方式とは、生産される商品は固有の消費者を想定したモノであるので、生産者と消費者とは、直接のやりとりによって、生産者の考え方、消費者の状況や想いを交換してモノ作りをする方法である。

IT未発達の時代には、垂れ流し方式やむなしであったが、高度にITが発達したポスト工業化社会である現在では、多様なニーズに対応して、オン・デマンド(需要応答)で、対話型設計生産方式により、生産者から消費者に直接届けられる。

 

 

今回は、感性工学の要素である、「素材戦略」と「創出される感性産業」について紹介した。次回は、「脳が作りだす感性工学の世界」と「感性工学が拓く情報技術」について紹介する予定である。

新環境経営~環境経営を超えて~<42> 「感性工学」を構成する要素 その2

 

■感性工学の要素である、「脳が作りだす感性工学の世界」と「感性工学が拓く情報技術」、について紹介する。

「感性工学」で人々の物の考え方を変えていこう、しかも技術の立場から変えていこうとの考えがある。政治システムや教育システムから変えていくよりも、技術の力の方が現代社会に適しているという考えである。

技術の立場から人々の物の考え方を変えていくということは、IT技術の進展や、脳科学の進歩の上に「感性工学」を位置付けることになり、情報技術や脳科学の要素も取り込むことになる。

 

■感性工学を構成する要素としての「脳が作りだす感性工学の世界」

―以下引用―

感性は、複雑で多様な環境情報の総体的受容と直感的な運動応答の基盤をなす高次脳機能である。

生体にあっては、他の脳機能と同様、構造的・機能的単位としてのニューロンとそれが織りなす精巧なニューラルネットワークをその基盤とする。

我々はこれまで感性について深く考えることをしてこなかった。その原因の一つは、自然科学至上主義がもたらした知性中心の社会機構構築の推進と、急激な工業立国への道を歩んできた戦後の科学技術の発展にある。

この潮流は我々個人のこころの奥底まで染み渡り、国民の多くがそれを精神的支柱として奮闘してきた歴史がある。しかし知性中心の考え方がもたらした今の社会を顧みたとき、知性とは対極にあり我々が置き去りにしてきた高次脳機能としての感性に行き当たる。

―以上引用―

 

我が国では、脳科学を医学に限らないで研究していこうという方針が立てられ、理学、工学をも巻き込んでの脳科学の展開が進められてきた。

「脳を知る」「脳を創る」「脳を守る」「脳を育む」の観点で、脳科学の研究が進み、脳と同等の機能を持つロボットを実現することや、認知症の予防や治療薬の開発に繋がってきている。

ここで、「脳を知る」を「感性を知る」に置き換えると、「脳=感性を知る」ために様々な測定手法が試みられてきており、測定方法は官能検査、心拍変動、脳波、fMRIなどである。現在までに多くの治験が得られつつあるが、どのように測るかは感性をどうとらえるかであり、まさに感性を知ることである。

「脳=感性を創る」「脳=感性を守る」「脳=感性を育む」についても、研究が進められている。

近年、テレビ等でも脳科学の研究成果が報じられており、脳を知ることは、感性を知る事でもある事は良く理解できる。

感性工学においては、脳の働きを知ることで、人が精神的に求めているものを見定めて、それを実現することで、経営を持続可能なものに繋げていくことになる。

 

■感性工学を構成する要素としての「情報技術」

―以下引用―

ブロードバンド通信網やモバイル通信網は、社会的な情報基盤として完全に定着し、今また、ユビキタス通信網が急速に立ち上がりつつある。いつでも、誰でも、どこからでも、世界中の人と(あるいは世界中の情報機器・情報化されたモノと)、直接・間接に、相互作用することが可能となりつつある。このような背景の下で、社会や文化の壁、個人と個人の価値観の壁を超えて、コミュニケーションを成り立たせるための情報基盤の確立が必須である。

これには感性情報処理技術が必要である。感性情報処理枝術は、今後のコミュニケーションを支えるだけでなく、感性工学の目指す新たな産業形態である対話型産業を創りだす基礎技術としても位置付けられる。

―以上引用―

 

近年の情報通信網の飛躍的な発展により、コミュニケーションにおける距離、時間、情報の量的な側面におけるギャッブが克服されるようになった。コミュニケーションとは、いわゆる信号の伝送ではなく、人間と人間、人間と機械がメッセージを伝え合って相互作用することを意味するものである。(因みに、私は、コミュニケーションを「相互心響」と呼び、人間同士に於いては、心が響き合うところまで求めている。)

 

人工知能技術の進歩にともなって、情報の意味的な側面が注目されるようになった。大量のメッセージを伝達しても、そのメッセージ集合自身に理論的な矛盾がある、あるいは、前提となる知識集合との間に矛盾があれば、そのメッセージは有効ではない。又、受け手の側が前提となる知識集合を十分に持たなければ、メッセージの待つ意味を適切に理解することはできない。

知識表現の技術、知識を体系化する技術、知識処理技術により、情報の送り手と受け手の間で知識の内容や量的な違い、メッセージ理解での意味的な違いを克服することが可能となってきている。

 

又、情報の価値的な側面では、多様な背景を持つ人々が情報通信機器を身近に利用するようになり、コミュニケーションの相手や形態も多様化が進んできた。これにともない、メッセージ伝達効果や情報の価値的な側面が注目されるようになった。

 

大量のメッセージを、高品質でかつ意味的に正確に伝達しても、それが受け手にどのような効果を生じさせるかは、受け手の価値観に依存する。また、送り手と受け手の間で、価値観が大きく異なれば、送り手にとっては価値ある情報も受け手にとっては価値のないものともなりうる。

このようなコミュニケーションギャップの克服のためには、送り手と受け手それぞれの価値観のモデル化技術、相互の価値観にマッチしたメッセージの表出・理解技術などが必要となる。

これが、コミュニケーションの課題において感性工学・感性情報処理が果たすべき中心的な役割といえる。

 

 

次回は、感性工学を構成する要素の「感性教育」「感性社会学」について紹介する。

新環境経営~環境経営を超えて~<43> 「感性工学」を構成する要素 その3

 

■感性工学を構成する要素の「感性教育」

――以下引用

輝かしい21世紀を我々が全うするためには、我々の意識改革が最も重要である。この意識改革とは、自由競争時代の弱肉強食の意識から、共栄共存への意識改革である。

人間の意識は、欲望や欲求によって左右されるが、逆に欲求や欲望は意識によってコントロールできるとも言える。欲望や欲求には、食欲や性欲などの生理的なものから、安心・安全などの生命の保全に関係するもの、さらには他者に対する思いやりや愛などの社会性の強いものなど様々である。

人類がより豊かな共生社会を作るためには、思いやりや他者愛などの豊かな感性に基づいた欲求を育むことが重要である。この意味で、他者を受け入れ、他者との価値の交換を行うことに喜びを見いだすような感性の教育が現在の人類にとって最重要な課題である。

――以上引用

 

本来、「教育」とは感性を育むものであるが、従来、我が国の学校教育においては、知識記憶型の教育が主として行われてきた。これは、高校、大学などの入学試験が知識記憶中心であることを反映させた結果と考えることができる。しかし単に記憶した知識が多ければ、現実の社会の中で力強く生き抜いていく能力があるというわけでもない。

知識を記憶するする能力はそこそこでも、環境の変化を的確に読みとり、臨機応変に困難を切り抜けていくことのできる感性の高い人、すなわち優れた感性を持っている人の方が、豊かな人生を歩んでいける。

豊かな感性は、教え込むことでは育まれない。五感を含む身体機能をフルに活用して、身体感覚を通した経験の積み重ねが必要である。

例えば、ロウソクの炎に手を近づけるとどんな感覚が得られるか、炎に触ると手はどうなるか、炎はどうして燃え続けるのか、炎を消すにはどうしたらよいのかなど、目の前にある炎について感じること、考えることを、経験することである。

炎はどのようにして燃え続けているのかを不思議に思い、個体のロウソクが液体になるのを見、それが見えないロウソクの気体になって酸素と結合して新しい分子になるイメージを持つ、これが感性することであり、物理することである。

 

■感性工学を構成する要素の「感性社会学」

――以下引用――

人間の感性は、その人の属する文化や歴史、風土、技術の発展やその普及の度合い、つまりは広い意味での社会の在り方によって大きく規定されている。実際、経験的事実が示すように、異なった文化圏には異なった感性がある。そして、多くの場合、その差異は同じ文化圏に属する個人間の感性の差異よりも大きいのである。このように感性は個人的なものであると同時に社会的なものでもある。

――以上引用――

 

これまで、知的な情報処理能力(知性)に頼って物事を処理していけば、平和で豊かな社会を形成できると信じてきたが、知性だけでは現状の困難な問題を克服していくことはできないことが解ってきた。人間の能力の中でも感性は特に重要であり、感性という視座から人間を捉え直し、社会を見直すことにより、知性だけでは解決しきれなかった諸々の問題に立ち向かうことができる。

現状の社会は、環境問題や紛争など逼迫した様々な問題を含んでおり、これらの解決なしに次の社会を展開していくことは不可能である。

これらの問題の根元には、エゴイスティックな人間の欲望がある。人間が欲望を満たすために、互いに自由に競争し勝ち抜いていくことは正義であり、それにより世界は豊かになったが、その結果として現在の混迷する社会がある。

欲望がなければ我々は生きていくことはできないが、同時にエゴイスティックな欲望のみでは、我々の社会は破綻に突き進む。

社会は、多数の人間で成り立っているので、環境問題や紛争などの社会的問題の解決は、社会の構成員としての人々の人格にかかっている。人々が研ぎ澄まされた豊かな感性を備えた人格者になれば、環境汚染や紛争を減じることができる。

人と人との関係の形成能力としての感性、人と環境との関係をよりよいものにしてゆく創造的能力としての感性を活用し、コントロールすることによって、豊かな社会を形成することができる。

 

*感性社会学は、心理学や認知科学の成果を積極的に吸収しながら、感性をそれらの基礎概念によって構成される上位の概念として位置づけ、そこから社会性の問題にアプローチする。

 

 

次回は、感性工学の全体を振り返って、今後なすべきことを整理してみます。

新環境経営~環境経営を超えて~<44>  「感性工学」を振り返って

 

■感性工学を振り返って

 4回に亘って感性工学について紹介してきた。ポスト工業化社会では、「物や金」という価値に代わる、新しい商品開発や、新しいシステムの構築には「感性工学」の活用が必要。

ということで「感性工学」を構成する要素である、「素材戦略」「感性産業」「脳が作りだす感性工学の世界」「感性工学が拓く情報技術」「感性教育」「感性社会学」について紹介してきた。

現代社会の問題点として、

1.物質中心の科学技術がもたらしたものには高効率生産などの優れた側面と、人口爆発、環境汚染、資源枯渇、人心荒廃などの負の側面とがある。

2.世界的な競争時代にあって、従来の物質科学技術のさらなる発展によって競争社会を乗り切ろうとする動きがあるが、物質科学技術の発展のみでは新たに出現する解決が困難な問題に適切に対応することはできない。

3.大量生産大量消費の生産流通システムは、拝金主義、物質主義の弊害を増大させ、人々の精神的荒廃を示すような社会的状況を生み出している。また、巨大化した製造企業は、生産実態を把握することができず、形骸化して利益を上げることが難しくなっている。

 

人々の関心は、物の取得の欲求以外に、価値の交換をする欲求に移りつつあるが、これに対する社会的基盤の整備がなされていない。ポスト工業化社会への移行は既に始まっている。経営のかじ取りは、上記の現代社会の問題点を押さえて行っていく必要がある。

 この辺りについては、先に小林秀雄賞を受賞した、歴史社会学者小熊英二さん著「社会を変える」の第一章:日本社会は今どこにいるのか、でも触れられており、私たちが拠って立つ現在地点を再確認する意味でも、参照されたい。

 

■感性工学の時代に今起きていること

 近年、ICTが隅々まで浸透し、上から降ってくる情報を参照することが主だったこれまでの時代と違い、横繋がりで情報が瞬時に共有されるように変化してきている。これまで主要メディアが流す情報を鵜呑みにしてきたが、ソーシャルネットワーク(SNS)が当たり前に定着し、情報の民主化が進んできた。

経済は20年間ほぼ“0”成長、高度成長期の様にどんどん新たなモノを作るより、これまでに作ったモノの再利用が中心になっている。再利用には、作り直す、資源に戻す、使いまわす、があり、いずれも新規に作る以上に知恵を働かさねばならない。

又、大量生産大量消費から、いいモノを必要なだけ買う。モノの所有から分かち合って(シェア)利用の時代になった。以下最近の事例として、

1.自分好みの洋服を着たい人がいて、そこに届けるために服をストックしてレンタルで流通させる。

2.室内に自分好みの絵を飾りたい人がいて、そのために画家の絵をストックしてレンタルで流通させる。

溢れる物の中から自分の気にいった物だけを選ぶ時代。数多あるものの中から選ばれるためには、その物に作る人の気持ちが入っていなければならない。選ぶ人の琴線に触れるものでなければならない。

これまでの造る方が主で、あてがわれるものを買うのが従の時代から、利用者が主で、供給側が従の時代。感性を働かせて届ける手段を考える時代になった。

 

■感性工学のまとめ

「感性工学」は、自然、人文、社会の各分野で個別に発展してきた科学技術を、感性という人間力の観点から再構築することにより、豊かで安全な社会を作るための実践的工学として創始された学問分野である。

この取り組みが、おもてなしの文化を持つ日本発である事。戦後日本は欧米から多くの制度を輸入してきたが、ようやく課題先進国の日本から世界をリードする考え方が生まれた事が素直に嬉しい。

 

 

次回からは、持続可能性の観点で、「永続地帯」について紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<45>  永続地帯

 

今回からは永続地帯について取り上げています。

■はじめに

 これまで、持続可能経営や持続可能社会の観点で、色々な取り組みについて紹介してきたが、実際の経営や社会では、源流では持続可能と思われる新たな仕組みを導入しても、現場では継続できず、形骸化している仕組みも多い。又、一見、進化したように見えても、返ってやり難くなっている場合もある。 

縄文、弥生から現代まで、持続可能の観点で、経営や社会は本当に進化しているのでしょうか?近年、縄文文化の研究が進み、縄文時代は農耕に拠らない狩猟定住型の暮らしが長く続き、争い事も少なかったと言われている。クルミやドングリの木を植えて育て、その実を食料とするために、火炎土器で煮炊きして食していたようです。大陸から農耕技術が伝わり、以来、農作で食料を得る様になるが、日本列島に住む日本人が古から利用してきたクルミやドングリの利用は、もっと見直されてもいいのでは、と考えます。

開国以来、GDPを大きくすることに邁進してきたが、最早GDPは増えず、一方格差は益々広がってきている。そこで戦後復興期の70年間の一億総サラリーマンの時代に見切りをつけて、1次産業を目指す若者が増えてきた。社会の高齢化と共に、農業が世襲から、新規農業参入者に置き換わり始めている。又、再生可能エネルギーへの取り組みも当たり前になり、エネルギーと食料の自給を目指す考え方がでてきた。

 

■永続地帯とは

そこで「永続地帯」の話になるが、この取り組みは2004年から始まっている。永続地帯とは、1.再生可能エネルギーによるエネルギーの自給と、2.食料の自給を、地域ごとに「見える化」するもので、持続可能の原点に返るものである。

2011年頃から地域ごとのエネルギーの自給と、食料の自給状況が「見える化」され、毎年公表されている。年度ごとに自給率の増減が見える様になり、持続可能社会に向け、着手すべき方向が見えて来る。

開国以来、日本には原材料がない、エネルギー資源がない、食料もないということで、工業製品の輸出で稼いで、資源や食料を輸入することで国を富ませる政策であったが、高度成長、バブル崩壊後の低成長時代を経て、今、改めて、ローカルにエネルギーと食料を自給自足する方向で考える時代になった。

人間が生きる上で、最低限必要なものは、エネルギーと食料である。人類はこれを確保する手段として技術の進歩を進めてきたはずであるが、技術開発の方向がエネルギーの過剰消費に向かい、今やその方向性では人類全体の生存が危ういところまできてしまった。そこで、「永続地帯」である。

 永続地帯(sustainable zone)とは、「その区域で得られる再生可能エネルギーと食料によって、その区域におけるエネルギー需要と食料需要のすべてを賄うことができる区域」である。

 その区域で得られる再生可能エネルギーと食料の総量が、区域におけるエネルギーと食料の需要量を超えていれば、永続地帯となる。

 永続地帯の観点で見ると、大都市は地方にエネルギーと食料を全面的に依存しているわけで、便利な生活を享受しているが、持続可能な状態ではないことが解る。永続地帯は、国が進めている地域創生を進める上で、示唆に富む内容になっている。

 

 

次回は、「永続地帯」の現状について紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<46> 永続地帯 その2

 

永続地帯とは、1.再生可能エネルギーによるエネルギーの自給、2.食料の自給が可能、な地域です。今回は、その現状について紹介します。

■永続地帯の現状

  「永続地帯」とは、「エネルギー永続地帯」であって、「食料自給地帯」でもある区域。

「エネルギー永続地帯」は、再生可能エネルギーのみによって、その区域におけるエネルギー需要のすべてを賄うことができる区域。この区域におけるエネルギー需要としては、民生用需要と農林水産業用需要を足し合わせたものを採用している。輸送用エネルギー需要はどの自治体に帰属させるかを判定するのが難しいため除外してとのことです。

「食料自給地帯」は、その区域における食料生産のみによって、その区域における食料需給のすべてを賄うことができる区域です。

 

エネルギー自給率(=再生可能エネルギーで賄えている割合)は、1位大分県で23%、2位秋田県18.5%、3位富山県16.6%、4位長野県13.8%、5位青森県13.7%である。

又、食料自給率(カロリーベース)が100%を超える都道府県は、北海道、秋田県、山形県、佐賀県、青森県で、農業県の岩手県、新潟県も100%に届かない。又、東京都、大阪府、神奈川県はわずか1~2%である。  (出典:永続地帯2014年度報告書)

