デジタル化

今、日本はもの作りの踊り場で苦しんでいるが、これはデジタル化の流れに拠る必然である。3D CADを使えば、2D図面がなくても、前の3Dデータをコピーすれば同じものが出来る。3Dプリンターでは、デジタルデータがあれば、同じ立体のものがコピーできる。

手書き、アナログの時代は、時間をかけて技を習得しなければ同等のものを作ることができなかったが、今はいとも簡単に作ることができる。シミュレーションも進化し、多くのことが実際に物を作らなくても見極められる。

短時間でデジタル情報が拡散し誰でも同じものが作れるようになった結果、コスト競争の泥沼にはまる。折角新しいものを作っても、優位を保っている時間は短く、集中的な設備投資とか、極端に安い人件費とかにより、後から参入しても短期間に市場を占有してしまうことが出来る様になった。

 

岡野工業の岡野雅行代表社員は、人のできないこと、やらないことに挑戦し、開発に成功すると、それに関わる設備やノウハウは売り渡し、量産はやらない。その売り渡した原資を元に、次の案件に挑戦すると言う。又、利益は一人占めにしないで折半、それで信頼関係を築く。結局、人との付き合いの持ちつ持たれつの関係の所に仕事が入ってくる、情報も入ってくる。

 さらに、「これから生き残るのはローテク」、「誰も真似のできないブランドになってしまえばいい」と言われている。今も社員は4-5人の多能工でそれ以上は増やさない。このやり方は岡野雅行氏にしかできない方法ではあるが、一つのヒントがある。簡単にできることではないが、常に技術を磨いて、オンリーワンであり続ける。岡野工業を核に製造業の信頼のネットワークを構築している。

 

安易なもの作りではコスト競争の泥沼からは抜け出せず、常に倒産を意識しなければならなくなる。岡野雅行氏がやられていることは、高度成長、お金優先、成果主義の前の時代に日本がやってきたことではないか?それは失われた日本の競争力の源泉だったのではないか?

 

デジタル化は止められない流れではあるが、その上に、それぞれが岡野流に対応する得意技をどの様に載せるか?それが課題である。