 これらを更に市区町村に落として、それぞれの地域の自給率を見える化することで、永続可能な地帯なのか否かを見る試みである。

 

これまでも、食料については、農水省でデータが公開されており、食物の種類別の生産量や金額が見れるようになっているが、エネルギーの自給については、化石燃料から再生可能エネルギーへの置き換えの進展に合わせて、2004年から動き出しているものが、2011年の東日本大震災を契機に、再生可能エネルギーへの置き換え機運が高まり、ドライブがかかってきているものと思われる。

 

見える化の取り組みにより、エネルギー自給率(=再生可能エネルギー)と、食料自給率を併せた 「永続地帯」を見える化は、2012年から集計データが公開されはじめ、以後20132014年度のデータの公開に繋がっている。

 人類の基本的生存の条件である、エネルギーと食の自給状況が、地域ごとに、いつでも確認できるということは画期的なことで、ITの進化によりビッグデータ活用が進み、「永続地帯」の見える化が可能になったということでもある。

 

■永続地帯の見える化指標の役割

 永続地帯指標は、次のような役割を担うと考えられます。

1.長期的な持続可能性が確保された区域を見えるようにする。

 将来にわたって生活の基礎となるエネルギーと食料を、その区域で得ることができる区域を示す「永続地帯」指標は、長期的な持続可能性が確保された区域を見えるようにする役割を担う。

2. 「先進性」に関する認識を変える可能性を持つ。

 人口が密集する都会よりも、自然が豊かで人口の少ない区域の方が、「永続地帯」に近い存在となる。持続可能性という観点では、都会よりも田舎の方が「先進的」になる。同様に、この指標を国際的に展開していけば、従来は「途上国」とみなされていた地域の方が、持続可能性という観点からは「先進的」であることが明白になる。

3. 脱・化石燃料時代への道筋を明らかにする。

 今の世界は、一次エネルギー投入の9割を化石燃料に依存している。しかし、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料は、数百年という単位で考えるとやがて枯渇に向かう。とくに、地球温暖化の進行を考えると、枯渇する前に使用を制限していかざるを得ない。「エネルギー永続地帯」指標は、現段階でも、再生可能エネルギー供給の可能性の大きな地域が存在することを明らかにして、このような地域を徐々に拡大していくという政策の方向性を明らかにする役割を果たす。

 

 

次回は、「永続地帯」向けて、どのような取り組みが可能かを考えます。

新環境経営~環境経営を超えて~<47> 永続地帯 その3

 

■ エネルギーの自給自足への取り組み

 平成23年3月11日の東日本大震災の原発事故以来、これまで原子力に頼っていた発電が、一気に再生可能エネルギーからの発電への置き換えに向かいました。大手資本がFIT制度に乗じて、メガソーラーに投資し、一時、制度の悪用などもありましたが、再生可能エネルギーへのシフトを加速させた意義は大きいと言えます。

又、伸び悩んでいた風力発電も2014年度に102基の風力発電設備が運転を開始、国内の設置総数が2000基を超え、発電能力は合計で294kWに達して、原子力発電所3基分に相当する電力源となった(NEDO)。

地熱も再生可能エネルギーですが、環境影響評価に時間がかかる等で、取り組みは進んでいますが、目に見える形でも普及はこれからです。

家庭用の太陽光発電はシステムの価格低下もあり、普及も進み、2年前には新築の5割を超えたとの報告がありました。その後も4割を超える状況が続いています。ただ、住宅の大半は既存の住宅であり、太陽光発電パネル搭載には適していない構造の屋根等の事情もあり、まだまだ全体の普及率は高くは有りません。平成25年のデータで、住宅用太陽光発電システム普及率は全国平均で5.6%です。佐賀県がトップで10.5%でした。

<今後>

現在、メガソーラー、風力発電に対し、電力会社から接続拒否の問題が起きているが、電力会社間の電力の融通枠を拡大する設備投資が警句されており、又、大規模蓄電池のレドックスフロー電池の実証実験も始まりで、今後も再生エネルギー拡大の流れは変わらない。

家庭用については、最新の省エネ基準に基づく断熱住宅の推進や、空家対策と絡めた住宅対策が検討されており、それらと絡めて太陽光を熱として利用したり、電気として利用したりが進み、省エネ化と再生エネルギーの利用が進む見通しです。

約20年前から始まった家庭用の太陽光発電は、これまではエネルギーを専ら購入して消費するしかなかった生活スタイルから、太陽エネルギーを活用して、自分でエネルギーを創りだすことができる、画期的なものです。

風力発電として、最近、小さな羽根で電気を起こすものや、風のエネルギーを振動に変えて、振動エネルギーから電気を生み出す技術も最近出てきました。太陽光発電に加え、家庭での第2の再生可能エネルギー利用の可能性が出てきました。

又、蓄電池の技術開発も急速に進み、「省」、「創」、「畜」で再生可能エネルギーの利用が進んでいきます。

 

■ 食料の自給自足への取り組み

 食料自給率の把握については、過去から農水省が取り組んできており、既にデータが蓄積されている。今回、永続地帯の切り口で、エネルギーと食料を併せて見れるようにするために、永続地帯としての尺度で食料自給率を試算した。その結果、永続地帯試算と農水省試算の差は0.98程度で、永続地帯試算がやや低めに出ているとのことである。

 日本全体の食料自給率は、概ね39%である。都道府県別にみると、北海道、秋田、山形、青森、新潟、岩手の6道・県が100%を超えて食料自給自足状態であるが、50-99%は14県あり、50%越えは20道・県である。

一方、大都市圏は、東京都:1%(47位)、大阪府:2%(46位)、神奈川県:2%(45位)、埼玉県:11%(44位)、愛知県:12%(42位)、兵庫県:15%(40位)、福岡県:19%(38位)、千葉:28%(34位)である。東京、大阪、神奈川が極端に低い。

この8都道府県の人口総計は、62.8百万人で、全人口127.6百万人の約50%を占める。大都市の、食料依存の状況が良く解る。

 戦後、工業化による高度成長時代に、工業製品を輸出して、それによって得た外貨で食料を買う時代が長く続き、結果としてこのような不均衡な状態を創りだされたと言える。

 <今後>

 国は、農業の生産性向上の為に、農業経営を、家族経営体から組織経営体への移行を推進しており、2004年のデータで、家族経営体数は134万2千経営体で、5年前に比べて18.6%減少、一方、組織経営体数は3万3千経営体で6.3%増加したとしている。

特に、組織経営体の法人経営数は2万3千経営体で、5年前に比べて33.6%増加した。この結果、組織経営体に占める法人経営の割合は69.2%。また、法人経営の内訳をみると、会社法人数は1万6千経営体、農事組合法人数は6千経営体となり、5年前に比べてそれぞれ27.0%、54.6%増加した。

農家数、農業就業人口の減少を含めて、その現象を嘆くのが農業界一般の読み方と思われるが、むしろ、農家数あるいは擬似農家が多すぎるところに日本農業の根本問題があると捉えられている。改革で痛みは伴うが、食料自給率を高めるためには、集約化して効率を高めることも必要である。

大都市に人口集中の状況は、様々な問題を生み出し、高齢化に伴う医療・介護の問題、少子化に伴う育児支援の問題もあるが、食料を世界中から集めることにより生ずる、輸送エネルギーの過大な消費の問題や、食の安全の担保の問題がある。

顔の見える関係での地産地消で、安全を担保する農業への回帰が必要である。

 

 

次回は、永続地帯の最終回として、社会を持続可能とするための、資本ストックについて紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<48> 永続地帯 その4

 

■ 社会資本ストック

人口減少、超高齢化社会において、社会を持続可能するためには、社会を支える資本ストック(人的資本、人工資本、自然資本、社会関係資本、金融資本)の健全な維持と、世代間継承が必要。そのためには、資本ストックの将来推移を予測して、それらの適切な維持・管理・活用(ストックマネージメント)を検討し、包括的に地域をデザインすることが求められています。

これまでの経済運営は、国内総生産(GDP)に象徴される、経済活動のフローに着目した指標を中心に行われてきた。これは、経済が成長する局面では適切な「ものさし」でしたが、人口が減少局面に差し掛かり、如何にして地域経済の持続可能性を確保するかが課題となる局面では適切な「ものさし」とは言えない。

社会資本ストックには5つの種類があり、1.人的資本(ひとストック)、2.人工資本(ものストック)、3.自然資本(しぜんストック)、4.社会関係資本(しくみストック)、5.金融資本(おかねストック)である。

1.人的資本(ひとストック):地域を支える人を将来にわたって確保。

2.人工資本(ものストック):建物や、道路、管路などのインフラストラクチャーが適切に確保。

3.自然資本(しぜんストック):農地、林地、再生可能エネルギーなど、地域の自然の恵みを将来にわたって活用。

4.社会関係資本(しくみストック):地域で培われた助け合いの風土、他人を思いやり、信頼する豊かな人間関係が将来にわたって維持。

5.金融資本(おかねストック):財政的な各種基金や、民間の貯蓄。

 

戦後復興の高度経済成長時代は輸出によりフローを膨らませながら、少しずつストックを蓄積してきたが、人口減少、超高齢化社会においては、社会資本としての、5つの観点からストックを捉え直す必要がある。

 

■持続部門と成長部門

 永続地帯を研究しているチームでは、ストックのメンテナンスを行う部門を「持続部門」、生産フロ-の拡大を目指す経済部門を「成長部門」と捉えている。

モノの生産・販売は世界市場で競争力を確保する必要がある。又、化石燃料、鉱物資源などは安定的に輸入する必要がある。資源を輸入するためには、モノや知的財産などの輸出によって、外貨を稼ぐ必要があり、「成長部門」は国によって育成される必要がある。

一方、経済を支える資本ストックは、ローカルに状況が異なるため、そのメンテナンスを行う経済部門である「持続部門」を育成するための政策は、主に地方自治体が担うことになる。

 社会資本ストックを維持発展させる「持続部門」は地方であり、自治体とそこに住む住民が、主体的に関わらないと成就できないものである。

 

 2015年から2016年にかけて、「米国の指導力の一層の低下」「北朝鮮有事」「中国の対外的拡張」「中国経済成長の急速な低下」「ISテロ」「中東の紛争(サウジとイラン)」「EU分解」等のリスクがあり、世界が連動して揺れ動いている。これまでのグローバル化による経済成長の流れに、明らかな変調の兆しが見えます。

これからの時代は、身の回りの社会資本ストックの維持、発展に注力すべきではないでしょうか?

 

 

 永続地帯の紹介は、今回で終了です。次回からは、2016年以降、社会が取り組まなければならないテーマについて紹介する予定です。

新環境経営~環境経営を超えて~<49> COP21 パリ協定

 

■パリ協定と京都議定書との違い

パリ協定で地球温暖化対策の核になるのは各国が掲げる温室効果ガスの削減目標。すべての国が自主的に目標を設定し、達成に向けた国内措置を取ることが義務づけられた。国連気候変動枠組み条約を締約した196カ国・地域のうち189が目標を掲げた。日本は「2030年度までに13年度比26%減」を掲げている。

京都議定書は排出削減を先進国に義務づけた。削減幅や期間は交渉で決め、守れなければ削減幅を上乗せするなど罰則もあった。一方、パリ協定では、各国が自ら掲げた目標を達成できなくても罰則はない。京都議定書よりは緩い枠組みだが、パリ協定には京都議定書になかった明確な長期目標を定めた。温暖化による気温上昇を、産業革命前と比べて2度未満に抑えるという「2度目標」が明記された。

又、世界全体での取り組みが「2度目標」に向けて十分かどうかを5年ごとに点検し、目標を更新する機会を設けて、対策を強化していく仕組みが設けられた。

 

■パリ協定は温室ガス「ゼロ」を目指す

「パリ協定」は2015年末、パリで開かれた国連気候変動会議(COP21)で採択された。すべての国が二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を、今世紀後半までに「実質ゼロ」にすることを目指す初めての国際ルール。

パリ協定では温暖化による気温上昇を「産業革命前と比べ2度より十分低く保つ」ことを目標として掲げた。「2度目標」を達成するには温室効果ガス排出量を2050年に2010年比で40~70%削減し、今世紀末にはほぼゼロにしなければならない。

パリ協定では「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成する」と明記され、これが「実質排出ゼロ」を意味する。

人為的な排出とは、石炭や石油などの化石燃料を燃やす時や、森林の伐採など土地開発をした時に出るもの。CO2排出は年338億トンに上る。

一方、人為的な吸収とは大規模な植林や、CCS(CO2を地中に固定化)のこと。これらを均衡させれば、海や森林など自然の吸収分で、大気中にたまっているCO2は徐々に減ることになる。

 

■パリ協定は、ビジネスチャンス

目標が明確になったことで、これをビジネスチャンスと捉える動きが出てきた。エネルギー市場を調査する米ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は、「2度目標」の達成のために今後25年間で12兆1千億ドル(約1400兆円)の投資機会が生まれるとの報告書を出した。米国のグーグルやマイクロソフトなど、実質排出ゼロを目標に掲げる企業も現れてきた。

スコットランドやオーストラリア・タスマニア州、米ハワイ州などは、地域内のエネルギーを100%再生エネルギーで賄う目標を打ち出した。

 

 

次回は、温室ガス「実質排出ゼロ」実現のアプローチについて、紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<50> COP21 パリ協定 その2

 

■炭素予算

気温上昇の目標が決まったことで、これから排出できる温室効果ガスの量が計算できる。残された排出量をお金に換算して捉える「炭素予算」という考え方。

国際環境NGO「気候行動ネットワーク」によると、今のペースで二酸化炭素(CO2)の排出が続けば、今後30年未満で予算を使い切ってしまう。

そうなると、企業が所有する炭鉱や油田などの化石燃料はほぼ使えなくなるため、事業はやがて立ちゆかなくなる。世界では化石燃料の関連企業から投資を撤退する「ダイベストメント:ディス・インベストメント」という動きが始まっている。

 

■炭素の価格化

パリ協定とともに採択された決定文書に、「炭素の価格化など排出削減へのインセンティブの重要性を認識する」がある。

「2度目標」を達成するには、排出できる温室効果ガスは限られる。「炭素予算」を石炭や石油など化石燃料の取引に反映させる有効策とされているのが「炭素の価格化」。

これは、二酸化炭素(CO2)を出せば出すほど損をする仕組み。「経済効率的に排出を減らす方法」として、世界銀行や経済協力開発機構(OECD)も推奨している。

手法としては、炭素税と排出量取引制度がある。炭素税は排出する炭素量に応じて課税する。排出量取引は企業などが排出できる炭素量に上限を定め、企業間で不足分や余剰分を取引する。

いずれも排出する炭素1トン当たりに価格がつく。化石燃料の取引価格に上乗せになれば、割安になる再生可能エネルギーを選ぶ企業や消費者が増え、全体として「実質排出ゼロ」の社会の実現へ向かう。これは、企業には、新たなビジネスチャンスにもなる。

炭素価格がいくらなら炭素量の排出削減が進むのか、OECDのグリア事務総長は1トン当たり30ユーロ(約3800円)以上への引き上げを加盟国に促している。

日本は2012年に事実上の炭素税を導入。段階的に引き上げてきた税率は今年4月以降、1トン当たり289円で、国際的にはほぼ最安レベル。排出量が多い石炭火力発電の新設計画が相次いでいることからも、低炭素社会への転換には役に立っていない。

 

■価格化への対応

COP21では、独仏など21の国や州政府、及び英石油大手BP、オランダ電機大手フィリップス、スイス食品大手ネスレなど70社以上が「炭素価格化リーダーシップ連合」を結成した。

世界の企業が前向きなのは、パリ協定を受けて各国が厳しい排出規制を導入するのを避ける狙いもある。炭素の価格化の方が「低炭素社会へ向かう道筋で、市場の活用を含め、企業の裁量の余地が大きいと考えている」。

一方、日本の経団連は、炭素税や排出量取引について「規制的な手法は、民主導の活力ある経済社会の実現を阻害する」として廃止や反対の姿勢を崩していない。

 規制が行き過ぎれば経済が動かず、民間に任せればうまくいくわけでもない。温室ガス「実質排出ゼロ」「2度目標」の達成に向けて、官民が知恵を出し合って、道具をうまく使っていく必要がある。

 

 

次回は、温室ガス「実質排出ゼロ」実現のためについて、紹介します。

新環境経営~環境経営を超えて~<51> COP21 パリ協定 その3

■化石燃料投資からの撤退

 今のペースで二酸化炭素(CO2)の排出が続けば、今後30年未満で「炭素

予算」を使い切ってしまうという。そうなると、企業が所有する炭鉱や油田など

の化石燃料はほぼ使えなくなる。事業はやがて立ちゆかなくなるため、化石燃料

の関連企業から投資を撤退する「ダイベストメント:ディスインベストメント」

が起こる。もともとは市民団体が大学内で始めた運動だが、今では仏保険大手ア

クサや英オックスフォード大など、大手企業や大学に広がっている。

 又、米カリフォルニア州教職員退職年金基金が、石炭企業4社への投資からの

撤退を発表した。化石燃料の中でもCO2の排出量が多い石炭の環境負荷が重く

石炭企業への投資が経済的なリスクにつながると判断したという。

投資家のこうした動きは、金融全体の流れも変えつつある。温暖化に伴う運用リ

スクが認識されるようになっていることから、主要国の金融当局などでつくる金

融安定理事会(FSB)はリスクを測る基準づくりを始めた。

 

■日本の動き

 一方、日本では、石炭火力発電所の新設計画に待ったをかけてきた環境省が、

条件付き容認に転じた。ダイベストメントを巡る動きも、日本国内では表面化し

ておらず、化石燃料関連企業の持つリスクへの理解は広まっていない。

 国連環境計画金融イニシアチブの末吉竹二郎氏は、「環境への悪影響だけでな

く、経済合理性から見ても世界の流れは脱化石燃料だ。エネルギーの自活ができ

ない日本こそ世界の流れを先取りすべきなのに、長期的な視野を欠き世界に取り

残されている。国内の投資家は、数十年先の世界を見据えて投資先を選ぶべきで

はないか」と。

 ただ、日本は石炭火力発電設備等における脱硫及びCO2処理に高い技術を有

しており、化石燃料=温暖化とは言えない。現在、政府は2030年のCO2削減目

標を達成するために、次世代の火力発電技術の開発を急ぐ。石炭火力は高効率の

ガス化複合発電へ、LNG火力は燃焼温度を高めたガスタービン発電機で、世界

をリードする戦略だ。安い石炭を利用して、CO2を分離、回収して、外に出さ

ないで再利用する技術への投資も進んでいる。

 

 

次回は、温暖化への適応策について、紹介する。

新環境経営~環境経営を超えて~<52>    COP21 パリ協定 その4

■温暖化への適応策

 パリ協定では、温室効果ガスの排出削減策と並んで、温暖化で起こる被害を軽

くする「適応策」も地球温暖化対策の柱に位置づけられた。小さな島国が危機感

を募らせる海面上昇や、農作物に被害が出る干ばつや多雨など、すでに人々の暮

らしや経済に深刻な影響が出ているためだ。

 パリ協定では、温暖化に備えることを世界の共通目標に掲げ、各国はそれぞれ

適応策をつくることになった。さらに温暖化に弱い途上国への支援策も盛り込ま

れた。

 途上国の温暖化対策を支援する国連機関「緑の気候基金」は、資金の半分を適

応策にあてる方針。

 アフリカ南東部のマラウイには気候情報と早期警戒システムをつくる。国民の

多くが農村地域の小規模自作農で、雨期の時期がずれ乾期が長くなり、農作物の

収穫が減っているという。

 アフリカ南東部マラウイで280万人が過去最悪の飢餓に瀕している

http://mizu8882.blog.fc2.com/blog-entry-1029.html

 バングラデシュの沿岸地域はサイクロンや洪水の危機にさらされているため、

避難所や避難路をつくる。沿岸村落における気候変動災害リスクマネジメント開

発モデル事業

https://www.erca.go.jp/jfge/subsidy/organization/act_repo/report20/057.html

 

■温暖化への適応策費用

 国連環境計画(UNEP)の報告書によれば、気温上昇を2度未満に抑えられ

たとしても、途上国での干ばつや洪水、海面上昇への適応策にかかる費用は、20

50年に2500億~5千億ドル(約28兆~約57兆円)になる可能性があるという。

ここ数年でも、世界全体で年250億ドル(約3兆円)前後の公的資金が適応策に

投じられている。

 世界の自然災害の損害を調べている独ミュンヘン再保険によると、14年の被

害額は1100億ドル(約12兆)、15年は900億ドル(約10兆)で、9割以上

は気象によるもの。

 適応策が必要なのは、インフラなどが脆弱(ぜいじゃく)で温暖化の被害を受

けやすい途上国だけではない。日本政府も昨年11月に「国家適応計画」をつく

り、地方自治体でも対策が進む。

 

■これまでの適用策費用の支援

 先進国による支援として、古くは地球規模の環境保全のためのプロジェクトへ

の無償資金協力を行う「地球環境ファシリティ(GEF)」がある。その他にも

京都議定書の枠組みにおいて認められた、途上国で温室効果ガスの削減プロジェ

クトを実施する代わりに先進国が排出権を得る「クリーン開発メカニズム(CD

M)」や、世界銀行を通じて途上国の気候変動に対する支援を行う「クリーン投

資基金(CIF)」等を通じた資金や技術の支援がある。

そして今回、「緑の気候基金」が設立されることになった。

 

■「緑の気候基金」への我が国の取組み

 「緑の気候基金(Green Climate Fund)」という新たな多国間基金に対して、

日本として15億ドル(約1800億円)を拠出することが、先の国会で承認された。

 気候変動分野における途上国支援の新たな潮流 みずほ情報総研

http://www.mizuho-ir.co.jp/publication/column/2015/kankyo0813.html

 

 

次回は、温暖化への適応策、途上国支援について、紹介する。

新環境経営~環境経営を超えて~<53> COP21 パリ協定 その5

■途上国への日本の支援

 「日本は2020年に現在の1・3倍、官民あわせて年間1兆3千億円の気候変動

対策事業が途上国で実施されるようにする」。COP21の初日、安倍晋三首相

は約150カ国の首脳が集まる会議で宣言した。

 日本は13~14年の2年間、途上国の温暖化対策に約2兆円を支出したとし

ている。このうち8割は、政府の途上国援助(ODA)や、政府が100%出資す

る国際協力銀行(JBIC)の融資事業など公的なお金。

 温室効果ガスを排出しながら先に発展した先進国は、温暖化の被害にさらされ

やすい途上国を支援しなければならない。国連交渉では長年、途上国支援のあり

方が大きな論点だった。COP21では、ほかの先進国とともに日本も支援を強

める姿勢を示し、合意への機運を高めた。

 パリ協定には、途上国支援のための資金提供は先進国の義務と明記された。支

援額が全体で年1千億ドルを下回らないようにする目標も盛り込まれた。

 

■これまでの途上国支援の課題

 第一に、資金や技術が先進国の考え方に従って拠出されること。先進国が運営

の主導権を握っている世界銀行に事務局等が設置され、資金を管理している。中

国を中心としたAIIBの設立からも分かる通り、これまでの先進国による途上

国支援の仕組みに対する途上国からの反発は大きく、支援の仕組みづくりに途上

国を加えていくことが重要。

 第二に、支援が途上国の民間部門の成長に波及しておらず、自立的な発展につ

ながっていない。先進国の公的機関や国際機関から途上国の公的機関への支援が

多く、民間に資金が流れにくかった。

 第三に、気候変動に脆弱な地域に対する被害の対策への支援が進んでいない。

CDMについては、実施地域も中国やインド等新興国や中進国が多く、島しょ国

や後発途上国等の気候変動に対して脆弱な国への支援は少ない状況にある。

 

■日本の支援の内訳

 安倍首相が宣言した1兆3千億円も、多くは年5500億円規模のODA事業、出

融資額が年2兆5千億円規模のJBIC(国際協力銀行)の一部事業が占めると

みられる。従来は「開発支援」とされてきた都市鉄道や石炭火力発電といったO

DA事業も、日本は「温暖化対策の一環」と主張する。こうした考え方に途上国

には「ダブルカウントだ」(インド)という批判もあるが、「開発支援と温暖化

対策を切り分けるのは難しい」。

 パリ協定では、また、先進国以外も自主的に途上国を支援するよう奨励してい

る。経済力のある新興国が念頭にあり、すでに中国は独自の支援を表明した。今

後の支援目標の額には「新興国への支出もカウントしたい」というのが日本の意

向。

 

 

 次回は、温室ガス「ゼロ」実現のための長期的視点について、紹介する予定。

新環境経営~環境経営を超えて~<54> COP21 パリ協定 その6

■温室ガス「ゼロ」実現のためにはイノベーションが必要

 パリ協定には「今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去

の均衡を達成する」と明記された。人為的な吸収の大きな柱の一つとされている

のが、火力発電所や製鉄所から出る二酸化炭素(CO2)を回収して地下に埋め

る技術「CCS」。CCSと、大気中のCO2を吸収しながら育った植物を燃料

にしたバイオマス発電を組み合わせて「バイオCCS」にすれば、排出を差し引

き「マイナス」にできると期待されるがことは簡単ではない。

 昨年12月、バイオCCSなどCO2除去技術の影響を分析した国際共同研究

の成果が発表された。英アバディーン大や日本の国立環境研究所などの科学者約

40人が参加。結論は「重大な制約があり、実施可能な規模は限定的になる可能

性が高い、であった。

 

■人工光合成プロジェクト

 10年計画で進める人工光合成プロジェクトでは3つの研究開発分野がある。

1つは光触媒による水素(H2)と酸素(O2)の製造。2つ目は水素と酸素が

混ざり合った状態のガスから水素だけを回収する分離膜の開発。3つ目が水素と

二酸化炭素(CO2)を使って化学品の原料になるオレフィンを製造するもので

ある。

 人工光合成の一連のプロセスを確立できると、火力発電所と組み合わせてCO

2排出量の削減につなげることができる。火力発電に伴って発生するCO2を分

離・回収して、化学品やバイオ燃料の原料を製造する取り組みが進んでいる。火

力発電の比率が大きい日本では、温暖化対策のためにCO2を回収して利用でき

るメリットは大きい。

 

■イノベーションには多様な意味がある

 日本政府の「エネルギー・環境イノベーション戦略」には、バイオCCSのよ

うな技術が「革新的技術」として盛り込まれる方向。一方、アメリカは、クリー

ンエネルギーのコストを今後も引き下げていくために、イノベーション(技術革

新)と資金が必要の立場。

 イノベーションを、まだ存在しない新技術の開発と位置づける日本と、今ある

技術のコストダウンや普及を含める米国の違いがある。

 日本学術会議の大西隆会長は、環境省の会合で「工学系などが新技術を開発す

ることと捉えがちだが、イノベーションには多様な意味がある」と指摘。

 技術を社会のニーズと結びつけながら普及させる政策など、文系的なイノベー

ションも重要。

 

 

次回は、パリ協定で実現する未来について。

新環境経営~環境経営を超えて~<55> COP21 パリ協定 その7

■パリ協定で実現する未来

 あるべき未来の姿からさかのぼって対策を決めるべきだというのがパリ協定。

長期戦略があれば、その時々の政治や経済状況で温暖化対策が左右されることが

少なくなる。温室効果ガスを「実質排出ゼロ」にするための国家戦略を2020年ま

でに作るよう各国に求める。

 英国で制定された「気候変動法」は、「2度目標」(温暖化による気温上昇を

産業革命前と比べ2度より十分低く保つ)を念頭に、2050年に1990年に比べ80

%削減という目標を設定。それまでに排出できる残りの温室効果ガスの量を試算

し、5年ごとに排出量の上限を決めて、政府にその達成を義務づける。将来を見

通し、ペース配分を考えて対策に取り組める。

 最近、英国は国民投票でEU離脱が選択され、政治や経済状況が不透明な中で、

温暖化対策の長期戦略が堅持されるか見ていく必要がある。

201695日に杭州で開かれたG20でも「パリ協定」の早期発効が採択され、

2大排出国であるアメリカと中国も削減義務を負って活動する方向となった。京

都議定書では、離脱や除外となっていた2大排出国がパリ協定に組み込まれる意

義は大きい。

 ただ、短期的には、地球温暖化による、永久凍土の消滅や海面上昇、海水温の

上昇による異常気象等、地球規模の災害が増えてきており、一刻も早い温暖化対

策が望まれる。

 

■今世紀後半の社会

 住宅の断熱性が高まり、地中熱を使ったヒートポンプ式エアコンのおかげで、

室温は一年中一定に保たれている。

 屋根に乗せた太陽光パネルで作った電気で家の中で消費するエネルギーの全て

をまかなうのが常識。余った電気は蓄電池や電気自動車にためて、天気の悪い日

や夜に使う。オフィスやショッピングセンターなどのビルでは、水素を使って燃

料電池を動かし、足りない電気を補っている。

 乗用車は、電気自動車が普及、トラックやバスは燃料電池やバイオ燃料で動い

ている。高速道路では、路面や架線から電気を受け取りながら走ることもできる。

市街地はコンパクトになり、自転車や小型電気乗用車が行き交う。

 事業用も、電気の主流は再生可能エネルギー。風力、地熱、水力発電が増えて

いる。火力発電所も残っているが、CO2を回収して地中に埋める装置(CCS)

がついている。CCSがついたバイオマス発電所もある。燃料はCO2を吸収し

ながら育つ植物なので、排出は「マイナス」となる。

 

 COP21 パリ協定の紹介はこれで終了です。次回からは、これまでに紹介

してきた内容を取り込んで、源流から下流までをトータルにリサイクルしている

 

事例について紹介する。

新環境経営~環境経営を超えて~<56>  リサイクル先駆業界:事務機

 新環境経営の目指すところは、これまでに培われた環境技術、仕事のやり方等

の全てをつぎ込んで、持続可能な循環型社会を実現することであり、豊かな社会

で大量生産であっても、江戸時代の様な、自然界の再生力を利用した循環型社会

である。

 まずは、最初に、リサイクルに他の業界に先駆けて取り組んだ、複写機、プリ

ンター業界について紹介します。

 

■富士ゼロックスの取り組み

 富士ゼロックスは、業界に先駆けてリサイクルに取り組み、1995年には事務機

器業界で初めてリユース部品を使用した商品を市場導入、1997年から廃棄物の埋

立てゼロ(ゼロ・エミッション)を達成。又、1998年には業界で初めて、プラス

チックのリサイクルに成功した。

 更に国内で培った資源循環システムの海外への展開として、2004年度からアジ

ア・パシフィック地域(タイ)、2007年度には台湾、2008年度には中国・蘇州に

リサイクル拠点を設立。2012年度には、オーストラリア・ニュージーランド・韓

国を自国での資源循環活動へと変更、事業展開する地域全体で、日本と同等のリ

サイクルシステムを構築している。

 

 以下、富士ゼロックスの資源循環システムの取り組みを紹介する。

 

<クローズド・ループ・システム>

 「市場に出した商品は回収する。回収して使い切る。新たな資源の投入を抑え、

閉じた輪の中で部品を循環していく」これがクローズド・ループ・システムの基

本的な考え方。原材料化・素材化される部品を、できる限り部品として再使用す

る内側のループに向け、リユース部品の拡大とリサイクル率を高めていくことを

目指している。

 

<ゼロ・エミッション>

 廃棄ゼロに向けた活動がゼロ・エミッション。再使用できない部品や商品は、

手分解で分別し、徹底的に資源として回収する。さらに、新造品と同等の品質で

リサイクルプラスチック素材を提供できる技術を素材メーカーと共同開発。

 資源循環システムは使った資源は活かして、できる限り新たな資源は使わずに、

廃棄ゼロを目指す。

 

<インバース・マニュファクチャリング>

 インバース・マニュファクチャリングとは、部品の再使用を前提としたライフ

サイクル企画、再使用部品の拡大のためのリユース/リサイクル設計、環境負荷

の少ない商品作りを目指す環境影響アセスメントを、ものづくりの上流で行う、

「リユース/リサイクル設計」活動。

 1995年に「リサイクル設計ガイドライン」を制定、さらに部品リユースを拡大

する為「リユース設計指針」を策定し、部品リユース設計法を開発、技術標準化す

ることで新商品の開発時にリユース設計を確実に商品に導入。

 さらに、部品・素材メーカーとの連携を強めるため「リサイクル調達ガイドラ

イン」を制定し、ノウハウの共有化、リユース技術の共同開発などの協力を要請

している。また、特定有害化学物質の削減を「グリーン調達基準」として定め、

特定有害化学物質の製品への含有/製造工程での使用を管理。

 

【富士ゼロックスの資源循環システム】

https://www.fujixerox.com/eng/company/ecology/cycle/communication/pdf/brochure_j.pdf

 

 複写機、プリンター業界は、お互いに切磋琢磨して資源循環システムの競争を

行い、他の業界に先駆けて、循環型社会の実現に取り組んでいる。

 

 次回は、解体建設現場で発生する混合廃棄物をすべて再資源化する総合リサイ

 

クル業を目指す、石坂産業について紹介する。

新環境経営~環境経営を超えて~<57> リサイクル先駆業界:総合リサイクル業

 今回は、解体建設現場で発生する混合廃棄物をすべて再資源化する総合リサイ

クル業を目指す、石坂産業について紹介します。

 

■石坂産業の理念

 人々の豊かな生活と引き換えに廃棄物が出る。その処理は誰かが必ずやらなけ

ればならない仕事。私たちはこれを使命ととらえ、産業廃棄物の処理という仕事

に誇りを持ち、研究し、周囲の自然環境や近隣に住んでいる方たちを最大限に尊

重しながら、目配り、気配り、心配りのおもてなしを心がけ、よりよい社会をつ

くるため力を尽くしていきます。

 前例のないことでもどんどん取り入れ、まず自分たちが変わり、この仕事に携

わる社員をはじめとして、利用してくださる方、顧客、近隣に住む方々、偶然に

私たちのことを知ってくださった方々の意識に働きかけ、日本をよりよい循環型

社会に変えていきます。

 

<ごみにしない技術>

 石坂産業は1999年の埼玉県所沢のダイオキシン問題をきっかけに、燃やさない

産業廃棄物処理のあり方を研究開発し、2013年、世界最先端の減量化技術で、減

量化、リサイクル化率平均95%を達成。さらに新たな産業廃棄物の資源化へ挑

戦し続けています。

 ごみにしない技術には、大量生産、大量消費、大量廃棄が当たり前だと思う意

識や価値観、ライフスタイルを変え、社会を循環型にするという魅力があります。

 

■創業の思い(石坂産業 創業者 石坂好男 2014.12.15

 日本の大量生産・大量消費の高度成長期に、現場から発生するすべての廃材を

そのまま夢の島への埋め立処分を依頼された。資源がないこの国で平然と使える

ものを捨てる行為に納得がいきませんでした。

 そこで1967年に一念発起し、土木解体、廃棄物処理業の法人を設立、古材の選

別再利用や有価物の再利用の事業に着手。その間に選別技術の研究開発に取組み、

解体建設現場で発生する混合廃棄物をすべて再資源化する総合リサイクル業を目

指した。

 先進的な減量化・リサイクル技術を開発し、最先端の総合リサイクルプラント

施設を建設した。

 

<これまでの経営で一番苦労したこと>

 1999年、テレビ報道のダイオキシン騒動に巻き込まれ、ダイオキシンや環境破

壊の張本人のごとくまくし立てられた。ごみを焼却して、縮減する減量化プラン

トでは業界を先駆けていたにも拘わらず、マスコミ、環境団体や住民団体など長

期間の反対運動に巻き込まれ、身に覚えのない誹謗や中傷の連続には、親族まで

肩身の狭い思いをさせてしまった。

 

<これからの処理業に願うこと>

 価格競争が横行し「安かろう・悪かろう」が有利な業界では、静脈産業である

産業廃棄物処理業の未来はない。業界全体がリサイクル技術の研究開発に取組み、

国が唱える資源循環型社会の実現に向け、ゼロエミッションの推進力としての真

価を発揮して欲しい。

 見せかけのリサイクルやエコではなく、他の業界を牽引し、持続可能な資源を

循環する仕組みに向けた環境保全の変革を期待している。

 

■石坂産業の現在

 創業者の仕事場で育てられた、先代社長の娘の石坂典子さんは、表情から強い

意思を感じる、きりっとしたハンサムウーマンです。テレビでも度々取り上げら

れており、総合リサイクルプラント施設を一般に公開して、見学者が後を絶たな

い状況だと言う。

 リサイクル現場は汚いもの、鉄の板で覆って、外側から見えない様にする、従

来の常識を覆す取り組みです。

 http://www.ishizaka-group.co.jp/technology.php

 

 

 次回は、都市鉱山と呼ばれる、DOWAのリサイクル事業について、紹介する。

新環境経営~環境経営を超えて~<58> リサイクル先駆業界:DOWAのリサイクル事業

 新環境経営の目指すところは、これまでに培われた環境技術、仕事のやり方等

の、全てをつぎ込んで、持続可能な循環型社会を実現することであり、豊かな社

会であっても、江戸時代の様な、自然界の再生力を利用した循環型社会である。

 今回は、DOWAのリサイクル事業について紹介する。

 

DOWAのリサイクル事業

 DOWAグループの小坂製錬(株)は、1世紀に渡る黒鉱製錬で培ってきた技術を

活かし、廃電子基板やスクラップ類などのリサイクル原料から、金・銀・銅など

の非鉄金属を回収している。

 2007年にはリサイクル原料への対応力を高めたTSL炉と呼ばれる新型製錬炉

が完成し、金・銀・銅・鉛を始めとするベースタルから、ビスマス、インジウ

ム等のレアメタルにいたるまで、約20種類の有価金属の高率回収を実現してい

る。

 年間生産量は、金6t、銀500t、銅10,000t、鉛25,000t、スズ700t、アン

チモン500t、ビスマス200tで、特に銀とビスマスは国内トップクラスの生産量

である。http://www.ink.or.jp/~koyou/Kaiin/hp/kosaka_seiren/

 国内の鉱山は1985年のプラザ合意による円高の進行で急速に競争力を失い、19

94年には国内全ての鉱山が閉鎖。その後は、海外から鉱石を輸入し製錬する買鉱

製錬事業を続けてきたが、自動車、家電、小型家電等の基板から貴金属、希少金

属を回収した資源循環型ビジネスで再び注目を集めている。秋田県小坂町の「小

坂鉱山」は、足尾、別子と並び三大銅山と称された鉱山である。

 

■都市鉱山

 元鉱山が、自動車、家電、小型家電等の基板から貴金属、希少金属を回収した

資源循環型ビジネスに乗り出したが、一方、「都市鉱山」と呼ばれるものがある。

 都市鉱山とは使用済みの小型家電(携帯電話、パソコン、デジカメ等約100

目)である。それらの小型家電の廃電子機器には貴金属や希少金属が多く含まれ

ているため、都市鉱山と呼ばれる。

 小型家電リサイクル法がH25年4月に施行された。使用済みの小型家電から

貴重な金属を回収、有効利用するのが目的である。その規模は約28万トン、金

額にして800億円以上にもなる。

 

*従来の家電リサイクル法ではエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機が対象でリサ

イクルが義務つけられているのに対し、小型家電リサイクル法は「自由参加型」

で、事業として採算に乗るかがポイントとなる。小型家電の回収は自治体となる

が、自治体にとっては、これまでの破砕処理や焼却処理、埋め立て処分にかかっ

ていたコストの削減が期待できる。

 

■廃基板の流通

 資源循環型ビジネスの核の一つとなる廃基板は、物の移動のグローバル化で、

電子製品が世界中に出回り、インドや中国などの開発途上国でも廃家電の基板か

らの貴金属の取り出しが行われているが、リサイクルの技術や設備がないため、

劣悪な環境で行われている現状がある。児童労働も多く、廃棄物に適正処理は途

上国にとっての課題である。

 そこで、廃基板を日本に輸入し、リサイクルする試みが始まっているが、基板

は部材のハンダづけに鉛を使うことから、有害物質を含む廃棄物の国際移動を制

限する「バーゼル条約」の対象となり、輸入のハードルは高い。

 ワールドワイドで、貴金属や希少金属をリサイクルして、「原材料を調達する」

取り組みが始まっているが、廃棄物処理技術が獲得できた現在は、廃棄物処理も

ローカルに小さく回すべきである。

 現地で生産、それを現地で使用し、現地で廃棄物として処理するのが原則。そ

れにより有害物質等も世界中に拡散させることを防ぐことが出来る。つまり、で

きるだけローカルに小さくリサイクルを回すのが目指すべき方向である。

 

次回は、化石燃料時代に大量に排出されるCO2をリサイクルする夢の技術「人

 

工光合成」について紹介する予定。

新環境経営~環境経営を超えて~<59> CO2のリサイクル「人工光合成」

 新環境経営の目指すところは、これまでに培われた環境技術、仕事のやり方等

の、全てをつぎ込んで、持続可能な循環型社会を実現することであり、豊かな社

会であっても、江戸時代の様な、自然界の再生力を利用した循環型社会である。

 今回は、化石燃料時代に大量に排出されるCO2をリサイクルする夢の技術「

人工光合成」について紹介する。

 

■植物の光合成のメカニズム

 実際の植物の光合成は、太陽光を使う「明反応」と光を使わない「暗反応」に

分かれる。明反応では水から電子を奪って分解(酸化)し、エネルギーを蓄える

物質(ATP)と、後の還元反応を促進する物質(NADPH)を作る。暗反応

では、明反応で作られた物質を使って、CO2を還元して炭水化物を作る。植物

のエネルギー変換効率は0.1~2.5%である。

 数十億年前の太古から、自然界の植物が行って来た「光合成」は、究極のエコ

ロジーな循環型エネルギーシステムである。その太古からの地球の循環型エネル

ギーシステムを狂わせているのが我々人類。わずか200年で大量の化石燃料を消

費した結果、大気中のCO2が増え地球の温暖化を招いている。

 

■人工光合成へのアプローチ

 化石燃料を大量に消費し、大気中に放出されるCO2をリサイクルするのが人

工光合成へのアプローチである。

 「人工光合成」が目指す1つ目の反応は、太陽光エネルギーを取り込んで水を

酸素と水素に完全分解する反応である。この反応は植物が行っている「明反応」

である。そして、2つ目の反応は、二酸化炭素と水から有機物を合成する反応で

ある。更に、窒素と水からアンモニアなどを合成する反応は、「人工光合成」が

目指す3つ目の反応と言われている。

 

■人工光合成の研究成果

 2011年トヨタ自動車グループの「豊田中央研究所」は、「人工光合成」の実証

実験に世界で初めて成功したと発表。同研究所は常温常圧の太陽光エネルギーの

下で、二酸化炭素と水から「ギ酸」の合成に成功した。水を酸化、分解する触媒

と、CO2を還元する触媒の、2つの光触媒を用いて、「プロトン交換膜」とい

う装置を用いて実現した。その太陽光エネルギーからのエネルギー変換効率は

0.03%0.04%で、植物の「光合成」のエネルギー変換効率の1/5程度を実現した。

 繰り返しになるが、自然界に於ける植物の「光合成」のエネルギー変換効率は、

一般的に0.1%~2.5%前後である。従って、太陽光から100のエネルギー

を得た植物が「光合成」によって得られるエネルギーは0.1~2.5である。

 現在の「人工光合成」のエネルギー変換効率は自然界に於ける植物の「光合成

」のエネルギー変換効率に及ばないが、日本のトップクラスの研究者達は2030

までに「人工光合成」のエネルギー変換効率を10%程度のレベルに持っていけ

る様に日夜研究を続けています。

 

http://www.artificialphotosynthesis.net/henkankouritsu/

「人工光合成.NAVI」

http://www.sankeibiz.jp/business/news/161226/bsd1612260500003-n1.htm

「昭和シェルが新たな人工光合成技術を開発 CO2を気体のまま炭化水素に」

 

 

次回は、本連載の最後として、「人工物の飽和」について、紹介する予定。

新環境経営~環境経営を超えて~<60> 「人工物の飽和」

 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進し

てきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステ

ム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その

後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきた。又、これまでに積み上げら

れてきたそれらの知恵の上に、2015年以降に目指すべき今後の新環境経営につい

て、最新の話題を紹介してきた。最後に、環境経営を行っている事例をいくつか

紹介してきた。本連載の最終回は、「人工物の飽和」について紹介する。

 

■「人工物の飽和」

 元東大総長で現在三菱総合研究所理事長の小宮山宏さんは「人工物の飽和」に

ついて、以前より一貫して発信されています。

 『日本をはじめ先進国では、エネルギーを消費する家やビルの床面積、自動車

の数、工場などが頭打ちです。こうなるとスクラップした分だけ新しいものを作

れば足りる社会になる。消費する場が増えず、効率は上がるので、エネルギー消

費は減っていく。日本はここ10年でエネルギー消費量が平均して年1.6%ず

つ減っていて、今は1990年ごろと同じ水準。2050年には「人工物の飽和」が世界

中で起こる。人工物が飽和すれば新たな金属資源はいらない。廃品からリサイク

ルで取り出せばいい。化学製品も木材を使った生分解性のものに置き換えればい

い。日本は工業製品の加工貿易を得意としてきたが、どこでも工業製品が作れる

時代に生き残れるシナリオではない。人工物が飽和のこれからの時代は、エネル

ギーと資源の自給国家を目指すべき。』

 

■日本の電力消費量見通し

 パリ協定は、今世紀後半に「脱炭素社会」を目指すと宣言した。2050年には、

エネルギーの相当量が電気になり、電気の大半を風力、水力、太陽光、バイオマ

ス、地熱等の再生可能エネルギーでまかなう社会。再生エネルギーの価格は、急

速に下がってきている。

 又、省エネは我慢といったイメージがあるが、冷蔵庫やエアコンなどの家電製

品は省エネ化が進んでおり、定期的に買い替えることで、エネルギー効率がよく

なり元が取れる。住宅を高気密・高断熱にすると、光熱費が減ると同時に、心疾

患やアレルギーが減る。生活の質を上げながら省エネすることが可能。断熱住宅

の義務化は新築から始まり、既存住宅にも適用されていく。そのような法整備も

あり、2050年には電力消費量が現状の3分の2程度になると予測されている。

 

■エネルギーと食の自給自足

 人口物が飽和すると、後はリサイクルしかない。17世紀の科学の時代と、2

0世紀の技術の時代を経て、人口物は再利用の方向。使い捨ては有り得ない時代。

そうなると、21世紀、22世紀は、エネルギーと食の自給自足がテーマとなる。

<エネルギー>

 エネルギーは再生可能エネルギーでまかなえる目処が付いた。太陽光、風力共

に、化石燃料で発電したものを買うより安く調達できる。地熱、水力も同様。今

となっては、原子力は後始末の課題はあっても、発電に使い続ける選択肢は有り

得ない。

 次は食である。

 

<食品廃棄の“0”化>

 食品廃棄が問題になっているが、見込みで作り、売れ残りは廃棄がこれまでの

常識。廃棄食品の問題は、20世紀社会が生み出した大変な欠陥であり、これま

でに獲得された科学・技術をフルに活用して、食のデマンドレスポンスを実現す

る必要がある。これからは需要に応じて作る(デマンドレスポンス)でなければ

ならない。讃岐うどんの丸亀うどんの方式である。

 丸亀うどんは客の注文があると連動して上流が動き始める。まず注文を受けて、

うどんが茹で釜に放り込まれる。すると玉の不足分を補うべく麺が切りだされる。

所定量切り出されると不足分のうどんが打たれる。打たれたうどんが不足すると、

粉からうどん生地が煉られる。

 牡蠣の養殖も進化してきている。生育期間も短くなってきており、牡蠣が消費

された分、稚貝を仕込む方向が可能になる。

 漁業資源は、これまで自然任せで、獲れ過ぎれば価格を叩かれ、場合によって

捨てられることがあったが、これからは陸上を含めた養殖で、近年の牡蠣養殖の

取り組みの様に、消費された分、稚貝を放ち生育させるデマンドレスポンスの方

向で考えなければならない。

 

<野菜の生産>

 植物工場は、始まったばかりで課題は多いが、葉物以外にも色々なバリエーシ

ョンを用意し、拡げていく方向。葉物野菜が消費された分、種を植えるデマンド

レスポンスで生産。植える種は生育期間を見込んでレーンの数の増減で調整する。

 現状は液体肥料が中心だが、今後は土のミネラルの補給なども加え、根菜類へ

も発展させていかねばならない。天候任せから、自然の営みに学んで、デマンド

レスポンスを実現することが、無駄の削減に繋がる。動植物の命を頂く以上、無

駄使いは許されない。

 

 今回で、新環境経営~環境経営を超えて~の連載を終了します。60回の長き

 

に亘り、ご愛読ありがとうございました。

2013年

8月

09日

ソーラーシェアリングの生みの親の記事の紹介です

農の未来「光」に託す(長島彬さん)
農の未来「光」に託す(長島彬さん)

ソーラーシェアリングとは、太陽光エネルギーを農作と太陽光発電に利用、両立させることである。生みの親は長島彬さん。定年後大学で学び「光飽和点」と云う言葉を知って、太陽光エネルギーを「植物の光合成」と「太陽光発電」で分け合う(シェア)ことを思いついた。特許を取得して、農業振興が目的のため、誰でも利用できるようにした。

ソーラーシェアリングの普及を図るため、千葉県市原市に空き家を購入し、2010年8月より実証実験開始、発電を行いながら、自ら野菜を栽培している。

農地で太陽光発電を普及させるためには農地法が懸念事項。2011年より「ソーラーシェアリングを推進する会」を作って、農地で発電の働きかけを続けてきた結果、2013年3月、農水省より「営農に支障がなければ、支柱の部分のみ一時転用を許可する」との内容の指針が出された。優良農地として、営農を続けながらであれば、太陽光発電OKと云うことである。(詳細は添付資料)
 又、長島さんは、「200年前は、農家が作物とエネルギー(薪や炭)を作っていた。 産業革命以後、化石燃料に依存して200年、長く見てもこの先200年で化石燃料はなくなる。早晩、地価資源を掘り起こして使える時代は終わる。太陽光を利用して、作物とエネルギー(太陽光発電)を作らなければならない時代。」とおっしゃる。

 

私は再生エネルギーの普及が脱原発を早めることに繋がり、家庭の屋根への太陽光発電の普及促進の働きかけを行ってきたが、耕作と発電の両立の話は初耳で、目から鱗でした。又、江戸時代は農家が食料とエネルギー(薪、炭)を作っていた。これからは農家が食料と電気エネルギーを生産すればいい。この発想も新鮮でした。

土を作り、水を貯め、木を育て、食糧を生産する農家(林業含む)は、社会になくてはならない存在。これからの時代は再び農家が主役、時代の最前線。これからは、ソーラーシェアリングの普及のお手伝いをしていきたいと考えています。

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2013年

7月

19日

永続敗戦

永続敗戦論
永続敗戦論

 201373日の朝日新聞朝刊のオピニオンで、「永続敗戦」の言葉を初めて聞いた。

 「永続敗戦論」を書かれた文化学園大学助教・白井聡さんの造語で、先の戦争で「敗戦」したにも関わらず、「終戦」としてすり替え、戦争責任をあいまいにしたまま現在に至っている。「敗戦」をなかったことにしていることが、今もなお日本政治や社会のありようを規定している。という。だから永遠に続く敗戦、未だに区切りがついていない、すべて先送りしてきた。

 敗戦後、物も心もぐちゃぐちゃに壊された日本は、アメリカの庇護の基に経済成長に邁進し今がある。敗戦後の日本の領土の画定はアメリカが行い、冷戦時代も今も、日本は実質的にアメリカの占領下にある。沖縄民の土地は二束三文で、米軍に貸しだされている。基地移転も、オスプレイ配備もアメリカの言うなり。いくら、アメリカからの独立を叫んでも、敗戦後の処理を自らやってきていないわけだから、何もできない。

 戦後の経済成長で頑張って、やっと一人前の国になれたと思っていたが、どうやら世界はその様には見てくれていないようだ。中国や韓国などは、「敗戦処理をきちんとやらないで、アメリカの庇護のもとに経済成長してきた敗戦国が偉そうにしている」と考えているようです。

 アメリカが大国だった時代が終わり、中国が経済力をつけてくると、アメリカ主導で決められた領土画定を覆そうと主張し始めている。

 私達日本人は、アメリカ主導の世界のパワーバランスの中で、北朝鮮を冷ややかに見ているが、そもそも北朝鮮は東西冷戦の結果、南北に引き裂かれた訳で、生き残りをかけて必死にあがいている側面がある。北朝鮮にしてみれば、先進国は無尽蔵に格核兵器を持ちながら、北朝鮮には持ってはいけないといわれる。全て戦勝国のルールで仕切られている。拉致の問題は国際犯罪だが、同様の犯罪はどこの国でもやってきたし、今もやっている。

 

 敗戦後、私達団塊の世代は、経済的に豊かになれば幸せになれると信じ、がむしゃらに働いてきたが、高度成長の後の停滞の20年の中で敗戦後を振り返ると、得たもの大きさと引き換えに、失ってきたものの大きさに愕然とする。

 水俣病は、最近の証言映像によると、昭和24年から水銀の毒を海に流し始めていた。にも関わらず、国と自治体首長及びチッソの経営者は、産業の成長を優先し、地元で苦しむ犠牲者を見て見ぬふりをして、切り捨てきた。当時の経済企画庁の課長補佐(故人)は、「産業性善説、国の経済成長を優先させ、地元に犠牲が出ても仕方がない、確信犯」の様な証言もあった。

 又、近年、生活は便利になり物は有り余っているが、格差は広がり、職に就けずに低所得にあえぎ、経済的理由や精神の病から自殺者が増え、人間関係の希薄化が進んでいる。世代間の対立もある。江戸時代までの、貧しかったが人が寄りそって生きてきた時代が懐かしい。

 結果として、戦後70年の経済成長は功もあったが、失ってきたものも大きいと言うことである。これからは、戦前までの良かった所を、全力で取り返しに行かなければならない。それは一次産業の農林水産業を取り返すことです。これまでに積み上げてきた技術をフルに活用して、地産地消、自給自足で、自らの食糧は自分で作る社会を作らねばなりません。現政権の成長戦略でも、農業の抜本的な再構築が取り上げられている。

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2012年

8月

17日

消費では幸せになれない:消費⇒創費

三浦展さんの「第4の消費―つながりを生み出す社会へー」を読んで、今の日本が置かれている状況、敗戦からのこれまでの経済を中心とした社会の進んできた道が整理できた。特に新しい事を云われているわけではないが、三浦さんがパルコで情報発信の責任者として活躍されてきた時の経験と絡めて、描かれており、新しい気づきもあった。

第1次~第4次まで、それぞれの消費社会がなくなるわけではなく、順次積み上がってきている。当たり前のことだが重要である。ライフスタイルの進化とともに、新しい消費社会の比重が高くなっていくわけである。第1次は1912-41年で、第1次大戦の戦時需要で好景気の時、第2次は1945-74年で、戦後の耐乏生活を経て、高度成長期、第3次は1975-2004年で、オイルショックからの低成長期であり、バブルがはじけて、リーマンショックがあって、人口がピークを打つまで。第4次は20052034で、近代になってから先進国が初めて経験する人口減少の社会である。

日本は、戦後の第2次消費社会、オイルショック以降の第3次消費社会を経験してきたが、戦前までに蓄えられたストック、及び戦後の再生への取組の中で蓄えられた物質及び文化のストックがある。又、道路等の社会インフラストックもある。

第4次消費社会は、「個人志向から社会志向へ」、「利己主義から利他主義へ」、「私有主義からシェ志向へ」、「ブランド志向からシンプル・カジュアルへ」、「欧米志向/都会志向から日本志向/地方志向へ」、「物からサービス、あるいは人へ」と変化していく。

今、日本は歴史的転換点にあり、これまで西洋化に舵を切ってきたが、それがピークアウト。これまでに積み見上げてきたストックの上に、世界の模範となる生き方を示すことが求められている。

見境のない発展による見難い姿の公害、狂乱のバブルを経たからこそ辿りつけた今があり、これからはモデルチャンジ、デザインで目先を変えて物を買わせる大量消費時代のマーケティングでは人は反応しない。又、これまでの非正規雇用の様な人を使い捨てる社会であってはならない。金から人へ、物から人へ、人が繋がる社会、誰と出会えたか等、人との関係性が重視されるようになる。正にそういう時代がやってきている。

 

この本の中で、「大衆文化のストック化」の話(P128)があり、「資産が少なければどんどん働いて稼がなければならないが、資産がそれなりにあれば運用益で、がつがつ働かなくても暮らせる。それと同じで文化もフローしかなければ次々と流行風俗、ヒット商品を作りださなければならないが、ストックがあれば、それを使い回すだけでよくなる。企業から見れば、まったくの新製品より、消費者の認知度も好感度も高い。かってのブランドを利用した製品の方が安心して市場に投入でき、売り上げも確実に読めるという効果もある。古い物語の使い回しで充分なのである。」とある、

この話は、「金持ち父さん、貧乏父さん」(ロバート・キヨサキ)、「僕たちはいつまでこんな働き方をするのか?」(木暮太一)にも共通している考え方で、ストックが生み出す価値でがつがつ働かなくても暮らせる。要は、ストックが生み出す上がりと賃労働の組み合わせで余裕を持って働こうと言うことです。このストックが人によって異なるわけで、資格を取ってそのキャリアがストックになる場合もあれば、株や投信、土地、金がストックにある場合もある。経験やノウハウがストックになる場合もある。日本は2次消費社会、第3次消費社会で全体として大きなストックが蓄積されている。それぞれが違ったストックを蓄えているので、それを生かしてがつがつ働かなくてもいい働き方を持つべきである。

 又、ストックの乏しい若者は、まずは就職して、サラリーの中からお金をためてストックを作る。加えて職務を通して経験と言うストックを作る。その結果として、時間を切り売りしてサラリーを得る生活から脱却して、気持ちにゆとりを持って働く生活スタイルに持って行くべきである。日本はそれが可能な先進国となった。

 因みに、私のストックは、物では太陽光発電付きの住宅であり、これにより売電収入があり光熱費削減ができる。又、知識・キャリアのストックで、メルマガでの発信や編集や、省エネの出前授業等により、収入を得ることが出来ている。引き続き第4次消費社会で求められる知識・キャリアのストックをブラシアップして、次世代に残せるストックのあり方を示していきたい。

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2012年

8月

15日

デジタル化

今、日本はもの作りの踊り場で苦しんでいるが、これはデジタル化の流れに拠る必然である。3D CADを使えば、2D図面がなくても、前の3Dデータをコピーすれば同じものが出来る。3Dプリンターでは、デジタルデータがあれば、同じ立体のものがコピーできる。

手書き、アナログの時代は、時間をかけて技を習得しなければ同等のものを作ることができなかったが、今はいとも簡単に作ることができる。シミュレーションも進化し、多くのことが実際に物を作らなくても見極められる。

短時間でデジタル情報が拡散し誰でも同じものが作れるようになった結果、コスト競争の泥沼にはまる。折角新しいものを作っても、優位を保っている時間は短く、集中的な設備投資とか、極端に安い人件費とかにより、後から参入しても短期間に市場を占有してしまうことが出来る様になった。

 

岡野工業の岡野雅行代表社員は、人のできないこと、やらないことに挑戦し、開発に成功すると、それに関わる設備やノウハウは売り渡し、量産はやらない。その売り渡した原資を元に、次の案件に挑戦すると言う。又、利益は一人占めにしないで折半、それで信頼関係を築く。結局、人との付き合いの持ちつ持たれつの関係の所に仕事が入ってくる、情報も入ってくる。

 さらに、「これから生き残るのはローテク」、「誰も真似のできないブランドになってしまえばいい」と言われている。今も社員は4-5人の多能工でそれ以上は増やさない。このやり方は岡野雅行氏にしかできない方法ではあるが、一つのヒントがある。簡単にできることではないが、常に技術を磨いて、オンリーワンであり続ける。岡野工業を核に製造業の信頼のネットワークを構築している。

 

安易なもの作りではコスト競争の泥沼からは抜け出せず、常に倒産を意識しなければならなくなる。岡野雅行氏がやられていることは、高度成長、お金優先、成果主義の前の時代に日本がやってきたことではないか?それは失われた日本の競争力の源泉だったのではないか?

 

デジタル化は止められない流れではあるが、その上に、それぞれが岡野流に対応する得意技をどの様に載せるか?それが課題である。

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2012年

8月

15日

今日は67年目の敗戦記念日

今日は67年目の敗戦記念日、又、独立から60年の節目の年である。「敗戦から7年間の占領時に取られた戦勝国による日本弱体化政策により骨抜きにされた日本、未だ健全な国家の体をなしていない」拉致問題で活躍されている中山恭子参議院議員が産経ニュースで話されている正論である。今、海外から突き付けられている領土の難題も、敗戦後の日本が結論を先送りにしてきた結果である。歴史の証言者が存在するうちに、国民一人一人が正面から立ち向かわないと前に進めない時期がきていると考えます。

 

日本の国際連盟脱退の背景には、満州国をめぐる日中の駆け引きが底流にあり、常任理事国であった日本が連盟を脱退し、世界から孤立したことが戦争に繋がった。歴史の証言の番組では、脱退の道を取らない選択肢もあったようで、敗戦の悲惨さを振り返ると、踏みとどまって欲しかったと思う。追い詰められても孤立の道だけは選んでならない。ことを学ばなければならない。

 

又、マッカーサーが1952年にアメリカ議会で、「アメリカは欧州の圧力に負けて戦争に加担したがそれは間違いだった。」と証言した。又、「日本は資源のない中で生き残るためにエネルギー確保に向かったのであり、欧州の様な侵略や植民地化の意識はなかった。追い詰められて戦争に突入した。」と証言。戦争を始めた日本に非がなかったとは言えないが、今こそ、占領下で取られた日本弱体化政策に向き合い、自主自立に向けて、国民的議論を始めるべきである。

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2012年

8月

14日

山田真哉さんの書いた「経営者・平清盛の失敗」が面白い。

元々歴史学者を目指して進学するも断念して公認会計士になった方なので、歴史についての素養がある方なのでしょうが、経済的な視点から平家の滅亡の原因を解き明かしたところが面白い。

通貨が平家を滅ぼした!と、帯に書いてあるので、それが結論でもいいと思うが、私が気づきを頂いたのは、日本の通貨の歴史である。

和同開珎をはじめとする朝廷が作った12種の貨幣「皇朝十二銭」が廃れて使われなくなったのが900年代後半。以来、物々交換の200年を経て、外国通貨「宗銭」が流通、戦国時代まで約400年間使われた。江戸時代になってから自前通貨が使われるようになった。自前通貨の歴史って、意外と新しいのですね。

*因みに今何かと話題になるギリシャの通貨:ドラクマが生まれたのは、紀元前600-700年頃とのこと。

 

通貨の話し以外では、894年の遣唐使の廃止は、江戸時代より前に起きた鎖国である。歴史は繰り返してきているのですね。

又、平清盛は、博多から京都まで、宗の船が通れるように港湾整備を行って、宗との経済交流を図った。明治維新までは九州が世界の玄関、博多―瀬戸内海―京都の歴史を掘り返していくと、面白いことがたくさん出てきそうで、興味が付きませんね。

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2012年

8月

14日

家電の進むべき道

テレビで放映されている「家電の学校」が面白い。家電大好き人間の司会者がマニアックな番組ですと語っているが、最近の日本の家電の拘りは、「そこまで追求するか」というくらいにすごい。正にガラパゴスに進化した日本の家電である。

又、番組スタッフの拘りで、家電を解体して構造を懇切丁寧に紹介してくれる。元々、技術者の私には面白いが細かすぎて引いてしまう人もいるはず。

最近、一通りの家電の紹介が終わったので、この後、番組がどうなるか解らないが、引き続き別の視点から家電を追い続けて欲しい。

尚、細部に拘り進化した日本の家電ではあるが、日本の冷蔵庫は韓国には受け入れられないと言う。キムチ文化の韓国では、自家製キムチを大量に保管する構造になっていないと使い勝手悪い。

日本人にフォーカスして磨き上げた商品と、世界の各地の生活習慣に合せた家電、これからは両方の視点で物作りを進める必要がある。

その場合、日本向けにきっちり性能を出したベーシック設計(日本で設計&生産)があって、その上で、各地の生活習慣に合せて機能の増減を図る(現地で設計&生産)2段構えが必要。物流費用、CO2削減、内需・雇用の点でも、2段構えの徹底が21世紀のもの作りである。

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2012年

8月

14日

LED電球

最近、省エネの流れを受けて、LED電球への置き換えを検討されている方が多いが、LED電球のパッケージに書かれている注意書きを見て、購入に二の足を踏んでいる方が多いことが解った。

注意書きには、まずは「調光タイプの電球には使用不可」と書いてある。次に「以下の様な所には使わないで下さい」と書いてある。「密閉タイプ」、「熱が籠もる構造のところ」である。

熱が籠もるところで使用されると、半導体であるLEDは寿命が短くなる可能性がある。又、電球と違って、LED電球の発熱部は口金部で、そこに制御回路があり熱が出る。口金部が断熱材で覆われていれば問題が起こる可能性はあるが、消費電力はわずか5W~7W(白熱電球の40W~60W相当)、“なつめ電球”程度の発熱であり、全体が覆われている程度では問題が起こるとは考えられない。

メーカーは製造物責任(PL法)上、免責のために書いていることは理解するが、先のセミナーでは受講者の2/3は、その注意書きを見て購入を断念したとのこと。折角の省エネのチャンスが、みすみす見送られている。勿体ない。

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2012年

4月

30日

日本列島改造計画から40年⇒これからはエネルギー自給を目指す40年

田中角栄の日本列島改造論から40年、元通産事務次官であった小長さんの証言シリーズが、朝日新聞で始まった。

元々、戦後復興で都市に人口が集中し、地方の地盤沈下が進む中で、日本全国に新幹線、高速道路網が張り巡らし、交通インフラを整備することで、格差を是正することが目的でスタートし、今や新幹線はほぼ整備が終了し、仕上げの段階に入っている。高速道路網も、着々と整備が進み、今や渋滞緩和のための第2、第3のルートの整備に入っている。空港も赤字空港と揶揄されながら、整備が進み、健全経営に向けた努力のステージに入った。又、全ての交通手段が、これからは維持、整備の段階に入った。

確かに箱もの行政と呼ばれるように、公共工事優先の面は明らかだが、同時に全国に977か所もあると言われる「道の駅」では、一般道路のところどころに、地産地消のものを商う拠点ができ、老若男女の交流が始まっている。そこに繋がって、若者のIターンも始まっているという。高速道路のSA、PAでは、SA、PAを拠点に、地元の人との交流を進めるEXPASA、NEOPASA、ぷらっとパークが始まっている。道路は、これまでのただ移動するだけの手段から、「道の駅」や、SA、PAを拠点として、地域と繋がり、地域の町興しを進める取り組みが始まっている。

田中角栄さんは、40年前に日本の方向性を示し、日本全体で全力で取り組んできた結果、今がある。とすれば、これからの40年は、エネルギー自給自足の道を進むべきである。

技術立国日本は、原子力を含め、半導体(太陽光発電)、地熱、潮力、ハーベストエネルギー、藻類の活用まで、幅広くエネルギーの獲得に向けて取り組んできた。

原子力は夢のエネルギーであったが、未だ安全の取り扱えるまでに到達できていない事が解った今、再生可能エネルギーに重点をシフトして、大陸棚のガス資源も含めて、エネルギーの自給自足を目指すべきである。これにより、エネルギー資源輸入による持ち出しは軽減され、貿易収支は改善され、むやみな輸出による外貨獲得の必要性は薄らぐ。

これまでは、資源小国日本であったが、これからは資源、食料の自給自足を目指し、貿易で稼ぐから、「自給自足を基本とするもの作り大国日本」を目指すべきである。又、生み出せるエネルギー資源の中で生活する省エネルギー生活への切り替えも重要である。

 

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2012年

4月

18日

先人の築いた「品質」の上に胡坐をかいているわけにはいかない。

品質でも中国に抜かれる寸前となった日本 世界標準化も蚊帳の外に~品質立国の幻影(1

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34599

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34600

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34823

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34957

の連載で、品質立国日本も、急速にその土台が揺るぎ始めているとの事実が突き付けられている。日本は、戦後、安かろう悪かろうから抜け出ようと、デミング賞を目指し、品質改善に取り組んだ時期があった。しかし、日科技連の横暴、怠慢もあって、大手では、1980年代から急速に、デミング賞離れ、QCサークル離れが進んだ。その渦中にいた私の体験でもある。

 

このブログでは、筆者の現場の豊富な体験を踏まえ、たくさんの事が述べられているが、私としては、以下のポイントが気になった。

・契約社員や請負会社に任された国内の製造現場では、責任者を務める正社員が彼らに対して“直接指導”を行うことがままならないという事情がある。

・もともと企業内活動であったシックスシグマは近年、中国、韓国、シンガポールなどでは国策として推進されるほどメジャーかつ汎用化が進んでいる。しかし日本国内においては導入企業数が限られ、啓蒙も不足しており、広くは認知されていない。

・年に1度、シックスシグマだけをテーマにした大会を開いているんですが、去年、南京市でやったそれには約600人も集まりましたから。例えば私が日本で同じテーマのセミナーをやっても、10人集まるかどうかですよ(笑)。日本国内では、もう悲惨なくらい関心が低い。

 

要は、圧倒的な人件費の安さで、製造の海外展開が進む中で、日本の製造現場の品質管理の空洞化が進んだ。一方、中国、韓国、台湾では、日本の品質管理を必死に学び、今は最先端のツールであるシックスシグマで世界をリードしようとしている。

日本がアメリカに学び、アメリカの製造業を衰退化させてきたことと同じことが、既に製造業の品質管理の世界で大きく進展している。

もはや、同じ道には戻れないが、歴史に学び、この状況、この経験を踏まえ、21世紀の知識社会にどう生かして行くか、真剣に考えなければならない。

先人たちの築いた「品質」の上に胡坐をかいているわけにはいかない。

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2012年

4月

09日

ほとんどの日本企業に戦略がない(マイケルEポーター)

ほとんどの日本企業に戦略がない 

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 日本は、継続的改善を真っ先に取り入れ、業務効果の領域で世界的な革命をおこした。その結果、日本製造業は長きに亘って、コストと品質の両方で優位性を享受してきた。

 しかし、日本企業が、本稿で論じるような”戦略ポジション”を明確に確立したことはめったになかった。ソニー、キャノン、セガなどは例外。

 ほとんどの日本企業は、互いにまねし、押し合いへし合いをしている。各社とも、ほぼあらゆる種類の製品、機能、サービスを提供しており、またあらゆる流通チャネルに対応し、どこの工場も同じようにつくられている。このような日本流の競争については、その危険性が理解され始めている。

 共倒れを招きかねない戦いから逃れようというのであれば、日本企業は戦略を学ばなければならない。そのためには、打破しがたい文化的障壁を乗り越える必要がある。

 日本はコンセンサスを重視することで知られ、個人間の違いを強調するより、むしろ調整する傾向が強い。戦略には厳しい選択が求められる。日本人には顧客から出されたニーズすべてに応えるために全力を尽くすという、サービスの伝統が深く染みついている。

 このようなやり方で競争している企業は、そのポジションがあいまいになり、あらゆる顧客にあらゆるものを提供するはめになる。

 ハーバードビジネスレビュー20116月号 マイケルEポーター戦略と競争優位 P65

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 マイケルEポーターは、現在の日本の置かれている状況を、的確に捉えており、大変参考になる。この雑誌の翻訳は、簡潔で理解し易い。

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2012年

4月

09日

マイケルEポーターの「共通価値」(CSV)定義

マイケルEポーターの「共通価値」(CSV)定義

「共通価値」の原則:社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果、経済的価値が創造されるというアプローチである。

「共通価値」は、CSRでもなければ、フィランソロピー(社会貢献活動)でも、持続可能性でもない。経済的に成功するための新しい方法。それは企業活動の周辺ではなく、中心に位置付けられる。

ハーバードビジネスレビュー20116月号 マイケルEポーター戦略と競争優位 P10

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CSRは、(経済的価値を生み出す)企業の社会的責任であり、企業はまず経済的価値の追求があって、それを確保したうえで、余力で社会貢献活動に回す、意味合いで使われている。

マ イケルEポーターの「共通価値」は、企業は、社会的価値の創造を通して、経済的価値を創造すること。としている。

そもそも企業が社会的存在として、許されているのは、社会的価値創造と、経済的価値創造の両方が求められているわけで、極めて当たり前のことである。

この考え方は、明治維新以前の日本には、理念としても存在していたと思うし、日本人の意識の中にも深く刻み込まれている考え方である。しかるに、特に戦後の復興において日本は、この遺伝子をどこかに置き去りにし、ひたすら欧米列強に追いつけ、追い越せで、私利私欲に走って、本来あるべき姿を見失ってきたように思われる。

もちろん私利私欲に走る輩は、いつの時代にも存在するが、特に太平洋戦争から今日までの日本の70年間は、日本人が積み重ねてきた精神性を毀損する、歴史的に異常な時代として、記録に起こると思う。

私を含め団塊の世代は、その真っ只中で生きてきたわけで、是非、戦前までに築かれてきた、日本の素晴らしい精神性を発掘し、再評価し、次世代に継承していきたいと考える。

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2012年

4月

09日

アメリカ元副大統領のアル・ゴアさんが「持続可能な資本主義」という新モデルを立ち上げた。

アル・ゴアとゴールドマン・サックスの元CEOデービット・ブラットが資産運用会社ジェネレーション・インベストメントを創設した。

現在の危機の源は、第2次世界大戦後に欧米と日本を高度成長させた経済モデルが時代に合わなくなったことと、生産と消費の中心がアジア、特に中国にシフトしつつあることである。

深刻な危機を打開し、無限の可能性を切り開くには、長期的な視点での思考が必要。「地球を脅かす破滅的な危機は、気候変動、水資源の枯渇、貧困、感染症、所得格差の拡大、都市への人口集中、市場の大幅な変動など。未曾有の危機を克服するために必要な資本の大半は、最終的には企業と投資家が動員することになる。

企業や投資家がすぐに採用すべき5つの重要アクション。

    “ストランデッド・アセット(取り残された資産)”の価値を算定し、財務諸表にいれること。ストランデッド・アセットとは、「炭素排出や水の消費のコストを算定すると、数字が変わる可能性がある資産」のことである。

    国際統合報告委員会(IRS)が推奨する環境・社会的コストを組み込んだ会計報告を企業に義務づけること。

    四半期ごとの業績報告を廃止すること。「投資家も、より長期の、より意義のある企業努力を評価するべきだ」。

    上級管理職の報酬体系を持続可能な実績に報いるものに改善すること。

    “ロイヤリティー・ドリブン(忠誠心を育む)“証券を発行し、長期投資に経済的なメリットがあるようにすること。「市場の評価が激しく変動し、長期的な価値創出を目指す経営陣の足を引っ張っている」。

 

資本主義の再構築プロセスは、今後20年、50年続く可能性もある。

 

日経エコロジー3月号P75 Byジョン・エルキントン(英、研究機関、サステナビリティ社の共同創業者兼エグゼクティブ・チェアマン。企業の社会的責任や持続可能な発展に関する権威。)

――――――――――――――――――

今、世界を混乱に陥れている、「短期的な利益を求めるマネーゲーム経済」を諌めることを、具体的な制度として提案されている。このような提案がアメリカから発せられ、英国人の記事で知ることになることが悔しい。

マイケルEポーターも、ハーバードビジネスレビュー誌の中で、短期的な利益を求めるマネーゲーム経済を見限る発言をしており、既に欧米の知識人の間では大きな流れになっている。

日本のエコノミストからも、このような視点でのオリジナルな提案が出てきて欲しい。

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2012年

4月

08日

人口減を受けて、経済が縮小することを前提とした家計の財務計画が必要です。

 日経新聞の、新しい日本のあるべき姿を考える「未来面」プロジェクトで、「安心して長生きできる日本を始めよう」のテーマで、アイデア募集があり、応募しました。

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 2005年から人口が減り始め、家も余り始めました。政府、経済界のリーダー達は、立場上プラスの経済成長を口にするが、実態経済は人口減もあって確実に縮んできています。経済が縮んでいるから正規、非正規を問わず給料は減少します。収入が減少するの中でも豊かさを実感できる生活設計が必要です。
 収入減少の中でどのような生活を目指すか?それは親と同居する。塾通いはしない。食べ物は自分で作る。発電所になる。です。

幸い、日本はこれまでの努力の結果、インフラが蓄積されてきました。家は余っています。親と同居で2所帯住宅に建替えれば一から土地を手当するより安上がりです(コンパクトシティ構想に合致)。
学校は、塾通いをして偏差値を争い、進学するのはお金の無駄です。本当に優秀で、勉強したい人がいけばいいのです。これからは、進学に投資してもそれだけのリターンは見込めません。若者は早い段階から社会にもまれながら得手、不得手を見極めて自分の職業を決めていけばいい。今はSNSも発達してきたので、社会と交流する上でも地方のハンディーは少なくなってきました。
野菜は自分で作りましょう。これからは世界的な食糧不足で、輸入食材が手に入りにくく、高くなります。耕作放棄地を借りて自分で作る。自産自消です。ミニ野菜工場も視野に入ってきました。

④再生可能エネルギー発電に投資すれば光熱費を削減できます。個人が自宅で収入を得る手段が出来たのです。

 以上で、生涯で必要となるお金は、これまでの5-6掛けが可能となる。要はこれまでの常識を捨てて自分の頭で考えて新しい生活スタイルを設計すればいい。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 アイデアを募集のキーワードは「安心長寿大国」でしたが、これからの時代は、若者が安心して子育てをできる社会が必要です。その観点で、上記の内容としました。

高度成長期から今日までの間に、沢山稼いで、沢山使う、生活習慣が身についてしまいました。戦後の廃墟の中から家を立てるのが男は甲斐性とされました。最高学府に入れれば子供の幸せが約束される。との前提から、それらを実現するために、沢山のお金が必要となり、家庭生活を犠牲にして、必死で働いてきました。

高度成長の過程で公害を経験し、列島改造計画がありました。それからバブルがはじけて、20年の停滞期があり、東日本大震災があり、今があります。

ここに至って問題となるのは、日本は、未だに右肩上がりの成長の幻影から意識が抜け出せていないことです。

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2012年

4月

05日

ものつくりの置かれている状況

小川紘一[東京大学ものづくり経営研究センター特任研究員]の談で、

 日本メーカーが研究開発した技術が、新興国に伝搬するスピードが加速している。技術がマイコンの組み込みソフトや、製造装置の中に蓄積され、新興国に流通するようになったからだ。マイコンを自社のデジタル機器に内蔵したり、工場に外国製の製造装置を設置したりすることで、新興国のメーカーは技術開発に時間をかけることなく、短期間にキャッチアップすることが可能となった。ー後略ー

http://business.nikkeibp.co.jp/article/NBD/20120324/230212/?mlp&ST=pc

 デジタルの環境下では、製造設備を買って、スピードを上げればシェアをとれる。日本は、何故技術力が優れているのに、シェアが取れないのか?まだ、誰も応えを持っていない。それぞれの持ち場で見つけるしかない。

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2012年

3月

30日

【共創オープンフォーラム・ヨコハマ 2012】@パシフィコ横浜 会議センター5F

【共創オープンフォーラム・ヨコハマ 2012】@パシフィコ横浜に参加しました。http://www.youtube.com/watch?v=3r_KBZD7HSM
 この動画は、横浜市 政策局共創推進室長の薬師寺えり子さんによる、最後の締めの挨拶です。横浜市も事ある毎に「行政はお金がない」と言われており、企業、NPO、個人等を巻き込んで活性化に繋げたいと、色­々な試みを行っている。
 このような取り組みも、SNS等を活用して市民に浸透させ、どんどん人を巻き込んでいく必要があります。
http://www.youtube.com/watch?v=3r_KBZD7HSM

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2012年

3月

29日

YESシェア・ミーティング~YES協働パートナー情報交歓会~@関内

YES
YES

YESシェア・ミーティング~YES協働パートナー情報交歓会~@関内が、TVKの入居するビルで開催されました。70名程度の参加者があり、エコに感心の高い方々との今後の交流が楽しみです。

http://www.city.yokohama.lg.jp/ondan/yes/

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2012年

2月

07日

日本の20年の停滞

 昨今、EUの通貨危機があり、日本の借金の問題もあり、国家の破綻の可能性が高まってきている。

 日本が高度成長をなしえ、世界の優等生であったはずなのに、20年に亘る経済の停滞・デフレ、小子化・高齢化による人口減、長く輸出の牽引車であった自動車・家電の停滞、で苦しんでいる。

 そこに3.11の東日本大震災があり、原発に依存したエネルギー政策は破綻し、新たなエネルギー戦略が必要となっている。また、地震・津波対策についても抜本的な見直しが突き付けられている。

 6重苦とか呼ばれ、出口の見えない状況が続いているが、これらには全て原因があり、その結果として現在があるはずである。これらに対し、新聞等で専門家の意見を聞いていても、部分的な説明に終始しており、何故こうなったのか、どうすればいいかが見えてこない。

 グローバルな金融への流れが、今の混沌とした時代を作っているわけだが、色々考えていると、一つの仮説が想い浮かんだ。それは、日本は結局「デジタル化で、遅れをとってきたし、今も遅れをとっている。」ということ。

 日本は、1980年代までのアナログの擦り合わせ技術が優位だった時代は、日本の均質で、お互いを助け合う国民性が優位に働き、圧倒的な国際競争力を持っていた。

 しかし、まず家電が、デジタル化、電子化によって、コモデティー化が進み、装置産業になった。装置に投資して、短期に市場を占有、価格を握る。また、車は擦り合わせ技術の得意な日本が有利な産業とされていたが、これとても、デジタルの3D CAD化により、コモディティー化が進み、家電と同様の状況を迎えつつある。

 私の論拠は、サラリーマン時代に、今をときめく、シリコンバレーのIT化、デジタル化を、肌で感じてきた事がベースにある。正に団塊の世代で、高度成長を担って、昼夜を分かたず、アメリカおよびシリコンバレーの技術をキャッチしようと、懸命に働いた。今騒がれているスティーブ・ジョブスは超一流のビジネスマンであるが、新しいものは生み出していない。ジョブスはゼロックスのパラアルト研究所で生まれたGUIに目を付け取り込んだ事は周知の事実。

 ゼロックスのイサーネット、GUI等のソフトウエアに限らず、今のIT社会のインフラになった多くの部分はアメリカ、シリコンバレーから生まれている。シミュレーションソフトを含め、日本は、専らそれらをほぼ只で、懸命に取り込み、経済競争力を付けてきた。

  日本は、1970年代は、アナログのものつくりの世界でキャッチアップしてきた。1980年代はデジタルのものつくりの世界で、アナログ時代に培った技術をベースにアメリカ、シリコンバレーをキャッチアップしてきた。

 しかし、デジタル時代は、コモディティーが進み、台湾、韓国を筆頭に、新興国が装置に集中投資し、短期間に追いついてきた。既にコストで優位性がなくなった結果、日本の今の苦境がある。

 要するに、今現在も、アメリカ、シリコンバレーのキャッチアップに追われているわけで、未だ世界に貢献する新しいビジネス分野を切り開けていない事が真の停滞の原因である。とすれば、今の苦境は当たり前で、日本がNO.1なんてあり得ない。

 

 そこで、これらのことをしっかり認識した上で、3.11を受けて、世界に貢献できる価値に取り組む必要がある。

 その中の一つとして、 現在普及が進められている、福岡スマートコンソーシアムや横浜スマートコミュニティが進めるモデルベース開発手法を活用した電源制御システムの構築法がある。

 スマートハウスやスマートコミュニティの実現には、太陽電池や風力発電などの再生可能エネルギーや燃料電池といった「創エネ」と、家庭用蓄電池やEVPHEVなどの「蓄エネ」を高効率に連係させるためのエネルギー・システム開発が不可欠です。ただ、複数のエネルギー変換ユニットを連携させながら、安定性と信頼性が高い自律的なシステム構築には、膨大な時間をかける必要がありました。

 本取り組みは、パワーを扱い精緻な制御が必要な設計部分にモデルベース開発手法を取り入れ、制度の高い設計を、短期間に実現可能とするものである。モデルベース開発ツールはドイツのものだが、このような分野に活用し、新しい価値を生み出す取り組みをどんどん進めるべきである。私に何が手伝えるか、一生懸命考えている。

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2012年

1月

30日

YSC(横浜スマートコミュニティー)と福岡スマートハウスコンソーシアムの合同セミナー

見学会&合同セミナー
見学会&合同セミナー

YSC(横浜スマートコミュニティー)と福岡スマートハウスコンソーシアムの合同セミナーが福岡で開催され、参加した。中型企業、小型企業が手弁当で寄り集まって、今後のスマートハウス、スマートコミュニティーの実現に向けて動き出している。

今回は全国各地から約200名の参加者を得て、盛りだくさんのプレゼンテーションが行われた。当日は、多彩な企業の夫々の取組みの紹介があった。特にアバール長崎のデモ、プレゼンテーションは興味深いものでした。

まだ、連携の形、成果の方向は見えないが、個々の企業が横に繋がって、新しい付加価値を作り込もうとしている最中である。

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2011年

10月

05日

震災後のエネルギー戦略と都市のスマート化

東工大・先端エネルギー国際研究センター(AESセンター)の第2回シンポジュームが、9月28日くらまえホールで開催された。

第1回は、東日本大震災の前日の3月10日であった。その時点では、原発で電気エネルギーの50%確保することを前提にエネルギー政策が組み立てられていた。

それを前提に、低炭素社会に向けた取り組みが語られ、柏木センター長からは、その日の午前中に、「再生可能エネルギーの買い取り制度案」が閣議決定されたとの報告があった。

その後、再生可能エネルー買い取り制度原案は多くの裁量の余地の分を付加されて、一部骨抜きになって、法案化された。変更内容については、9月23日の毎日新聞の論点で、柏木センター長が解説されている。

 

<シンポジュームの狙い>

 3月11日の東日本大震災とそれに伴う福島第1原発事故は、人の絆や地域、産業活動や社会、文化の在り方まで、日本の姿をがらりと変えるほど大きな衝撃をもたらしました。とりわけ日本のエネルギー戦略と電力需給の在り方は、大きな見直しを迫られています。そのとき新しいエネルギーシステムのキーワードになるのが「分散型ネットワーク」と「スマート化」です。

 東京工業大学ソリューション研究機構の先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)は、エネルギーの大消費地である都市のスマート化について、実現の方策や日本のエネルギー戦略の中での位置づけなどの議論を深めるために、3月10日に開催した第1回に続き第2回シンポジウムを開催します。産業界をはじめ各分野の専門家を招き、講演・パネル討論を催すとともに、低炭素社会の実現を目指すAESセンターがこの分野にどう取り組んでいるかについても報告します。

 

<講演プログラム>

13:30 開会挨拶 柏木孝夫 先進エネルギー国際研究センター長
 「震災後のエネルギー戦略とAESの役割」
14:00 基調講演 村上周三 (独)建築研究所 理事長
 「サステナブル時代の都市づくりと日本再生」
14:45 講演 渡邊 宏 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 理事
 「スマートコミュニティの現状と将来展望」
15:45 パネル討論
 「スマートコミュニティをどう実現するか」
 パネラー: 高野之夫 豊島区長(議会出席のため、メッセージのみ)
        竹中章二 東芝 スマートコミュニティ事業統括部執行役常務待遇首席技監
        中井検裕 東京工業大学 教授
        一色誠一 JX日鉱日石エネルギー 専務執行役員社長補佐
        筒井清志 NTTファシリティーズ 代表取締役副社長
        村木 茂 東京ガス 代表取締役副社長エネルギーソリューション本部長
        小島信明 三菱商事 常務執行役員地球環境事業開発部門CEO
 コーディネーター:中上英俊 東京工業大学 特任教授 / 住環境計画研究所 代表取締役所長
17:35 総括 平井秀一郎 東京工業大学教授

 

基調講演で、基礎研究所理事長・村上先生は、まとめとして

1.低炭素化の制約の下でのQOLの向上

・20世紀型の大量消費文明の克服

・核エネルギー利用縮減という新たなトレードオフ問題の発生

2.サステナブル時代の都市づくりに求められる価値観の転換

・ハード、ソフトの両面からの超省エネ型ライフスタイル

・キーコンセプトとしての、スマート化とスリム化

3.日本再生に向けて、スマート化/スリム化の理念に基づく新しい都市づくり

・環境未来都市構想への期待

 

講演で、NEDO渡辺理事は、

スマートコミュニティー実現のためには、

・これまでの要素技術開発に加えて、情報通信技術、新エネルギー・省エネルギ-技術、エネルギー貯蔵技術など様々な分野を横断的に融合させて、一つのパッケージとして展開していくことが必要。

・個別技術やそのすり合わせによる最適化は日本産業界の得意分野。

・スマートコミュニティーの形は、政治・経済・産業の状況、そこで暮らす人々のライフスタイルや文化、地理・気象条件など、国・地域ごとに多種多様であり、特性に合わせた実証が重要。

・NEDOは今後も、国内外で様々な形での実証を手がけていく。

⇒スマートコミュニティー(JSCA)を中心として、情報・通信、電気機器、電力・ガス、自動車、建設、商社、、自治体、大学等の関係団体での連携を強めて、海外へ展開していくことを期待。

 

パネルディスカッションでは、

「スマートコミュニティをどう実現するか」の観点で、各界を代表する経営責任者の方々から取り組みの紹介があった。

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2011年

10月

04日

東日本大震災を受けての緊急BCPセミナー

http://www35.jimdo.com/app/s5a3cd17cc7e20cdf/pa62aaf7ac2a5f380/?new=1#permalink

 

13:3014:30

01

建物の安全をどう考えるか

東京大学 新領域創成科学研究科
社会文化環境学専攻 教 授 神田 順 氏

14:3015:30

02

東日本大震災を経験して、BCPのあり方を考える

株式会社タイセイ総合研究所 工学博士 技術士 一級建築士
認定ファシリティマネジャー 技術顧問 大沢 幸雄 氏

15:4016:10

03

企業が取組むべきBCP(事業継続)とは

リコージャパン株式会社  オフィスイノベーション事業本部

CIS事業センター 商品企画室 磯崎 文之 氏

16:1016:40

04

BCPと地盤液状化リスク

株式会社アースアプレイザル
CFO/
不動産鑑定士 取締役 山縣 滋 氏

16:4017:10

05

平成の三陸大津波被害とBCP

岩手県建築士会盛岡支部副支部長
和見設計舎 一級建築士 代表 中村 孝幸 氏

17:2017:50

06

東日本大震災におけるBC活動の事例

株式会社NTTファシリティーズ
BCP
ビジネス本部 コンサルタント 佐藤 沢 氏

17:5018:20

07

インテル株式会社のBCP

インテル株式会社 つくば本社
コーポレート・サービス・ジャパン/コリア・マネジャー 大森 崇史 氏

18:2018:50

08

病院BCPとファシリティマネジメント

JFMAヘルスケアFM研究部会長
上坂 脩 氏

18:5019:20

09

東日本大震災の教訓をふまえて ~首都圏災害を乗り越える 事業継続のポイント

JFMAリスクマネジメント研究部会長
株式会社セノン 執行役員企画部長 上倉 秀之 氏

10月3日 江戸川区タワーホール船堀で、13:30-19:20の長時間に亘り、東日本大震災を受けてのBCP、BCMへの取り組みの紹介がありました。

 

岩手県建築士会盛岡支部副支部長の中村 孝幸様のプレゼンでは、調査に訪れた岩手県の各地の生々しい写真が大量に公開され、涙をこらえながらの映像紹介には、聞いている方も辛いものがありました。

 

又、株式会社タイセイ総合研究所の大沢 幸雄様からは、中小企業向けの、全16ページのBCP標準版(あいちモデル)が紹介された。簡潔で、無理なく構築できるBCPモデルである。

ダウンロード可との事で、今後、活用の検討を行っていきたい。

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2011年

10月

02日

北杜メガソーラー及び浅川太陽光発電所見学

昨日、CELC(クリーン・エネルギー・ライフ・クラブhttp://www.celc-pv.com/)主催の、メガソーラー&農地太陽光発電所見学会に参加してきました。

CELCの役員さん達の臨機応変で丁寧な進行と、浅川太陽光発電所長のサービス精神旺盛な説明のお陰で、北斗サイトのメガソーラーや、農地太陽光発電所の実態を理解することができました。

 

写真は、八ヶ岳を背景に、稼働する北斗メガソーラーです。

 

北杜大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究

http://www.city.hokuto.yamanashi.jp/komoku/shisei/ondanka/1305816924-38.html#13058170228

 

又、浅川太陽光発電所のHPです。

http://www.mt8.ne.jp/~sun/

 

↓↓ は浅川太陽光発電所の取り組みが紹介された動画です。

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=cQXG8sLQuKk#!

(平成23年9月7日放送「ウッディ発!山梨でエネルギーを創る」テレビ山梨 より)

 

 

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2011年

9月

26日

2011・国際森林年

2011・国際森林年のロゴマークです。人間を真中に、生物多様性を木が支えているデザインになっています。東日本大震災の地震、津波、原発事故を踏まえ、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」に向けて対応を加速するスタートの年になりました。

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2011年

9月

26日

東京国際環境会議2011

【速報】東京国際環境会議、「サステナブル社会」を議論http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110921/108461/?mail

去る9月21日に開催された、東京高裁環境会議2011「サステナブル社会への低減」に参加してきました。順序は少し入れ替わってますが、以下の内容が紹介されました。

・住友ゴムからは、低燃費タイヤの開発への取り組みの紹介あり。①100%石油外天然資源タイヤ(2013年発売)、②50%転がり抵抗低減タイヤ(2015年発売)、③ランフラットタイヤ:パンクで空気圧”0”でも80km/hで、80km走行可能タイヤ。

・サントリーからは、水を守るため、涵養林を育て、放置されている里山の保全に取り組み。

・三井物産からは、森を手入れし、チップ、ペレットとして冷房、暖房への利用の取り組み。

・レモンガスからは、LPガス+太陽光発電のコ・ジェネ住宅(戸建、集合)への取り組み。

・マツダ自動車からは、内燃機関の燃費向上への取り組み。

・林野庁からは、戦後の先人たちの森林造成の努力により、森林率は30%→68%に向上、維持されている。問題は利用が少なく、手入れが遅れている。国際森林年を迎え、木づかい(木を使う、気遣う)運動を展開する。我が国における木材利用の可能性について。

・早稲田大学より、シェールガスを睨んだ天然ガス自動車のポテンシャルについて。

・最後に、武内和彦教授より、自然共生社会とグリーンエコノミーのタイトルで、東日本大震災からの震災復興と自然共生社会を絡めての、今後の国連生物多様性活動の今後の予定について。

 

当初、満席の予定が台風の影響で残席もあったが、台風直撃の夕方も半数の200人程度は残り、関心の高さが伺われた。台風のお陰で、電車が動かず、帰宅時間はは予定の3時間となってしまったがーー。画像は会場に展示されていた、世界最速コンピューター「京」のモジュールです。

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2011年

9月

15日

太陽光発電システムの紹介です

 200710月から太陽光発電システムを導入し、発電事業者になりました。以来、毎月の電力使用量、電力発電量、売電(電力量、電気料金)、買電(電力量、電気料金)のデータを採り続けています。2009年の4月から、売電料金が48/KWHになったため、2010年度は、我が家の光熱費を、はぼ”0円”にすることが出来ました。2011年度は緊急節電もあり、売電料金>買電料金が見込まれ、光熱費を払うから、売電で収入が得られる見通しです。

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2011年

9月

15日

最近購入した、EVリーフの紹介です

 リーフの加速性能は、アメ車の5-6カーの感覚です。静かで、快適です。

リーフは、国、県、市の補助金で引き算すると、250270万円程度で買えます。
 これは補助金込みの車両価格になるのですが、取得税等が免除されるので、車両価格=必要費用です。

更 に、5年間車両税がかからないので、20万円程ガソリン車に比べ安くなります。

私の場合は、13年目の買い替え時期だったので、予定通りEVにしましたが、
皆さんも検討してみませんか。

 

燃費(電費)

走行費用

単価

ルネッサ(2

8km/

20/km

150

EVリ-フ(1.5のボディー)

7km/KWH

1/km

3/km

KWH7.3

冷暖房を使わない春秋は更に安上がりになります。楽しみです。
*尚、当面の課題 は、急速充電スタンドの普及です。
今のところ高速のSAに急速充電スタンド少ないので、長距離は無理です。
東名高速だけがSAの3個置きに急速充電スタンドがあります。

 

又、自宅車庫での充電は、まだ慣れないせいか面倒です。
非接触充電の時代が待ち遠しい。

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海老名市森の楽校

【天然ガスと横浜スマートシティープロジェクト(YSCP)を学ぼう】

11月17日、YES(横浜・エコ・スクール)主催で、表記のセミナーが開催された。会場は東京ガスの根岸工場。

①液化天然ガスから都市ガスを製造・供給する工場の見学、

②YSCP(横浜スマートシティープロジェクト)の概要説明、

③YSCPにおける東京ガスの取り組み、を確認させていただいた。

・東京ガスは1885年に創立、ガスの最初の用途はガス灯であったが、以来、エネルギー源として、首都圏に安定的に都市ガスを供給すべく、着実に取り組まれてきた、東京ガスの歴史の紹介があった。

・YSCPの概要説明では、プロジェクト推進課長から、YGP(横浜グリーンパワー)モデル事業開始の紹介がありました。

YGPモデル事業は、PVとHEMSの導入促進に補助金(20万円/件)を出す制度で、横浜エリアの一般家庭から応募(1000軒:年内に募集)、施工は順次工事業者が請け負うことになります。

同様の仕組みが神奈川県(黒岩知事)でもスタートします。

 

永続敗戦論
永続敗戦論

【永続敗戦】

201373日の朝日新聞朝刊のオピニオンで、「永続敗戦」の言葉を初めて聞いた。

「永続敗戦論」を書かれた文化学園大学助教・白井聡さんの造語で、先の戦争で「敗戦」したにも関わらず、「終戦」としてすり替え、戦争責任をあいまいにしたまま現在に至っている。「敗戦」をなかったことにしていることが、今もなお日本政治や社会のありようを規定している。という。だから永遠に続く敗戦、未だに区切りがついていない、すべて先送りしてきた。

敗戦後、物も心もぐちゃぐちゃに壊された日本は、アメリカの庇護の基に経済成長に邁進し今がある。敗戦後の日本の領土の画定はアメリカが行い、冷戦時代も今も、日本は実質的にアメリカの占領下にある。沖縄民の土地は二束三文で、米軍に貸しだされている。基地移転も、オスプレイ配備もアメリカの言うなり。いくら、アメリカからの独立を叫んでも、敗戦後の処理を自らやってきていないわけだから、何もできない。

戦後の経済成長で頑張って、やっと一人前の国になれたと思っていたが、どうやら世界はその様には見てくれていないようだ。中国や韓国などは、「敗戦処理をきちんとやらないで、アメリカの庇護のもとに経済成長してきた敗戦国が偉そうにしている」と考えているようです。

アメリカが大国だった時代が終わり、中国が経済力をつけてくると、アメリカ主導で決められた領土画定を覆そうと主張し始めている。

私達日本人は、アメリカ主導の世界のパワーバランスの中で、北朝鮮を冷ややかに見ているが、そもそも北朝鮮は東西冷戦の結果、南北に引き裂かれた訳で、生き残りをかけて必死にあがいている側面がある。北朝鮮にしてみれば、先進国は無尽蔵に格核兵器を持ちながら、北朝鮮には持ってはいけないといわれる。全て戦勝国のルールで仕切られている。拉致の問題は国際犯罪だが、同様の犯罪はどこの国でもやってきたし、今もやっている。

 

敗戦後、私達団塊の世代は、経済的に豊かになれば幸せになれると信じ、がむしゃらに働いてきたが、高度成長の後の停滞の20年の中で敗戦後を振り返ると、得たもの大きさと引き換えに、失ってきたものの大きさに愕然とする。

水俣病は、最近の証言映像によると、昭和24年から水銀の毒を海に流し始めていた。にも関わらず、国と自治体首長及びチッソの経営者は、産業の成長を優先し、地元で苦しむ犠牲者を見て見ぬふりをして、切り捨てきた。当時の経済企画庁の課長補佐(故人)は、「産業性善説、国の経済成長を優先させ、地元に犠牲が出ても仕方がない、確信犯」の様な証言もあった。

又、近年、生活は便利になり物は有り余っているが、格差は広がり、職に就けずに低所得にあえぎ、経済的理由や精神の病から自殺者が増え、人間関係の希薄化が進んでいる。世代間の対立もある。江戸時代までの、貧しかったが人が寄りそって生きてきた時代が懐かしい。

結果として、戦後70年の経済成長は功もあったが、失ってきたものも大きいと言うことである。これからは、戦前までの良かった所を、全力で取り返しに行かなければならない。それは一次産業の農林水産業を取り返すことです。これまでに積み上げてきた技術をフルに活用して、地産地消、自給自足で、自らの食糧は自分で作る社会を作らねばなりません。現政権の成長戦略でも、農業の抜本的な再構築が取り上げられている。

スカイツリー
スカイツリー

【隅田川クルーズ】

11月16日、隅田川クルーズを体験しました。浅草の東橋から12個の橋を潜って日の出桟橋まで下ります。

 

http://www.youtube.com/watch?v=N3mGks6BLIE

【かわさきサイエンス&テクノロジーフォーラム2011

1115日、KSPで太陽光発電セッション-太陽光発電の将来とビジネスチャンスーのテーマで基調講演、及び、パネルディスカッションが行われた。
基調講演は、東大総長室アドバイザーの村沢義久さんより、電気自動車と太陽光発電による「燃やさない文明(化石燃料を燃やさない)」の話があった。

 太陽光発電のコストは急速に下がってきており、グリッドパリティー(=購入電力料金と同等の発電コスト)は目前、これを促進してエネルギーを確保する方向。車には石油資源の枯渇対策も必要であり、EV化を進める必要がある。メガーソーラーとEVでスマートグリッドが実現する。太陽光の発電量の変動に対応するためには蓄電池が必須。EVの電池はその一部となる。

パネルディスカッションでは、①太陽光発電の将来像と日本の取るべき戦略(カネカ・大和田善久さん)。②”車+電池”で社会が変わる(三菱自動車・木野耕さん)。③太陽光発電の将来とビジネスチャンス(株イスズ・鈴木和彦さん)。④太陽光発電の将来とビジネスチャンス(NPO法人ワット神戸・津田久雄さん)。ショートプレゼンの後、ディスカッションとなった。

それぞれ、今後の新エネルギーの展開における、大変興味深い話でしたが、ここでの紹介は割愛します。

 

【マイクロモノづくり 事業計画発表会】

11月12日、表記の発表会に参加した。これからマイクロモノつくりの起業を目指す若手が作った事業計画に対し、人生経験豊富な方々(年配者?)が計画内容に対しコメントをする形で進行した。

斬新な若手の発想を拡げ、更に発展させるような意見交換もあり、多くの気付きが生まれる空間であった。内容については割愛します。

 

【假屋崎省吾の世界】

11月12日、目黒雅叙園の百段階段(東京都指定有形文化財)で、華道家・假屋崎省吾のー花の絆ー展を見学した。

花もさることながら、百段階段が繋ぐ7つの部屋が見ごたえあった。昭和10年築の木造建築で、部屋には日本画、組子の建具、破格の装飾がなされている。

桃山文化、日航東照宮の系列、あるいは、歌舞伎に見られる江戸文化に属するものと言われているとのこと。

 

【C&Cユーザーフォーラム】

11月11日、特別講演6で、元東レ経営研究所所長、現特別顧問 佐々木常夫さんのお話があった。

お子さんが自閉症で、奥さんも入退院を繰り返す中で、家族の面倒を見ながら、社長業を両立させた壮絶な生活の紹介であった。

戦略的計画立案により、仕事を半減させる。最初に全体計画を描き出す。

要は最初に計画を考え抜いて、実行が始まったら無駄な打ち合わせや会議をやらず、一気にやってしまう。時間を捻出するために無駄を削るマネージメント手法をどこで身につけたのか?徹底されている。

その猛烈な会社員人生の経験を踏まえて、「働く君に送る25の言葉」が、佐々木さんの本で紹介されている。

 

又、当日のメインステージでのプレゼンテーションの動画です。

NECの方向性を、ここに視ることができます。↓↓

 

【映画を通して考える 再生可能エネルギーシンポジューム】

~これからの日本(くらし)と再生エネルギー~@お台場シネアメディアージュ

11月6日、お台場で、大学生、若者が作成した映画(ショートフィルム)を通して「明日のエネルギー問題を考えよう」との催しがあった。

若者が製作したショートフィルムに対し、映画監督の崔さんが突っ込む形で進行され、映画製作素人の私には理解できないところがあった。

基調講演の経済産業省・省エネルギー対策課長・村上敬亮さんの解り易い説明や、パネルディスカッションでの説明&解説を聴き、これからのエネルギー問題を考える上での、色々な示唆を与えてくれました。

通常の、省エネ/創エネ/畜エネや、スマートシティ/スマートコミュ/スマートグリッドの議論とはちょっと違った視点で見ることができました。

世の中の、色々な分野の方々が、真面目に、ひたむきに取り組まれていることを知ることができ、感謝です。

 

JFMAのホームファシリティーマネージメント】

11月4日、JFMA主催のホームファシリティーマネージメントに参加した。

2007年に住宅のファシリティーマネージメントガイドラインが作られており、今回は、3.11を受けて、改めてそのガイドラインに光を当てようとの試みである。

3.11の地震・津波・原発事故による節電、への対応を含み、加えて住宅に求められる機能、性能としてのバリアフリー、防犯、シックハウス等、の項目が網羅されたガイドラインになっている。

これまで、それぞれの業界がバラバラに取り組んできたことが、地震、津波への対応、省エネ対応で、「垣根を越えて、お互いが持つノウハウを共有しよう」という流れになってきている。

セミナーに参加されていた方の中に、新しい出会いもありました。

 

1枚ガラスは、「風」は遮ることはできるが、「熱」を遮る事はできない。3.11を受け、省エネ、断熱を考えた時、これまでの単層ガラスは、非常識。最低空気層を挟んだ2枚合わせガラス、できれば3枚合わせガラス、且つ、壁の断熱も重要。ホームファシリティーマネージメントと省エネは密接に繋がってきた。

 

【宮が瀬ダムの観光放流】

11月3日の祭日、宮が瀬ダムで観光客のために、4分間の放流がありました。↓↓

 

 
江戸・TOKYO-技とテクノの融合展2011
江戸・TOKYO-技とテクノの融合展2011

【江戸・TOKYO-技とテクノの融合展2011

11月2日東京フォーラムで展示会があり参加しました。小間に展示されている中小企業の方から招待状を頂き、展示会の名前に惹き付けられて、初めて参加しました。

時間がなかったので、展示会場の見学はそこそこに、坂本光司先生の講演「日本でいちばん大切にしたい会社」を聴いてきました。

内容は、同名の本で紹介されている、中小企業の従業員をとことん大切にする会社のお話でしたが、感動で涙が止まらず困りました。世の中には、日本には、素晴らしい経営者がいて、素晴らしい会社が存在するんですね。早速、本を取りよせて、その1、その2で紹介されているエクセレントな中小企業の経営を教えてもらいました。

エクセレントな中小企業に共通しているのは、「人それぞれの得手を活かし、不得手な部分は機械やツールでカバーし、徹底的に人を活かし切っている」事かなと考えます。5体満足も、障害者も優れた点を持っており、トータルの能力は変わらない。

実はそこまで行きつくのが大変なのですが、21世紀は、テクノロジーが、人間の不得手部分をカバーできるようになってきているのだから、人を徹底的に大切にする視点を極めて行くと、オンリーワンの競争で「相手を蹴散らす経営」をしなくても良くなるのでは?そんな気がしています。

因みに、私の場合は、字が下手で、文章の構成が不得手でした。そのため、鉛筆書きの原稿は書いては消し、消しては書いての繰り返し、その点では、私の文章の生産性は、10倍から100倍に上がってます。文章を書くことにハンディーのある人間が、ワープロやPCというツールを活用することで、ハンディーのない人と同等の成果を出すことができるようになったのです。

このような事例は周りにゴロゴロ転がっていますので、それらを拾い上げるだけでも、夢の持てる明日が見えてきます。

 

20111025 光と風の研究所 所長 堀内道夫さんの講演】 

イントロ部分の動画です。↓↓

http://www.youtube.com/watch?v=ZEbKb-2Nhvs

堀内道夫さんは、太陽光発電システムを、国の補助制度を受けて自宅に設置された第1号ユーザーである。当然、それ以前からも、光と風を含む自然エネルギーの活用に取り組まれている先駆者である。

現在、静岡大学の客員教授を務めら、その他にも多くの役職を抱えられている。また、ガイドブック等の編集にも携わられ、新聞や、雑誌から求められての記事も多い。

今回は、BPIA(ビジネスプロセス革新協議会)の新ビジネスモデル研究会で、「省エネ、創エネ、畜エネで快適で持続可能な社会は実現できる」のテーマで講演された。

内容は、断熱、熱エネルギーの取り込みも含めた省エネ、創エネ、畜エネの実施例から、今後の技術開発の動向まで、幅広い、夢のあるお話が聞けました。又、エネルギー政策の検討にも関与されており、興味深い裏事情の話もありました。盛りだくさんの内容で、新しい気付きを頂ける、あっという間の2時間でした。

 

NRI未来創発フォーラム2011

10月24日、東京国際フォーラムにおいて、野村総合研究所主催の表記フォーラムが開催された。今年で9回目とのことで、パネルディスカッションでは、今人気絶頂の池上彰さんがモデレーターをされていた(初回からモデレーターを務められているらしい)。

増田寛也顧問(元大臣)の講演に続いて、常務の谷川史郎さんから「岐路に立つ日本人ー覚悟と希望ー」のタイトルで講演があり、

・急激な人工動態変化が起こっているのに問題を先送りしている。

・次世代が誇りを持って働ける仕事の想像が必要。①自助ロボットなどの裾野の広い新産業の育成、②1次産業の再生にはマネジメント必要、③海外への雄飛、がある。それを支える原資として、80代の持っている財産を生前贈与で若い世代に贈り、お金を活かす。

・残された時間は10年。覚悟を持って取り組む。問題を先送りしない。

・小さな積み上げでも、10年で大きな変化を起こせる。今こそ自らの力で世の中を変える時。

 

*フランス、スウェーデンは10年かけて出生率を改善した。日本人は役に立ちたいと思っているが行動していない人が多い。同感である。お上頼りから、自ら国を動かしていく気概が求められている。

 

パネルディスカッションは割愛。

 

スマートシティーウィーク2011
スマートシティーウィーク2011

【スマートシティーウィーク(第1回国際会議)】

10月24日ー28日、横浜パシフィコで「スマートシティーウィーク2011(第1回国際会議)」が開催された。日経BPクリーンテック研究所長の望月洋介氏が、全体のとりまとめ。

3.11を受けて、~安全で持続可能、そして高効率な都市づくりを目指して~がテーマ。

5日間の内、4日間足を運び、スマートシティーをめぐって、国を越えて、し烈な都市間競争が始まることを肌で感じることができた。

日本以外にも、中国、アジア、米、英、独、からの話題提供もあり、今年から来年にかけて、熱い競争が始まる。

 

最終日、望月洋介氏がとりまとめた、メッセージは以下である。

 

ラウンドテーブル総括

・スマートシティは市民・企業のため

 ー人が主役。

 ―市民が目標を決める。目標は市民とともにつくる。

・商品は「生活環境」

 -地域に根ざした変化を先取りする。

・ビジュンが重要。しかも明確なビジョンに。

 わかりやすい目標。

 -「聞く技術」「作る技術」「共有するコミュニティ」

・選択肢をいかに沢山準備するか

 

ラウンドテーブル総括

・企業には「心に響く提案」をしてほしい。

 ―技術・商品の提案ではなく、都市をどう変えるかを提案

・「もの」ではなく、日本の都市化の経験を売る。

 ―経験、ノウハウ、知見の輸出

 ―公害克服、災害復興、高齢化対策など

・ビジネスモデルのアイデアは沢山ある。

 ―既存産業のモデルとスマートシティ事業の組み合わせ

 ―いずれも実証実験中

 ―ルール・メーカー側に立つ機会

 

スマートシティー宣言

 ・Player:主役は市民と企業

  -スマートシティーは、市民とそこで産業を手掛ける企業が主役である。市民にとって最適な社会を共に実現する。

Ob・jective:目的は市民の生活の質向上

 -スマートシティーは、市民の生活の質(QOL)をより向上させることを目的とする。

Vision:明確なビジョンの下に推進。

 -スマートシティーには、何よりもビジョンが重要である。明確なビジョンの下に推進していく。

Evolving:常に進化を先取り

 -スマートシティーは、市民のニーズや地域社会の変化を先取りし、進化し続ける。

Japan`s role:日本の世界への貢献

 -日本は、災害克服や少子高齢化対応といった非常に難しい課題解決を通して良い社会づくりの経験を積み、世界に向けて発信することによって貢献する。

 

最後に

・今は、まだ競争の段階ではない。一緒に議論し、情報を共有する時期である。

・来年は、1029―112日@パシフィコで開催。

 

この1年間の動きに目が離せない。と感じている。

 

【震災後のエネルギー戦略と都市のスマート化】

東工大・先端エネルギー国際研究センター(AESセンター)の第2回シンポジュームが、9月28日くらまえホールで開催された。

第1回は、東日本大震災の前日の3月10日であった。その時点では、原発で電気エネルギーの50%確保することを前提にエネルギー政策が組み立てられていた。

それを前提に、低炭素社会に向けた取り組みが語られ、柏木センター長からは、その日の午前中に、「再生可能エネルギーの買い取り制度案」が閣議決定されたとの報告があった。

その後、再生可能エネルー買い取り制度原案は多くの裁量の余地の分を付加されて、一部骨抜きになって、法案化された。変更内容については、9月23日の毎日新聞の論点で、柏木センター長が解説されている。

 

<シンポジュームの狙い>

 3月11日の東日本大震災とそれに伴う福島第1原発事故は、人の絆や地域、産業活動や社会、文化の在り方まで、日本の姿をがらりと変えるほど大きな衝撃をもたらしました。とりわけ日本のエネルギー戦略と電力需給の在り方は、大きな見直しを迫られています。そのとき新しいエネルギーシステムのキーワードになるのが「分散型ネットワーク」と「スマート化」です。

 東京工業大学ソリューション研究機構の先進エネルギー国際研究センター(AESセンター)は、エネルギーの大消費地である都市のスマート化について、実現の方策や日本のエネルギー戦略の中での位置づけなどの議論を深めるために、3月10日に開催した第1回に続き第2回シンポジウムを開催します。産業界をはじめ各分野の専門家を招き、講演・パネル討論を催すとともに、低炭素社会の実現を目指すAESセンターがこの分野にどう取り組んでいるかについても報告します。

 

<講演プログラム>

13:30 開会挨拶 柏木孝夫 先進エネルギー国際研究センター長
 「震災後のエネルギー戦略とAESの役割」
14:00 基調講演 村上周三 (独)建築研究所 理事長
 「サステナブル時代の都市づくりと日本再生」
14:45 講演 渡邊 宏 (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構 理事
 「スマートコミュニティの現状と将来展望」
15:45 パネル討論
 「スマートコミュニティをどう実現するか」
 パネラー: 高野之夫 豊島区長(議会出席のため、メッセージのみ)
        竹中章二 東芝 スマートコミュニティ事業統括部執行役常務待遇首席技監
        中井検裕 東京工業大学 教授
        一色誠一 JX日鉱日石エネルギー 専務執行役員社長補佐
        筒井清志 NTTファシリティーズ 代表取締役副社長
        村木 茂 東京ガス 代表取締役副社長エネルギーソリューション本部長
        小島信明 三菱商事 常務執行役員地球環境事業開発部門CEO
 コーディネーター:中上英俊 東京工業大学 特任教授 / 住環境計画研究所 代表取締役所長
17:35 総括 平井秀一郎 東京工業大学教授

 

基調講演で、基礎研究所理事長・村上先生は、まとめとして

1.低炭素化の制約の下でのQOLの向上

・20世紀型の大量消費文明の克服

・核エネルギー利用縮減という新たなトレードオフ問題の発生

2.サステナブル時代の都市づくりに求められる価値観の転換

・ハード、ソフトの両面からの超省エネ型ライフスタイル

・キーコンセプトとしての、スマート化とスリム化

3.日本再生に向けて、スマート化/スリム化の理念に基づく新しい都市づくり

・環境未来都市構想への期待

 

講演で、NEDO渡辺理事は、

スマートコミュニティー実現のためには、

・これまでの要素技術開発に加えて、情報通信技術、新エネルギー・省エネルギ-技術、エネルギー貯蔵技術など様々な分野を横断的に融合させて、一つのパッケージとして展開していくことが必要。

・個別技術やそのすり合わせによる最適化は日本産業界の得意分野。

・スマートコミュニティーの形は、政治・経済・産業の状況、そこで暮らす人々のライフスタイルや文化、地理・気象条件など、国・地域ごとに多種多様であり、特性に合わせた実証が重要。

・NEDOは今後も、国内外で様々な形での実証を手がけていく。

⇒スマートコミュニティー(JSCA)を中心として、情報・通信、電気機器、電力・ガス、自動車、建設、商社、、自治体、大学等の関係団体での連携を強めて、海外へ展開していくことを期待。

 

パネルディスカッションでは、

「スマートコミュニティをどう実現するか」の観点で、各界を代表する経営責任者の方々から取り組みの紹介があった。

 

【東日本大震災を受けての緊急BCPセミナー】

http://www35.jimdo.com/app/s5a3cd17cc7e20cdf/pa62aaf7ac2a5f380/?new=1#permalink

13:3014:30

01

建物の安全をどう考えるか

東京大学 新領域創成科学研究科
社会文化環境学専攻 教 授 神田 順 氏

14:3015:30

02

東日本大震災を経験して、BCPのあり方を考える

株式会社タイセイ総合研究所 工学博士 技術士 一級建築士
認定ファシリティマネジャー 技術顧問 大沢 幸雄 氏

15:4016:10

03

企業が取組むべきBCP(事業継続)とは

リコージャパン株式会社  オフィスイノベーション事業本部

CIS事業センター 商品企画室 磯崎 文之 氏

16:1016:40

04

BCPと地盤液状化リスク

株式会社アースアプレイザル
CFO/
不動産鑑定士 取締役 山縣 滋 氏

16:4017:10

05

平成の三陸大津波被害とBCP

岩手県建築士会盛岡支部副支部長
和見設計舎 一級建築士 代表 中村 孝幸 氏

17:2017:50

06

東日本大震災におけるBC活動の事例

株式会社NTTファシリティーズ
BCP
ビジネス本部 コンサルタント 佐藤 沢 氏

17:5018:20

07

インテル株式会社のBCP

インテル株式会社 つくば本社
コーポレート・サービス・ジャパン/コリア・マネジャー 大森 崇史 氏

18:2018:50

08

病院BCPとファシリティマネジメント

JFMAヘルスケアFM研究部会長
上坂 脩 氏

18:5019:20

09

東日本大震災の教訓をふまえて ~首都圏災害を乗り越える 事業継続のポイント

JFMAリスクマネジメント研究部会長
株式会社セノン 執行役員企画部長 上倉 秀之 氏

10月3日 江戸川区タワーホール船堀で、13:30-19:20の長時間に亘り、東日本大震災を受けてのBCP、BCMへの取り組みの紹介がありました。

 

岩手県建築士会盛岡支部副支部長の中村 孝幸様のプレゼンでは、調査に訪れた岩手県の各地の生々しい写真が大量に公開され、涙をこらえながらの映像紹介には、聞いている方も辛いものがありました。

 

又、株式会社タイセイ総合研究所の大沢 幸雄様からは、中小企業向けの、全16ページのBCP標準版(あいちモデル)が紹介された。簡潔で、無理なく構築できるBCPモデルである。

ダウンロード可との事で、今後、活用の検討を行っていきたい。

【北杜メガソーラー及び浅川太陽光発電所見学】

昨日、CELC(クリーン・エネルギー・ライフ・クラブhttp://www.celc-pv.com/)主催の、メガソーラー&農地太陽光発電所見学会に参加してきました。

CELCの役員さん達の臨機応変で丁寧な進行と、浅川太陽光発電所長のサービス精神旺盛な説明のお陰で、北斗サイトのメガソーラーや、農地太陽光発電所の実態を理解することができました。

写真は、八ヶ岳を背景に、稼働する北斗メガソーラーです。

 

北杜大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究

http://www.city.hokuto.yamanashi.jp/komoku/shisei/ondanka/1305816924-38.html#13058170228

 

又、浅川太陽光発電所のHPです。

http://www.mt8.ne.jp/~sun/

 

↓↓ は浅川太陽光発電所の取り組みが紹介された動画です。 

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=cQXG8sLQuKk#!

(平成23年9月7日放送「ウッディ発!山梨でエネルギーを創る」テレビ山梨 より)

【2011・国際森林年のロゴマークです】

人間を真中に、生物多様性を木が支えているデザインになっています。東日本大震災の地震、津波、原発事故を踏まえ、「低炭素社会」、「循環型社会」、「自然共生社会」に向けて対応を加速するスタートの年になりました。

最速コンピューター「京」の基板
最速コンピューター「京」の基板

【速報】東京国際環境会議、「サステナブル社会」を議論

http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110921/108461/?mail

去る9月21日に開催された、東京高裁環境会議2011「サステナブル社会への低減」に参加してきました。順序は少し入れ替わってますが、以下の内容が紹介されました。

・住友ゴムからは、低燃費タイヤの開発への取り組みの紹介あり。①100%石油外天然資源タイヤ(2013年発売)、②50%転がり抵抗低減タイヤ(2015年発売)、③ランフラットタイヤ:パンクで空気圧”0”でも80km/hで、80km走行可能タイヤ。

・サントリーからは、水を守るため、涵養林を育て、放置されている里山の保全に取り組み。

・三井物産からは、森を手入れし、チップ、ペレットとして冷房、暖房への利用の取り組み。

・レモンガスからは、LPガス+太陽光発電のコ・ジェネ住宅(戸建、集合)への取り組み。

・マツダ自動車からは、内燃機関の燃費向上への取り組み。

・林野庁からは、戦後の先人たちの森林造成の努力により、森林率は30%→68%に向上、維持されている。問題は利用が少なく、手入れが遅れている。国際森林年を迎え、木づかい(木を使う、気遣う)運動を展開する。我が国における木材利用の可能性について。

・早稲田大学より、シェールガスを睨んだ天然ガス自動車のポテンシャルについて。

【最近購入した、EVリーフの紹介です】

 リーフの加速性能は、アメ車の5-6カーの感覚です。静かで、快適です。

リーフは、国、県、市の補助金で引き算すると、250270万円程度で買えます。
 これは補助金込みの車両価格になるのですが、取得税等が免除されるので、車両価格=必要費用です。

更 に、5年間車両税がかからないので、20万円程ガソリン車に比べ安くなります。

私の場合は、13年目の買い替え時期だったので、予定通りEVにしましたが、
皆さんも検討してみませんか。

 

燃費(電費)

走行費用

単価

ルネッサ(2

8km/

20/km

150

EVリ-フ(1.5のボディー)

7km/KWH

1/km

3/km

KWH7.3

冷暖房を使わない春秋は更に安上がりになります。楽しみです。
*尚、当面の課題 は、急速充電スタンドの普及です。
今のところ高速のSAに急速充電スタンド少ないので、長距離は無理です。
東名高速だけがSAの3個置きに急速充電スタンドがあります。

 

又、自宅車庫での充電は、まだ慣れないせいか面倒です。
非接触充電の時代が待ち遠しい。

【太陽光発電システムの紹介です】

 200710月から太陽光発電システムを導入し、発電事業者になりました。以来、毎月の電力使用量、電力発電量、売電(電力量、電気料金)、買電(電力量、電気料金)のデータを採り続けています。2009年の4月から、売電料金が48/KWHになったため、2010年度は、我が家の光熱費を、はぼ”0円”にすることが出来ました。2011年度は緊急節電もあり、売電料金>買電料金が見込まれます。